精神科Q&A

【1564】本を読むことで人格障害は改善できますか(【1031】のその後)


Q【1031】で回答をいただいた40代女性です。自分が境界性人格障害ではないか、という私の質問にお答えいただきありがとうございました。(ご回答が掲載される質問は1割以下とのこと。選んでいただけたことに感謝しております) その後、お答えいただいた中にあった「BPO」について調べているうちに、それが自己愛パーソナリティ障害と同意であることを知りました。確かに、インターネット上で知りうる情報の範囲内ですが様々な特徴が私のそれと合致するのです。中でも「他者を『人間』として認められない」−これが最も的確に私を表現していると思います。だから健全な人間関係を築くこともできずにここまで来てしまったのだろうとようやく自分の「障害」を理解したような気がします。 以前の質問で書いたとおり近隣に適切な治療を受けられる医療機関はありません。「現実を受け入れて、その中で最善の方策を求めていくこと」とアドバイスをいただきましたが、最善の方策が何なのかわからないまま時間が過ぎてしまいました。 自己愛について、最近数冊の本を購入しました。そこで今回質問させていただきたいのは、これらの本を読むことで私は私自身を「治療」することができるのか、ということです。衝動的に購入してしまいましたが、果たして読むことで何かが変わるのか、それとも知識ばかり得て頭でっかちになってしまい弊害があるのか。その判断ができないまま、とりあえずとっつきやすくあまり専門的ではない2, 3冊の本だけ読み進めています。 このまま孤独な人生を歩むのは想像するだけで辛く、改善できるならば自分自身を良い方向へ連れて行きたい。自堕落で、自分に甘い今までの生き方を誰かに変えて欲しいのですが、その役割を果たしてくれる人がいないのなら、自分でどうにかするしかないという気負いだけが今は空回りしているような気がしています。 今回もとりとめのない質問になってしまいましたが、本のことを含め何かアドバイスをいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。


林: 
お答えいただいた中にあった「BPO」について調べているうちに、それが自己愛パーソナリティ障害と同意であることを知りました。

BPOと自己愛パーソナリティ障害は、同意ではありません。重なる部分はありますが、同意とまではいえません。あなたがお調べになった本なりネットなりに「同意」と書いてあったとすれば、それは信頼できないいい加減な情報です。そもそも、パーソナリティ障害とその周辺の理論は、まだまだ確立したものとは言い難いので、あまり詳しく調べても、誤解を増すばかりだと思います。
その意味では、

果たして読むことで何かが変わるのか、それとも知識ばかり得て頭でっかちになってしまい弊害があるのか。

このように、知識を得ることに不安を持たれるのは当を得たことです。
では本など読まないほうがいいかというと、そうとは言えません。このような弊害の可能性を充分に認識したうえで読むのであれば、有益なところはもちろんあるでしょう。しかし上記のように「BPOと自己愛パーソナリティ障害は同意であることを知りました」と、明らかな誤りを信じこんでいらっしゃる様子からすると、弊害のほうが大きくなるのではないかという危惧をぬぐうことは出来ません。ぜひ常に、この弊害を意識して、本を読み進めていただきたいと思います。

それから、【1031】にお書きしたとおり、あなたはパーソナリティ障害とは言えませんので、現状を改善するためには、必ずしもパーソナリティ障害に関する本から光明を見出そうとする必要はないでしょう。読書によって何らかの改善のきっかけを、とご希望なのであれば、パーソナリティ障害や心の病に関するものに限らず、分野を問わず、良書をお読みになって何かを得ることが、現状改善に役立つと考えられます。(パーソナリティ障害などについての誤った知識を持ってしまい、誤った方針を立てることになるよりは、他の本をお読みになったほうがずっといいでしょう。)


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