精神科Q&A

 【1381】時々キレる主人は境界性人格障害なのでしょうか


Q主人は49歳、私は43歳、中1と小3の子どもがいます。主人が時々キレる事から境界性人格障害を疑っています。 具体的な例として 
○子ども(8か月時)が泣いていたら「俺は仕事で疲れてるんや」と子どもが入っているベビーサークルを蹴って家を出て隣県まで行き車の中で寝た
○子ども(3歳時)が車に乗るのをぐずったので、むりやり乗せたら子どもの頭がダッシュボードにあたった
○子どもの姉弟げんかを私が怒っていたらキレて「俺の親に言いたい事があったら直接言って」「実家も会社も家もどこも落ち着く所がな
い」と言って出て行った 
○子どもの姉弟げんかにキレて、子どもの頭をゲンコツで叩きリビングにある物を手当たり次第に投げつけた。リビングはめちゃくちゃになった。
家のローンを払っていく事が不安だったようで「この家に帰ってくるのが憂うつなんや」と言って家族との接触を断ちこの日から3週間自分の部屋から出勤するようになった。が伯父の葬儀の件で話をしに行くと普通で葬儀後は普通の生活に戻った。病院で自律神経失調症と診断され、自分のペースで生活するように言われたから家族との接触を断ってその様にしていたらしい。なぜ言葉にして私に言ってくれないのか。
○自分でカップ麺をこぼした事でキレて、リビングの物を手当たり次第にゴミ袋に詰めだした。 この日から、主人は2階、私達は1階で生活する家庭内別居が1年半続いています。食事は外食か弁当を買っているみたいです。洗濯は週末の深夜にしてます。会話もいっさい無く、顔もまともに見ていません。

用事があって携帯に電話すると普通に喋ります。メールをすると絵文字入りで返事がきます。が、私の伯父が亡くなった事、長男が指をケガした事を伝えた時は返事はありませんでした。また、長女が小学校卒業時と中学校入学時に長女自身がメールを送りましたが返事はありませんでした。
子どもたちの事は「お子さん」とメールにあります。
あと小さくキレた事が3回程あります。主人はひとりっ子で実家は田舎の旧家でしきたりのうるさい所です。昔は男尊女卑が激しかった所だそうです。
主人が18歳時に実母が病気で他界して、早くに実家を離れて自立したようです。よってしきたりは何にも知らず、覚える気もないみたいです。今年のお盆も体調が悪いと言って帰省していません。主人の話から幼い時に両親に愛情を充分受けていなかったように感じました。
正社員として今在籍している会社は勤続14年になります。交際中2年と結婚直後1年の3年間で3回転職しています。それ以前に2回は転職しているようです。

あと気になった言動として
○結婚するにあたって、新居、新婚旅行の事をほとんど考えてくれなかった
○結婚当初就職して1か月以内位で勝手に退職してきた。
○知人の披露宴出席で送迎頼んだら「送り迎えしなあかんのかぁ。まぁ、今日の予定は何にもないけど」と言った
○私が妊婦の時荷物(ラーメンの箱2箱)を持ってと頼んだら「俺が持つの?」と言った
○子どものオムツ変えを頼んだら「これはあんたの仕事やから仕事取ったら悪いやろ」と言った
○子どもがやけどした時怒るばかりで冷やす処置をしてくれなかった 
○子どもが頭を打って血を流しているのに怒って自室に入り、病院に連れて行ってくれなかった 
○給与明細見ながら「俺ひとりやったらこんなに年金ひかれないのに」「俺ひとりやったらこんな会社とっくに辞めてる」と言った
○会社の上司に言いたい事言って、ボーナスの査定に響いた事がある
○「会社の人間はアホばっかりや」(どの会社に行っても)と言った 
○自治会の班長(主人の名前で)になった時、何にも協力してくれない事を言ったら「俺は会社で役やってるし」と言った。

会社には普通に出勤しています。
町内の方の葬儀には出席してくれました。
子どもに玄関前で会ったら「おう。」と言ってくれた事もあるみたいです。
キレていない時は、温厚で物腰も柔らかくとてもいい人に見えます。
頼りない感じです。寝ている子どもたちにキスしたり、会社の帰りにお菓子を買ってきてくれたりしていました。
休日は自らドライブに連れて行ったりしてくれました。頻繁にキレるわけではなく、何年かに1回という感じです。でも、子どもの打ちどころが悪くて取り返しのつかない事になっていたら、と思うと怖いです。

キレた時とのギャップが激し過ぎて、どちらが本当の姿なのか解りかねます。
人格障害なのか、大人になりきれない大人なのか、ただ結婚せずに自由に生きていたかったのか。
2階で物音がするとそれをきっかけにキレるのではないか、とドキドキします。こんな生活から脱却したく話し合いたいのですがキレたら怖いのでできません。長文失礼しました。いったい主人の言動をどうとらえたらいいのでしょうか?
やはり人格障害なのでしょうか?


林: 人格障害(パーソナリティ障害)とは、「人格の著しい偏り」です。
そうしますと当然ながら、何をもって著しい偏りと判断するのかという問題が出てきます。
これは厳密には誰にも答えられない問題ですので、「では人格障害(パーソナリティ障害)という病名には意味がない」さらには「人格障害(パーソナリティ障害)というものの存在を認めない」という意見もあります。一理ないこともない意見と言えるでしょう。
 けれども、人格障害の実例に直面すれば(たとえば精神科Q&Aの人格障害を見てもわかるように)、やはりこれらは何らかの病的な状態であると大部分の人々が認めるというのも否定できない事実です。
そのような事実があるからこそ、人格障害(パーソナリティ障害)は、精神障害の一つとして位置づけられているのです。

しかし、人格の著しい偏りといえるのか、いえないのかという境は曖昧にならざるを得ません。
そこで診断基準には
「臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている」
という項目があります。これを満たさなければ、人格障害(パーソナリティ障害)という診断は下せないことになっています。
この視点からこの【1381】を見ますと、

頻繁にキレるわけではなく、何年かに1回という感じです。

という現状では、人格障害(パーソナリティ障害)と診断するまでには至らないということになるでしょう。

ただし、質問者がご心配されているように、たとえ頻度は少なくても、何か問題が生じたら、たとえば

子どもの打ちどころが悪くて取り返しのつかない事になっていたら、と思うと怖いです。

という問題が生じたら、「臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている」と言えることになるでしょう。そして、まだそうなっていなくても、そうなる見込みがきわめて高ければ、やはり同じこととも言えます。

ですから、厳密に人格障害(パーソナリティ障害)であるか否かということを考えるのではなく、現実に何か問題があるか(または今なくても問題が切迫しているか)を考えるべきだと思います。それによって、質問者の方も取るべき行動をお決めください。

なお、この【1381】のメールに書かれている、ご主人についての指摘の多くは、文面上は、単なる夫に対する妻の不満の平凡な例であるとも読めます。だとすれば、問題はご主人にあるのではなく、このようなことを精神科医に質問しようとする質問者(妻)の側にあるのかもしれません。しかしそれはメールだけからは判断しかねます。


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