精神科Q&A

【1493】更年期障害と思っていたのですが、17年前の統合失調症が完治していないのでしょうか 


Q:  私は40代前半の女性です。
 17年ほど前の話です。
会社では、個人的に気に入らないという上司にいじめにあい、その後、退職したものの家族とのトラブルで無理な家出をし、精神的に追い詰められて幻聴に悩まされるようになりオカルト的なものに逃避願望もあったため、自動書記をやり、家族に金銭を持ち逃げして家出したと問い詰められ、自分の貯金を持って出ただけの自分は、すべてに失望して、生理が始まると同時にコントロールが難しくなり完全に幻聴のいうままになり、正気を失い、さまよい歩きました。

時折、正気に返ると何をやっていたんだろうと思うこともありましたが、ほぼ2日は幻聴にコントロールされていました。迎えにきた親が心配するどころか怒ったのでなんて酷いと逃げ出したりしていたので時折正気が顔を覗かせるようでした。幸い、家族により精神科に強制入院させられ、昏睡状態後、かなり、正気を取り戻して、元気になりました。

『狐つき』という診断がされており、三ヶ月の入院後、感情は不安定でしたがほとんど完治したようにみえていました。投薬があわず、薬の副作用に悩まされなにが効果をあげたのか判明しないまま病院がいやでがんばって退院したのですが、やはり、通院し薬が合わず仕事に集中できないためやめてみると元気になり、つくづく薬の副作用のおそろしさを痛感してしまいまいした。

 しかし、実際は完治していなかったようです。
さまざまなワークショップやカウンセリンを受けメンタル強化をしてきているので、かなり以前よりは安定しているとは思うのですが、生理前後になると過敏になり、職場でストレスをうけると、「あの人の態度が気になる」「ほかの人と話しているとうわさされているように感じる」と特定の人物に限定して批判されているように感じたり、更年期的なものも加わってかPMS的な症状も出てきて、自己批判を無意識にしているようです。DVな家庭に育ったのが一番の原因とは、思いますが結局、被害者意識が続くとつらくなり、職を転々としてしまっています。

薬もあわないことが多く今は漢方を服用しています。結局、愛情を受けていると感じられるときには、職場であろうと、症状は出ないこと。生理前後は悪化し、厭世感に苦しめられることもありますが、すべてやり過ごすことでなんとかなることは把握できるようにはなりました。気になる対象は昔のいじめ体験から、父ににた支配的な人間に嫌悪と依存を感じて発症しているようです。

12年近くは一人暮らしをしているのと普段は見せないようにしているので、なかなか理解してもらえません。
気になる過敏さは「自分の思い込み」であると判断できるのですが、気持ち悪くなったり、ぴりぴりしたり哀しくなってコントロールが難しくなってしまったりします。自己管理ができるようになり、もっと自然に生活したいとつくづく中途半端な精神状態に疲れてしまったりします。近年、PMSメインで対応してきましたが、やはり、症状からすると統合失調症で、以前の発症が完治していないのでしょうか?(そういわれたことはあります) いやいや頂いた新薬は効きませんでした。自然の中に家族や友人と遊びにいったほうが元気になります。遊んでいれば元気でいられるならそうしていたいのはやまやまですが。
仕事は好きですし、人とかかわるのも大好きなんですが。

適切なご判断をいただけたら幸いです。よろしくお願いします。


林: あなたは統合失調症です。17年前の入院は、統合失調症の悪化で、治療により回復しておられますが、薬を飲んでいないため、その後も時々陽性症状が出ている。経過はこのようにまとめることが出来ます。
ただし、そうは言っても大きな問題なく薬なしで17年間過ごしておられますので、統合失調症としては軽いといっていいでしょう。
そしてこのような場合、

生理前後になると過敏になり、職場でストレスをうけると、「あの人の態度が気になる」「ほかの人と話しているとうわさされているように感じる」と特定の人物に限定して批判されているように感じたり、

このように、生理前後だけ軽い症状(あなたのこの症状は、関係念慮と呼ぶことが出来ます)が出るケースもしばしばあります。(これは女性ホルモンのエストロゲンと関係しているというデータもあり、統合失調症の治療として、抗精神病薬に加えてエストロゲンを用いるという試みもなされています)

そして、陽性症状があっても、それが軽く、生活上問題がなければ、特に治療の必要はないという考え方も出来ます。けれども、

結局、被害者意識が続くとつらくなり、職を転々としてしまっています。

この現実を見ますと、「生活上問題がない」とは言えないでしょう。そして、経過と症状からみて、ごく少量の抗精神病薬を飲むことによって、あなたの症状はきれいに消えることが十分に期待できます。

いやいや頂いた新薬は効きませんでした。

「○○という薬は効きませんでした」ということをおっしゃる方はよくいますが、この「効きませんでした」は、残念ながら情報としての価値がありません。薬は適切な量を適切な期間飲まなければ効くものも効きませんから、具体的にどの程度の量をどれだけの期間飲んだのか、その情報がなければ、はたしてその薬がその人に効くのか効かないのかは全くわかりません。特にこの【1493】の方は薬を嫌っていることが明らかですので、その本人から「効かなかった」と言われても、到底そのまま受け入れることは出来ません。

まとめます。
診断は統合失調症です。軽い症状が長年続いています。その結果、仕事上支障が出ています。少量の抗精神病薬で著しい改善が期待できます。治療を再開すべきです。


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