精神科Q&A
【1468】うつ病になったのは会社が悪い?
Q:
欠勤中の社員が、うつ症(自分はうつ「症」であって、「うつ病」と言うと人権侵害で訴えると言います。)になったと言って、弁護士を立ててきました。 弁護士から来た内容を読むと、1.上司が自分の理解できない分野の仕事をお願いしたのは、嫌がらせによるパワーハラスメントだ(業務の一部でした。他の社員はやっていることでした) 2.喫煙所で喫煙をしているのを見かけた上司が理性をなくして怒鳴りつけたのは、パワーハラスメントだ(怒鳴った事実はありません)喫煙をしていたのではなく禁煙パイポをくわえていたのに喫煙者扱いしたのは人権侵害だ。 3.後ろに座っている席の女性がいつも自分のPC画面をそれとなく見ている。電話を聞き耳を立てて聞いている。(2メーター以上離れて背中合わせなので、あり得ません。) 4.人事担当者が電話をしてきて、解雇を迫った。(あり得ません) 5.同僚はみな上司にへつらい、いつも上司の機嫌を損ねないようにしている。電話を聞いていたと本人が言う女性は上司と関係があって、気をつけた方が良いと同僚に言われた(そのようなことはありません) 6.上司も会社も解雇しようと思って、原因を作ることをやるようにし向けたり、行動を観察して、指摘しようとしている。(あり得ません) 上記のことが原因でうつ症になったので、生活保障と慰謝料で3百万払えば訴訟に持ち込まず、顧客にも発表せずにいる。訴訟になったら要求額は5百万以上になり、顧客に発表するという、弁護士先生の口から出るとは思えないような、ほとんど恐喝のような内容でした。 その上、上記6項目は、会社側としては全く心当たりがなく、当初は「作文」してその内容で脅迫してきていると考えていました。会社が公表や裁判を怖れてお金を出すと思っているのだろうと思っていました。うつ症の診断書は、町の内科医の先生に書いていただいたらしく、先生に電話をしたところ、「本人の申し立てのとおり書きました。異例の診断書です。」と言うことで、会社への文句や、通勤のつらさを書いて、そのため「うつ症」になったということでした。 ところが、こちらを拝見して、もしかしたら彼は、何か被害妄想のような病だったのではないかと考え始めました。電話口で怒鳴るとか、道ばたで怒鳴るとか、ほとんどあり得ないことを言っているのも、彼はそうされているような妄想があるのかも知れません。病気だった場合、彼の妄想したことを理由に会社を訴えると言うことが本当に可能なのでしょうか。また、会社は彼にきちんとした精神科、もしくは心療内科の病院にかかるよう要請することは出来るのでしょうか。
林: この社員の方は統合失調症だと思います。うつ病でないことは確かです。被害妄想の内容は、統合失調症として典型的です。精神科での治療が必要です。今かかわっている弁護士・医師がそれを認識しているのか、いないのか、わかりませんが、文面から判断する限りでは、少なくともこの弁護士は信頼できる人物とは思えません。いずれにせよ、治療を始めなければ症状も状況も悪化するばかりでしょう。
病気だった場合、彼の妄想したことを理由に会社を訴えると言うことが本当に可能なのでしょうか。
これは意味のない質問です。訴えることは常に可能です。しかし、不毛な争いになるでしょう。
会社は彼にきちんとした精神科、もしくは心療内科の病院にかかるよう要請することは出来るのでしょうか。
これも意味の小さい質問です。要請することは常に可能です。しかし、一体誰にどう要請するおつもりなのでしょうか。単なる要請で、受診が実現するとは到底考えられません。
もしあなたが上司としてこの社員の病気について本当にご心配されるのであれば、もっと現実的な行動をお考えになるべきです。一方、訴訟を提起している相手として争うつもりなのであれば、その場合もやはりもっと現実的な行動をお考えになるべきです。意味の小さい質問を、ネットなどに投稿している場合ではありません。