精神科Q&A
【1553】息子が首をつって自殺しました
Q: 一か月前20歳の息子が山中で首をつって自殺しました。出掛ける時「メシいらないから」と言って普段と変わりなく見えた息子に、夕飯作りが面倒な私は「ラッキー」と言って送り出しました。死のうとしている息子に最後にかけた言葉がラッキーです。少し淋しそうに微笑んで出ていった顔が忘れられません。 真面目で人に気を使う内向的な、でも世の中をななめに見るタイプでオタク的要素の濃い息子でした。
1年前の四月に弟と口喧嘩して弟がふりまわした箸で血管を損傷し緊急入院し手術、それからは毎日薬を飲み定期的に検査をしていました、CT検査による被爆を気にしたり薬の副作用を気にしたり、入院で大学の履修がうまくいかず専攻を変えたり、それでも弟の気持ちを思ってか直接弟に怒りをぶつけることはなく淡々と過ごしているように見えました、3月に再び入院しカテーテルでバルーン治療、1年たたずにまた手術にストレスを感じていたようでした、祖母が死に葬儀に参列、4月に三年に進級できたことを喜んでいましたが専攻を変えたことで以前より暇になり、また三年で就活を意識して部屋でパソコンに向かう時間が多くなりました、もともと遅寝遅起だったのが益々遅くなり暇そうでダラダラしている姿、就職について不安があったようで就職浪人したいとかニートになりたいとか言う姿に私は怒鳴ったりうるさく小言を言ったりしました。7月に入り益々遅く夜型の生活となっていきました、家族は学校や仕事で誰もいない家でずっと一人過ごしていた息子ですが20歳だし前から一人暮らししたがっていたしと、私はさして干渉しませんでした。友達と出掛けることもあったし、公務員試験を受けるといって問題集を買ってきたりもしていたので、少し元気がないようで食欲も落ちていたようでしたが暑さからきているのだろうといいように考え私は呑気に自分の仕事や自分の楽しみのことで頭がいっぱいでした。ただ朝方まで起きているようでもあり、真夜中に幽霊みたいな形相で冷蔵庫の飲み物を飲んでいる姿やいつも開けっ放しの部屋を暑いのに閉め切ってこもっている姿、将来に楽しいことなんてないと以前から言っていたことがオーバーラップして私の中に漠然とした不安があったことも事実です。
亡くなってからパソコンで息子が検索した履歴を見ました。6月終わりくらいから頭痛、耳鳴り、耳閉感、手足のしびれ、自律神経、自立強制、という言葉が並んでいました、そのうち内容が楽に死ぬ方法、首吊り、ロープの種類、国有林などになり自殺する一週間前、特に前日はずっとある自殺サイトを見ていた形跡がありました。そしてそこに書いてある通りの方法でその通りの手順で確実に死ぬ方法でこれから死にますという遺書を残して(見つけたのは翌日でした)出掛ける当日にロープと懐中電灯を買って夜人気のない山の中に一人出掛けていったのです。大学の試験前前日でした。バカな親です。親なら息子を守る責任があるのに守ってあげられなかった、助けてあげられなかった、何故あの時もっと優しくしなかったのか、何故感じていながら息子をほっといたのか、大事な可愛いがって育ててきた息子なのに、悔やんでも悔やみきれません。先生のサイトを見て皆さんの投稿を読んで、息子はうつ病だったのではないかと思いました、息子が自ら自殺を選ぶことが信じられないのです、でもうつ病なら症状としてある、病気だったのだとわかれば納得がいく、だからといって私が息子を追い込んで見殺しにした事実は消えませんが、少なくとも息子自身ではなく病気がそうさせたと思うことで救われる部分がある、しかし先生のサイトに出会うまでうつ病についての知識がありませんでしたから結局は同じことかもしれませんが。 息子はうつ病だったのでしょうか、自殺願望の症状はこんなに早く進んでいくものなのでしょうか。相談できる場がなく苦しい毎日です。
林: ご悲嘆のお気持ちをお察し申し上げます。また、悲しみが癒えないこの時期にメールをいただいたことに深く感謝申し上げます。
息子はうつ病だったのでしょうか
息子さんがうつ病であったかどうか、それはよくわかりません。きっかけとなった血管の損傷がどの程度のものであったのか、そのときの、それからその後の細かい状況は、そして何より、それは直接脳にかかわる損傷であったのか、こうした情報も、判断のためには重要です。
現在は、息子さんがうつ病であったかどうかよりも、あなたご自身の心の整理が大切だと思います。それから、弟さんのほうの状態は如何なのでしょうか。因果関係はともかく、弟さんとの喧嘩がきっかけの一つであったことが読み取れます。メールには弟さんの様子が記されていませんが、弟さんが今、過剰に自責的になっているということはないでしょうか。母親としてのあなたが今すべきことは、後悔よりも、弟さんのケアだと思います。ご自身の自責感だけでもあなたにとって過大な重さがあることはお察ししますが、弟さんにとっては、母親であるあなたからのメッセージ(言葉にされないものも含め)がとても重い意味を持っています。弟さんのケアにエネルギーを注いでください。