精神科Q&A

【1585】13歳の娘に統合失調症の治療(あるいは予防)としての投薬を始めました(【1418】のその後)


Q:  昨年【1418】12歳の娘に、統合失調症の前駆症状が見られるようなのですが、発症を予防するにはどうしたらいいでしょうか でご回答をいただきました現在13歳の娘について、ご報告差し上げます。その節は娘の状態についてご回答をいただきありがとうございました。おかげさまで夫(統合失調症で治療中)の主治医に診療していただける一助となりましたし、私の中で確認と覚悟ができたように思います。その後の状態をお伝えしたくメールを書かせていただいております。 その後、主治医のすすめで発達障害の検査を受けました。幼い頃の状態から考えてもその可能性は考えにくかったものの、現在の状態が広汎性発達障害に似た様相を呈していたためです。
 しかし検査の結果その可能性は排除され、娘の現在の状態を統合失調症の発症あるいは前駆症状とみて、治療あるいは予防としての投薬を始めることになりました。 最初の処方はフルメジン(0.25) 0.5錠デパス0.5mg 1錠でした。 同時期に、自治体の不登校支援を利用して、不登校児専門の公立中学への転入など模索しましたが、その準備段階での面接や活動の段階で娘は疲弊し、活動の前日には決まって自傷行為(手の甲をカッターで傷つける)をするようになって行きました。親子ともに、手厚すぎる不登校支援(選択肢が非常に豊富、準備段階が丁寧で慎重)に疲れきった形で、これらの利用は断念することになり、最終的には本人の希望もあって引越し前の家へ戻り、10月から小学校時代の友達がたくさんいる地域の中学へ転校をすることになりました。 この頃はひどい不眠に悩まされており(朝まで一睡もできないこともたびたびありました)、昨年来傾向としてあった昼夜逆転がすっかり定着した感がありました。4月当初はまだ、朝起きて、昼に私の職場で仕事の手伝いなどができたのですが、暑くなる頃には昼は職場へ連れて行ってもぐっすり寝入ってしまうことが多くなっており、転校した頃もこの状態が続いていました。 一方で、小学校時代から続けているサークル(小中高生対象)の活動は、メンバーが非常に少人数(5人程度)であること、小学校時代からの友人ばかりであること、活動が夕方からであることから、週1回の活動日に休まず通うことができており、過密なスケジュールの時期になっても、ストレスを訴えながら取り組み続けることができていました。(このことはこのころ、私たち親子にとって大きな心の支えになっていました) 新しい中学校では、小学校時代の友人がいることや、一番後ろの席であったことも助けになり(後ろに知らない人がいない)、それなりに頑張って登校しはじめたのですが、当初の予想通り、徐々に授業中やその前後の喧騒に耐えられない、と訴え始め、10日ばかり登校したところで登校できなくなりました。 別室登校に切り替えたものの、昼夜逆転のせいもあって安定した登校は難しく、そもそも家を出られない日が増えてゆき、時には送っていってやれば学校の前まで行ける事があっても、車の中で泣き出しどうしても登校できない、というようなこともありました。 この頃から上記処方にマイスリー5mgを0.5錠追加、それでも不眠が解消しないので2ヵ月後には1錠に増量するも、やはり昼夜逆転は改善しませんでした。それに加え、春ごろには眠れない夜の時間を、絵を描く、文章を書くなどやりたいことをやる時間に当てられていた娘が、マイスリーのせいか、この頃には眠れないのにやる気が出ない、だるいのに眠れない、苦しい、辛い、と訴え、自傷行為をする、深夜に大声で歌を歌う、深夜に私を起こす、ということが増えて行きました。この頃はよく「どこか遠くへ行ってしまいたい」と言っていました。 12月に入り「夜眠ることではなく、昼目が覚ましておく作戦に切り替えてみましょう」との先生の言で、処方がエビリファイ3mg 1錠アキネトン1mg 1錠 に切り替えられました。処方が変わって娘の調子はそこはかとなく上向きにも見えたのですが、やはり昼夜逆転の改善は見られず、私を起こしにくる回数が減ることはありませんでした。