精神科Q&A
【1574】自分の意思と関係なく全部の音が入ってくる感覚
Q: 私は30代女性です。弟が統合失調症の治療を受けております。弟は統合失調症の定番症状で、妄想と幻聴、その前は独り言がありました。1週間で妄想と幻聴は無くなり、今、3ヶ月たって症状は落ち着いて、ゆっくり家で仕事もしておりますが左と右の耳の音の高さが違うので悩んでいるみたいです。先生は脳の神経が過敏だからとおっしゃっております。これも治療で治っていくのかなぁと思うのですが不安はあります。今も睡眠薬がないと睡眠は出来ない状況です。マイスリー1 サイレース 1 が今の処方です。
そして弟の病気を本で調べていると「脳のフィルターが壊れて、いろんな情報が入ってくる状態」という事が書かれていました。 そこで私も以前そうなったときがあるのを思い出しました。当時、私は色々なストレスで3日間不眠となり顔面神経痛のような症状が起こってきました。そしてある日、周りの自分の意思とは関係なくあらゆる音や声が自分に入ってくる感覚が起こり、不安や焦りが始まりました。被害妄想と自分で分かりながら被害妄想が起こりました。 自分でこれはただならぬ事だと理解したので、とりあえず自分で急いで脳神経外科に行くと、睡眠薬を頂きました。 3日間睡眠薬を飲むとそのフィルターが壊れた感覚がなくなり不眠も消え、顔面神経痛もなくなり、不安もなくなりました。 あれから私は普通に生活を送っておりますが、適度にストレスもありますがあの感覚はこの10年起こっておりません。 ですが今回の弟の病気で思い出しました。 私の家系は精神的に弱いというか脳が弱いのかうつ病や摂食障害、統合失調症が多いのです。 ですので、やはりストレスに弱いという家系だと知って自分と付き合っていきたいと思いますが、あの自分の意思とは関係ない音が全部入ってくる感覚は、もっと公に病気の始まりだと世間広く知っていれば、私のようにならずに済むかもしれません。 そう思い、メールをさせて頂きました。
林: 貴重な体験のメールをいただきありがとうございました。
そしてある日、周りの自分の意思とは関係なくあらゆる音や声が自分に入ってくる感覚が起こり、不安や焦りが始まりました。
このような症状は、統合失調症の発症時に時おり見られるものです。
そして、弟さんが統合失調症であるという事実、他にもご家系の中に統合失調症などが多いという事実は、あなたも一般の人の平均と比べると統合失調症になりやすい素因を持っていると推定できます。それはあなたがお書きになっているような「ストレスに弱い」とはやや意味が異なります。より正確な表現は、いま私が書いたように「一般の人の平均と比べると統合失調症になりやすい素因を持っている」ということになります。
統合失調症の初発症状は、漠然としたものも多く、はたしてそれが本当に初発症状なのか、誰にでもよくある一過性の悩みのようなものにすぎないのかは、経過を見ないとわからないこともよくあります。けれどもこの【1574】のような素因のある方にそうした症状が出たときは、統合失調症の発症である可能性はかなり高いといえます。ただしそれは、この【1574】の方のように、結局は一過性のものに終わることもあり得るのですが、慎重なうえにも慎重に対処するに越したことはないとは言えます。