精神科Q&A

【1599】パートナーの自殺後の私の精神状態は要治療レベルでしょうか?


Q: 私は40代の女性です。2年前の夏、25年間共に生きてきたパートナーが自殺しました。その一年前に薬を服用し自殺未遂をし、そのまま3か月間入院させました。パートナーは家族的に問題があったため自殺未遂については勤務先や家族友人も全てに内緒にしておりました。
私はこの未遂時に仕事も上手くいっておりヘッドハントされたばかりで多忙な生活をしておりましたが、このような状況になり、会社を退職することを決意、無職となりました。入院中から退院後もパートナーの自殺願望が癒えることがなく、TVの自殺関係の報道番組に私に内緒で出演したり、出家するといって寺へ1か月こもりに行ったり、最後は車で失踪し車内で自殺したので警察とのやりとり等、多忙かつ振り回された1年でした。パートナーの主治医は当初うつ病と診断していましたが自殺した時には人格障害もあったと言われました。現在私は母が認知症になり介護をしながら週2日ほど仕事をしております。私の症状が起こる背景の話が長くなり申し訳ありません。私の症状は自殺当時に冷静でいられる自信がなく、かかりつけの内科医に相談し、安定剤を服用しましたが、22歳頃パニック発作をおこした経験もあったので、これが引き金になっては困ると思い、心療内科を受診しました。しかし、その心療内科医に不快な印象を持ったため通院はせず、内科でパキシルとデパスを処方してもらい1年後には無事立ち直ったということで、現在通院も薬も服用していません。確かにその当時は元気になったのですが、最近はもともと酒好きの私は酒量がかなり増えましたし、生活が楽しいと感じる事はなくなりました。自殺後の記憶も一部欠落しています。パニックは起こしませんが、ほぼ毎日、生存時の映像や声が浮かび、感情が揺さぶられ、こらえられない空虚感・孤独感に襲われ落涙し、全てに自信が無くなり、集中力・記憶力思考力がなくなりました。母の介護が終了したら、自殺する事を漠然と思い描くようになりました。又、自殺した際にパートナーの主治医が言った人格障害の発言も気になります。10歳代の多感な時期から40代まで、ほぼ一緒に時を過し、同じような性格や思考・行動特性をもっていたし、もしそうであるなら、私も人格障害なのか。と考えてしまいます。とにかく、今はうつ状態には違いないとは思うのですが、これは、正常な喪失体験なのか、それとも病的な何かなのかがわからないのです。通院に値するのでしょうか?それとも時が癒すまで我慢する人生を送るのが定めでしょうか?割り切れない思いで、このことを考えるだけでも疲労がたまってしまいます。長文になり申し訳ありません。林先生のご見解をお聴きし今後の生き方を考えたいと思っています。


林: 親しい方が亡くなられた後のうつ状態。これが病的なレベルか、それとも正常な喪失体験のレベルか、それを明確に定める基準はありません。診断基準では、うつ病の診断基準を満たすレベルであっても、その期間が2ヶ月以内なら正常の喪失反応(「死別反応」という名がついています)とすると定められていますが、これはいわば統計上の仮の基準にすぎません。
したがいまして、

通院に値するのでしょうか?それとも時が癒すまで我慢する人生を送るのが定めでしょうか? 

このご質問に対しては、残念ながら明確にはお答えできません。メールという情報の限界もその理由のひとつですが、仮に直接の診察によっても、明確にお答えできることはないでしょう。結局はご本人の考え方次第ということです。ただひとつ言えることは、

割り切れない思いで、このことを考えるだけでも疲労がたまってしまいます。

このような状態は好ましくないということです。誰にもどちらかとは決められないものですので、通院するか・しないか を、あまりお考えになりすぎるのはよくないでしょう。
そして、亡くなられた方との関係から考えて、たとえ通院しても、通院しない場合と比べて、みるみる良くなっていくことは期待できません。受診して、かえって失望するという結果になることも考えられます。ですから、治療は受けず、我慢する と割り切るのも一つの方法ですし、当面の気分だけ少しでも改善するためと割り切って服薬治療を受けるというのも一つの方法だと思います。


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