精神科Q&A

【1512】うつ病が回復して徐々に職場復帰を目指しておりますが、再発しないか不安です


Q:  私は34歳の男性で、この度24歳の妻と結婚したばかりです。 昨年9月に今の会社に転職をしましたが、3ヵ月ほど経ったころにひどい憂鬱感と不安感に襲われ、突然泣き出してしまうなどの症状がでたため、心療内科に行ったところ「軽度のうつ病」だと診断されました。原因は「生真面目な性格」「慣れない仕事での悩み」「上司との人間関係」のせいであると思われます。(参考までにこれまでにうつ病になったことは一度もありません)
○生真面目な性格:新しい会社で早く成果を出して、会社に貢献しなければという思いが強すぎたのかも知れません。今までの会社では、それなりに実績を残せていたので、ある程度は自信があったのですが…。
○慣れない仕事での悩み: 面接時の会社/私の相互の勘違いのせいで経験のない業務を担当することに。自分なりにやってはみたものの、失敗を繰り返し成果を挙げることができず。ひどく自信喪失と被害妄想を感じました。 
○直属の上司との人間関係: 年下の女性上司ですが、細かい注意を毎日され続けた結果、目を合わせるのも怖い状態です。他の人とは明らかに対応が異なるなど、嫌われているのは明白です。業務上、一日中狭い部屋に一緒にいるので、ずっと視線を気にしながら過ごさないといけない。 
(発症時)パキシル 10mgドグマチール 1錠メイラックス 1錠 主治医、産業医、部門長とも相談した結果幸い早めに病気の発見ができたため、まだ軽度の状態である。まずは業務量の軽減と、勤務環境を変えることで様子を見ましょうということになりました。 業務はひとりで黙々とできるルーティンワークが中心になり、残業はなし。配属はそのままですが、別のオフィスでの勤務となり、苦手な上司と顔をあわせずに働く事ができるよう配慮してもらいました。(ただし、電話・メールでのやりとりは残る) 

それから半年ほど経過しましたが、だいぶ症状もよくなり、薬も減らす事ができました。職場では多少の息苦しさはありますが、与えられた仕事は前向きに取り組めるようになりました。また、職場以外では、うつ病とは思えないほど活発な生活を送れるようになりました。 
(現在)パキシル 10mg のみ ・自宅では妻と談笑している・休日は趣味のスポーツを楽しんでいる ・友人や家族にはうつ病のことを伝えていないが、誰にも気づかれていない ・睡眠障害、食欲不振もごく軽度である 

ただ、会社ではいまだ何の成果も挙げられておらず、職場内でも居心地の悪さを感じています。周囲の社員からも「あいつは何をやっているんだ?」という目で見られているようでひけ目を感じてしまい自分から積極的にコミュニケーションを図る事ができません。もしかすると「うつ病」ということに甘えてしまっているんじゃないだろうかと悩むことも多々あります。 先月の診察時に「様子を見ながらですが、少しずつ仕事を元に戻していってもよいでしょう」といわれましたので、産業医・部門長とも相談して復帰へのスケジュールを組む事になりました。しかし、「元の仕事に戻る事でまた再発しないか」「本当に自分はこの仕事ができる能力があるのだろうか」「二度とあの上司とは一緒に仕事をしたくない」 などと不安は募るばかりです。部門長からは、できれば部署異動はせずに、採用時のポジションで頑張って欲しいと言われており、さらに不安が増してきております。 一般に、うつ病から職場復帰に成功されている方は、どのようなステップを踏まれているのでしょうか? また再発防止するために心がけることがあれば、アドバイスいただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。


林: この【1512】の質問のタイトル、すなわち、

うつ病が回復して徐々に職場復帰を目指しておりますが、再発しないか不安です

は、多くのうつ病の方が、ある時期には共通してお持ちになる不安です。
うつ病は治る病気ですが、多くの場合、完治する前か、完治しているのかしていないのかくらいの段階で職場復帰する形になりますので、どの時点でどのようにして職場復帰するかによって、その後の経過は変わってきます。いかにしてスムースに復帰し、スムースに病気を治すか、それに関する研究はたくさんなされており、結論としては、この【1512】の主治医の先生のおっしゃる通り、

様子を見ながらですが、少しずつ仕事を元に戻して

いくのが概して最善です。具体的な方法は職場の事情によっても様々ですが、短時間勤務から始めていくのがごく一般的です。厚生労働省も公式に職場復帰への支援方法を提唱しています(「厚生労働省」「職場復帰」のキーワードで検索してみてください)。但しこれはあくまで心の病一般についての支援方法であって、うつ病という特定の病気についてのものではありませんので、参考程度にとどめるべきでしょう。

また再発防止するために心がけることがあれば、アドバイスいただけますと幸いです。

もちろんそれも主治医の先生のアドバイスに従うのが最善ですが、ひとつだけうつ病で一般的にいえることは、
回復には波があり、その波を再発と勘違いしないこと
が大切です。
波というのはつまり、順調な回復でも、時々は調子の悪い日があるということです。これは笠原嘉先生の軽症うつ病に、微小再燃という言葉で紹介されています。微小再燃は再発ではありませんので、「再発してしまった」と思いこまずに、「治るまでの過程ではこういうことは普通にある」と割り切ることが大切です。

それから逆に、とても調子のいい日や期間があることもあり、むしろそういう時に注意が必要です。つまり、調子がいいと、つい治ったのではないかと考えがちですが、そう考えて仕事をし過ぎるのは危険です。再発の危険が高まります。調子がいいのも波の一つにすぎないと認識し、そういう日もセーブすることが、結果的にはスムースな回復につながります。


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