精神科Q&A
【1324】統合失調症の同僚の言動が限度を超えてきた
Q:
私は34歳の女性です。ある事業所で働いています(小さな一般企業です。福祉施設ではありません)。その事業所には障害者の自立を支援するという理念があり、スタッフの中に統合失調症のある方2人(男性と女性)がいらっしゃいます。おふたりとも現在も精神科薬を飲んでいます。
私たちから見たならば、このおふたりは仕事をしているとは決して言えず、朝から夕まで新聞を読む、大きな声で話し続ける、夜昼なくまとまりのない電話をかけてくる、情緒不安定、妄想や幻聴もあり、病状としてはかなり重度な印象を受けています。
一度つかまったら(失礼な表現ですが)1時間でも2時間でも話しを聞かなければなりません。細かい事をあげればきりがないので書きませんが病気がそうさせている、おふたりも辛いのだ、という思いから、何とか日々勤務をしています。
しかし、最近様々な問題がおき、非常にストレスフルな職場環境になってきました。
相手を思いやる、とか、障害を理解する、などと正直きれいごとですまなくなってきたのです。
この2人がお付き合いをするようになり、それは私がとやかく言うことではないのですが、それをきっかけに、さらに病状が悪化してきたのです。
男性は他人が居ても、平気で女性に怒鳴り続ける。話しがとまらない。
女性は特定のスタッフの家に夜中でもかまわずに電話をかけ、自分のことをわかってほしいと話し続ける。
このようなことが日常繰り広げられるようになりました。
休息を勧めたいのですが、サポートしてくれる家族が居ないこともあり、本人達の意のままの状況が続いています。休息を進めたら違う意味にとられそうで怖いです。
さらに、あるスタッフがその男性に怒鳴り続けられたことで、突然大きな声(何を言ったのかわかりません)とともに、ばったり床に倒れてしまうということもありました。
また周囲のスタッフも好き勝手する(こちらの立場から見ればですが)2人に対して嫌悪感を持つようになってきました。
スタッフ全員、精神障害のこうした症状に振り回されて疲労困憊しているのが現状です。
こうした精神症状に対し、どのような対応をしていくのが良いか。
基本的な考え方(スタッフの精神的にも巻き込まれないための)などアドバイスいただけると非常に助かります。
林:
こうした精神症状に対し、どのような対応をしていくのが良いか。
これは職場での対応での限度を超えていると思います。職場を休んでいただき、しばらく治療に専念、場合によっては入院していただくべきでしょう。
その事業所には障害者の自立を支援するという理念があり
その理念自体はもちろん尊重されるべきですが、だからといって過剰に受け入れるのは、障害者ご本人にとっても、また職場にとっても、プラスになるとは思えません。むしろ逆効果です。つまり、障害者本人にとっては自立の妨げとなり、職場にとっては「障害者を雇っても仕事にならない」という(誤った)考え方を助長することになりかねません。
「障害者であるというだけで、何があっても受け入れる」
ということでは、
「障害者であるというだけで決して受け入れない」
ということと、表面的には正反対ですが、結局はどちらも同じように大きな差別ということになります。この【1324】のような状態になってもなお、障害者だからという理由で受け入れる(といっても、ただ職場に来ることを容認しているだけでは受け入れているとは言えないでしょう)ことは、「障害者の自立を支援するという理念」にかなっているとは言えません。こうした精神症状に対し、どのような対応をしていくのが良いか。
基本的な考え方(スタッフの精神的にも巻き込まれないための)などアドバイスいただけると非常に助かります。今のこの方の症状は、職場で対応を考えるというレベルではないと思います。職場だけで抱え込んでいたら、事態は悪化するばかりになるでしょう。対応を考えるよりも、より積極的な治療をすべきです。