娘の苦しみを見ることもさることながら、私自身も睡眠不足でも仕事を休むことはできず、体力気力を消耗させられる辛い日々でした。 このころになって、夕方になると目がぼやける、像が二重になる、急に視界が暗くなる、などの訴えが、小学校高学年ごろからあったことを、主治医にきちんと伝えていないことに今更ながら気づきました。これらを伝えたところ、夕方に飲むお薬としてワイパックス0.5 1錠を追加処方していただきました。 このワイパックスの処方が増えてから、娘の状態が劇的に好転しました。突如として夜眠り朝起きる、という生活ができるようになりました。実に2年ぶりのことです。小さい頃から(それこそ幼児の頃から)不眠を訴えつづけてきたことを思えば、2年振りどころか、8年ぶりと言ってもいい健やかな眠りと目覚めは私にとっても大変嬉しいもので、これは現在も続いています。
睡眠に関して唯一現在も残る悩みは、悪夢に関する訴えです。時折悪夢を見る、と訴え(その内容はさまざまで私もよく記憶できていません)悪夢を見そうな気がすると訴える日には、本人の希望に沿って一緒に寝てやるようにしています。
 また、もう1点の心配は、1月頃から「男の人が怖い」と言い出したことです。小6の時、近所の広汎性発達障害の男性(60代くらい)に付きまとわれた経験があり、そのことが原因かも、と本人は言いますが、以前からの知り合いでない大柄な男性が怖い、と言っています。(母の目から見ると、必ずしも上記の条件にあった人がすべて怖いわけではないように思うのですが)
 登校については、昨年11月末から、知人友人の多い文科系クラブに入部、クラブにだけ登校するようになりました。クラブの活動はクラスに比べ少人数であることに加え、趣味の合う子が多かったため、初めて知り合った子とも親しくなれたようで、調子が悪そうに見える日でもクラブにはほぼ欠かさず通うことができました。 サークルの発表会も、それまでの練習で一緒の男の子が新たな知り合いで大柄なため怖くて辛い、と訴えながらも、練習には欠かさず通い、会を成功させることができました。責任感をはっきりと意識してまっとうできた、初めての経験になったのでは、と思います。
 2年生になりクラスが変わったことをきっかけに、クラスへの登校をはじめましたが、やはり毎日行くことは困難なようで、次第に休み始めましたが、現在は2日に1回の登校(1時間だけで帰ってくる、クラブだけの登校も含め)をがんばっています。 しかし、自分の状態が「病気に甘えて好き放題に振舞っている状態」なのでは・・・という不安が出てきたようで「お母さん、私って頑張ってるの?と尋ねたりしています。もう少し頑張らないといけないのでは、と思っているようで、その真面目さは母親として嬉しい反面、上手くコントロールしなければ、また無理を重ねることになるのでは、と心配もしています。 今後病気と付き合っていく以上、「病気のために無理をしない」「病気に甘えすぎない」「周囲の人に理解を求める」ということは必ず必要になってくることですから、学校がこういうことのバランスを取る勉強を友達の中でする場所になって行ってくれれば、と思っています。
 精神科Q&Aを拝見しておりましても、私たちと同様、思春期の子供の統合失調症発症を疑ったり、予防について考えたりされている方が少なくないように感じられます。娘のこの1年間のご報告が、昨年いただいたお答えへのお礼になればと願っております。 ありがとうございました。


林: 経過を詳細にお伝えいただきありがとうございました。治療(ないしは発症予防)が開始されたことは何よりと思います。私からあらためて申し上げるまでもないことですが、開始は第一歩に過ぎず、これから多くのことに出遭われると思いますが、ご本人、主治医、それから関係する多くの人たちとのご協力で乗り切って行かれることを望み、また、それができると信じております。そしてまた経過をご連絡いただければ嬉しく思います。ありがとうございました。


精神科Q&Aに戻る

ホームページに戻る