精神科Q&A
【1543】統合失調症の治療中だと思われる友人に、再発の兆候があります
Q: 遠くに住んでいる友人のことです。彼女は私と同じ41歳で、独身、家族と一緒に住んでいて、企業に勤めています。普段は会うことがなく、メールで連絡を取り合っています。
3年程前、彼女の言動が「おかしいな」と思うようになりました。職場の男性が自分に好意を持っていて、そのことについて職場の上司や同僚、近所の主婦や子供までが中傷していると言い始めました。「自分のプライベートなメールが社内中で回覧されている」、「夜中に家の外で数人が集まって自分の噂をしていた」、「車の中のどこかに通信機が仕組まれていて、ときどき盗聴しているヤツらの話し声が聞こえる」などと言い出しました。
最初は半信半疑だったのですが、それから半年後に会ったとき、明らかにおかしいと確信しました。駅で会うなり、「電車の中で斜め前のシートに座っていた4人組の男性が『ほら、あの人、あの人』と私の方をチラチラ見ながらずっと笑っていた」と言ったのです。彼女の幻聴や幻覚、妄想なのではないかと考え始めました。彼女のメールの内容はエスカレートしていき、辻褄が合わなくなっていき、一日に何度も送ってくるようになりました。一度彼女の両親に会いに行こうと考えていた矢先、「私、病気みたい」という連絡がありました。彼女の職場の同僚が両親に事情を説明に行き、病院へ行ったとのことでした。「躁病」だと診断されたようです。処方された薬を飲み出してからは、どんどん良くなっていったように思います。自ら幻聴や幻覚だったことを認めていました。
それから1年後に会ったときには、とても穏やかな感じに変わっていました。症状が酷かった頃のことはあまり覚えていないようですが、自分でも冗談半分で笑い飛ばしたりしていました。「まわりの人たちのお陰で助けられた。ありがとう」と言ったり、「ストレスって怖いよ。気を付けてね」と気遣ってくれたりしました。 その後、ときどきやり取りするメールでもおかしい様子はありませんでした。月に一度は通院していて、安定剤をまだ飲み続けていると言っていましたが、ほとんど安心していました。
ところが1ヶ月半ほど前からメールの回数が増えていき、文章が長くなってきました。内容は、3年前と酷似しています。同じ部署の男性が自分に好意を持っていて、しかも自分のために離婚してしまい、社内中の人たちが噂をしているとのことです。「今回は本当よ。先生も幻聴ではないと言った」とも言っていましたが、どうしてもそうは思えません。 社内での話はともかく、「躁病」と診断されたこと、今も通院していること、薬を飲み続けていること、何もかも彼女から聞いたことなので、疑わしい点もあると思っています。ただ願うのは、きちんと通院してくれることです。治療を続けていても再発するものでしょうか。また、再発と思われる場合に、それを本人に指摘してもいいのでしょうか。「本当にきちんと病院に行ってる?以前みたいな兆候があるよ」などと言ってもいいものでしょうか。
林: あなたのお考えのとおり、これは統合失調症の再発です。いったんはかなり良い状態になってからの再発のようですので、最も考えられるのは薬を飲むのをやめてしまったことです。このようなケースの再発の大部分はそれが原因です。
治療を続けていても再発するものでしょうか。
それはあり得ることですが、実際には、治療を続けているとまわりは思っていたのに、実は続けていなかった(薬を飲んでいなかった)というケースが大部分です。
再発と思われる場合に、それを本人に指摘してもいいのでしょうか。「本当にきちんと病院に行ってる?以前みたいな兆候があるよ」などと言ってもいいものでしょうか。
そうしたことが治療の再開につながるかどうかは、ひとつはあなたと本人の関係、もうひとつは今の病状によります。あなたと彼女はメールで連絡を取り合うだけの関係になっていることから考えると、あなたのアドバイスにしたがって治療が再開される希望はあまり持てないでしょう。また、仮にあなたが彼女からとても信頼されていたとしても、病状が一定以上に悪ければ、やはりアドバイスは無効です。
彼女はご家族と同居されているとのことですので、ご家族に再発の徴候について連絡して差し上げるのが、あなたに出来る最善のことだと思います。