精神科Q&A

【1650】親に「何がうつ病だ。何様のつもりだ」と言われました。死にたいです。


Q: 20代の女性です。数年前から、うつ病ではないかと自分で疑っており、今月からやっと精神病院に通い始めました。 

症状は、部屋に引きこもる、料理ができなくなった、食欲不振、不眠、夜中に騒がしい声が聞こえることがある。(田舎で一軒家なので周りは静かです) 友人と会えなくなった。 
ただし、見た目は普通で化粧もできるし服装も普通です。読書・民族文化、絵や音楽の収集が好きです。 
鬱のみというわけではなく、年に数回旅行にいけば楽しむことができるし、買い物も年に数回すれば楽しめます。それ以外は外出はほとんどいたしません。 

以上から、医師によりうつ病と診断されました。ただし私の場合は、当初退職を考えるほど酷い状態であったので、届けをだしたところ 会社側から体調の悪いときは休んでもらってかまわないからとにかく引き続き働いてほしいというありがたい要望があったため、 現在も変わらず働いています 

医師に当初処方されたのは、パキシルと炭酸リチウム、そして以前から服用していたリスミーの3種でした。 
 服用して4日ほどして一日中酷い吐き気がしたので、まずパキシルだけを飲んでみたら同じ作用が出たので 医師に連絡をして、パキシルを中止し、炭酸リチウムとリスミーのみにしてもらいました。 
 ところが、3週間後、今度は食事がまったく食べられなくなり(食欲が無い)、それに加えて パキシルのときより 酷い吐き気がするようになりました。 主治医に伝えたところ、炭酸リチウムの服用 を一時中止して次週に別の薬を処方することを検討するといわれました。 ただ医師の話ではうつ状態の食欲減退の可能性もあるから、念のため中止するということでした 
 インターネットで調べたら リチウム中毒というのがありもしかして自分の症状はその初期症状なのかも しれないなとおもいました。 

睡眠のほうは、リスミーだけではあまり改善されませんが眠れないよりはましです。 

一番の問題は、両親がうつ病というものを正しく認識しないということです。 特に母親は、私が食事をしないことをひどく罵り、「その年になって 何がうつ病だ 何様のつもりだ」 などと言われます。 本当につらいです。 
 父親に関しては会社を早退したり、休むということに対して注意をします。  
 私の家は祖父母と母、両親間の関係が酷く悪く、そのこともひとつの要因となっております。 私は家を出ていきたいのですが、もうそんな気力もなく、今日々の仕事をこなす毎日です。 死への願望が強く、死ぬのなら完璧に死にたいとおもいます。 以前は死後の家族のことを考えて泣いてしまうことがあったのですが 今はそれすらもなく、死に場所や死ぬ方法が定まらないことが不安です。ただ悲しみ故の死というのではなく、自分の人生をここで止めたい、もうこの先生きていて自分がこなしていかなければいけない、ステップ(結婚など)がたくさんあり自分にはとうてい無理だな、と思うからです。 

今、自分は 明日の仕事のことを考えつつも、頭の中には常に死ぬことを考えています。 決行できるのかわかりませんが、このまま鬱が改善されて気分が良くなっても、家庭内などの環境が変わらない限り、自分はまだ生き続けるだろうかと他人ごとのようにおもってしまいます。 ときどき オマエのようなクソ女はぶっころしてやるぞ、なぜ死なないんだ という内側の声はいつもします。 病院の高台からオマエは飛び降りればすぐ 死ねるじゃないかよ そんなに死ねないんだったら俺が殺してやる という声もします。 

林先生、治療を続けるべきでしょうか。今は死を考えているので、病院へいくことが無駄に思えて自殺を遂げられた人が羨ましくて、焦りを感じます。


林: 今あなたに下されている診断・治療(処方)には、いずれも疑問があります。一度、他の医療機関を受診することを強くお勧めします。お住まいは地方とのこと、あるいはあまり病院の選択肢はない環境におられるのかもしれませんが、多少遠方であっても、信頼できる病院を受診し直すことをお勧めします。それも早い時期にです。

このメールからまず読み取れるのは、死に対する強い傾倒ないしは願望です。
 「死に対する強い傾倒ないしは願望」とだけ言葉で表現すると、これはうつ病の典型的な症状に聞こえないこともありません。しかしこの【1650】のケースでは、書かれている他の症状に比べて、死というものだけが極端に突出しています。これは、うつ病としてはやや奇妙な現象であり、また、これまでの経過を見ても、うつ病の典型的な経過とはかなり異なるものであることがわかります。したがって、ここまでの内容からみても、あなたがうつ病である可能性は低いと判断できます。では診断は何か。最も考えられるのは統合失調症です。

さらに次のような症状も書かれています。

夜中に騒がしい声が聞こえることがある。

 ときどき オマエのようなクソ女はぶっころしてやるぞ、なぜ死なないんだ という内側の声はいつもします。 病院の高台からオマエは飛び降りればすぐ 死ねるじゃないかよ そんなに死ねないんだったら俺が殺してやる という声もします。


これらは、記述されている表現だけから見れば、幻聴とも解釈できます。実際には、「内側の声」として本人が表現された場合、それが幻聴なのか、それとも単なるたとえのようなものかは、慎重に判断する必要があります。この【1650】のケースの上記のような体験が幻聴かどうか、直接診察すればおそらく判断できると思います。ということは、メールの記述だけでは判断できないということになりますが、メール全体を総合的に見れば、さきほど申し上げた死についての傾倒・願望ともあわせ、統合失調症の幻聴であるとほぼ判断できます。

したがいまして、

医師によりうつ病と診断されました。

この診断は疑問です。
もっとも、本当の診断が統合失調症でも、医師は本人にはうつ病などと告げることはあることはあります。その場合は、処方内容を見れば、その医師が本当はどのように考えているか、ある程度まではわかるものです。しかし処方をみると、パキシル、炭酸リチウム、リスミー であることからは、うつ病ないしは躁うつ病と見ていることが窺われます。そして、副作用のためパキシルを中止し、炭酸リチウムとリスミーのみの処方になっている現在は、一体どう考え、どのような方針で治療をしようとしているのかが見えません。ただ言えることは、この医師の治療では改善は期待し難いということです。

林先生、治療を続けるべきでしょうか。

主治医をかえて、治療を続けてください。

一番の問題は、両親がうつ病というものを正しく認識しないということです。 特に母親は、私が食事をしないことをひどく罵り、「その年になって 何がうつ病だ 何様のつもりだ」 などと言われます。 本当につらいです。 
父親に関しては会社を早退したり、休むということに対して注意をします。


ご家族の無理解は、本人を深く苦悩させるものですし、そもそもこのケースではうつ病についての認識がどうといったこととは別の問題ですが、このご両親に精神疾患の理解を促している暇はありません。一日も早く、信頼できる病院を受診し、治療を受けてください。


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