精神科Q&A

【1662】70歳になってから凶暴になった父


Q: 私は40代男性です。現在別居している父(今年71歳)の件ですが、最近困りきっておりメールさせていただきます。

顕著に症状が出始めたのが約1年前からになりますが、まず些細なことから弟ともめ始めたことを端に発し弟に対するいやがらせが始まりました。
弟宅への罵倒の電話のみならず、職場への嫌がらせ電話が一日数十回にもおよびました。
家の電話は着信拒否にしましたが次は1日に何通も罵倒の手紙が届くことになり約半年続きました。
実家でも母に暴力を振るう、物を壊すなど滅茶苦茶な状況が続きました。
弟の嫁もノイローゼとなり、私が間に入り水に流すということに一旦なったのですが、結局何の効果もなくすぐ元通りの状況に戻ってしまいました。父は、言っていることがすべて嘘なのです。

弟は完全に実家との接触を断ったこともあり、今度は私のほうへ嫌がらせの電話が始まり(一日50回くらい)、弟と一緒に警察、保健所、弁護士などに相談しましたが埒が明きませんでした。
そうこうしているうちに父に暴力を振るわれたことから母が派出所に飛び込み父はあえなく御用となり措置入院ということで精神病院に入院ということになりました。
診断結果は統合失調症ということでした。

3ヶ月程度入院し落ち着いたこともあり退院となりましたが、退院しても自分はすい臓病(実際すい臓は悪かった)で精神病ではないと言い張り全く病識がありませんでした。
(こんな状態で退院させた病院に非常に不信感があります)
精神科には退院当初は通院していましたがすぐ止めてしまいました。
そして、しばらくうつのような状態が続き、母への暴力は止みましたが、今度は家の2階から飛び降り、自殺未遂(本人は死のうと思ったと言っている)で頭に怪我をし10針ほど縫い入院という事態になりました。

最近ですが、結局また逆戻りで元の状態に戻ってきており、母には手は上げなくなりましたが、罵倒、罵声を一日中あびせ、超ハイテンション状態です。
まさに言葉の暴力です。
また、今度は急に財産を寄付するとか言い出し、あちこちの福祉団体等に連絡を取っています。
数千万円単位の寄付を考えているようで、今後の老後の資金にも影響が出るほどの額を口走っているそうです。

弟宅には今度は嫌がらせ電報が届き夜遅い時間に叩き起こされたりすることもあるようで、新しい嫌がらせを日々考えているようです。

われわれ兄弟にはもう相手にされないので、今度は身内に(特に嫁の実家など)嫌がらせをしようと考えているようで母が常に止め役で精神的にも参って来ております。

とにかく立場の弱いものを見つけ、徹底的に嫌がらせをするのが特徴と言えます。
嫌がらせの根拠もほとんどが妄想、思い込み、想像によることからだと考えられ、自分は常に正義との認識です。
われわれが話をしても全く通じないですし、もうどうしたらいいのか?と悩んでいます。
同じことの繰り返しです。

実際問題として母には家を出るか、もしくは警察にDVで被害届けを出すしかないか。
また成年後後見で財産管理をこちらでするかしかないかとも考えています。
経験からですが公的機関は相談してもほとんどあてにはならず、あきらめています。


林: 
顕著に症状が出始めたのが約1年前からになりますが、

とのこと、それより前には一切症状がなかったのでしょうか。それとも顕著ではなくても何か症状があったのでしょうか。それによって回答は変わってきますが、ここでは一応、それより前には一切症状がなかったものと仮定して回答します。

そうこうしているうちに父に暴力を振るわれたことから母が派出所に飛び込み父はあえなく御用となり措置入院ということで精神病院に入院ということになりました。
診断結果は統合失調症ということでした。


症状が出始めてから入院までの期間が、おそらく9ヶ月ほどになるということかと思われます。その期間に見られた症状は、メールに書かれていることから判断する限りでは、「攻撃性」とだけ読み取れます。すると、統合失調症と診断された根拠が不明です。他にはどんな症状があったのかを具体的に知りたいところです。メールの記載だけからは、統合失調症よりは、むしろ躁うつ病の躁状態にあてはまるように読めます。

また、

退院しても自分はすい臓病(実際すい臓は悪かった)で精神病ではないと言い張り全く病識がありませんでした。

とのこと、退院時に病識がなかったことはわかりましたが、他の症状はどうだったのでしょうか。入院してよくなったのかよくならなかったのか。退院理由は何か。これらは判断のために重要な情報です。

さらに、

しばらくうつのような状態が続き、

この「うつ」が、具体的にどのようなものだったのか。それによっては、診断は躁うつ病で、躁状態から始まり、後にうつ状態になったと理解するのが自然ということになります。「飛び降りて自殺未遂」だけでは、残念ながらわかりません。

そして、その後また攻撃的になり、同時に多額の寄付を言い出されたことからすると、また躁状態になったとみるのが自然です。

以上より、最も考えられる病名は躁うつ病です。躁うつ病 患者・家族を支えた実例集 のケース8などをご参照ください。

器質的な病変が脳にないかどうかの確認も必要です。認知症や、梅毒なども考える必要があるでしょう。
いずれにせよ、診断の再確認と治療が必要です。精神科の病院に入院する以外ない状況だと思います。


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