精神科Q&A

  【1321】アルコール問題で手に負えない65歳の父


Q: 35歳の女性です。父65歳のことで質問があります。いま父は母と二人暮らしです。 

父は、59歳の時に理不尽なリストラにあい、家に居るようになってからアルコール依存症の状態が悪化しました。 (父は15歳から働き始め、飲酒もその頃から始まっている 仕事が終わると毎日ビール1〜2本飲んでいた 相談者が10代の頃の記憶の飲酒量です。父が40代の頃) 

どのように悪化したのかというと 
50代から無職になる前は仕事が終わってビール(500mlを4〜8本)を飲んでいたが、リストラされてからは発泡酒に変えて飲酒量が一日に発泡酒(第3のビール)500mlを12〜18本を飲むようになった。

飲んでいる時の異常行動が烈しくなったのは61歳(リストラから3年後)からで 昼夜逆転して夜中に自分が疲れて寝るまで大騒ぎすることが多くなり、下記の様な事をする。 
・子供達に話しがあるので呼べと騒ぐ(相談者の家の電話に無言電話を毎日必ず掛けている) 
・今から家中を掃除しろと寝ている母に命令(自分が気の済むまで何時間でも) 
(夜中だけでなく、朝仕事に行く母や、帰って来て玄関で靴を脱ぐ母に「家が汚いから今から掃除をしろ」としつこく母に命令) 
・「子供が独立したので開いている部屋2階の6畳を誰かに貸すぞ」という話を気の済むまで際限なく話を母にする 
・朝3時ごろから外出し、町内の道路に落ちているゴミ(タバコの吸殻や空き缶)拾いをする 
 介護用のカートを押して飲酒しながら、気が済むまで徘徊する 
そのほかには 
・家から歩いて5分ほどの小学校前のバス停用のベンチに下校時に合せて座っている(小学生が面白がって話しかけてきたことが楽しかったらしい) 
・自分の年金がなくなると、金をくれるまで妻に包丁で酒代を出せと脅かす 
・母に無断で電化製品回収業者や廃品回収業者を家に入れて使用できる(金になる物を)タダで引き取らせてしまう 
・家族に相談なしでリホーム詐欺まがいの業者に契約をしてしまう(白蟻駆除や外壁塗装や耐震補強) 

64歳になってからは近所の公園のベンチや店舗内のベンチで昼夜問わず呑んでいるので(家で飲んで欲しいと言っても聞かない) 
近所の人又は、店員に警察を呼ばれて、大騒ぎになってパトカーで家に連れ帰えられてしまう 
迷惑行為は@毎日公園に出かけて、公園で遊んでいる子供に話しかけている 
       A酩酊が進むとベンチにひっくり返って寝ている 
       Bスーパーでいつも腰掛けているベンチが無くなっている(催事や季節商品を置く為)事や商品のことで店長とケンカとなり警察を呼ばれる 
       Cスーパー前の焼き鳥屋(移動販売車)の前で長時間飲酒をし酩酊し警察を呼ばれる 
       Dホームセンター店内で騒いで警察を呼ばれる 
       E町内の道端でカートに座って飲んでいるので、警察を呼ばれる 
@〜Eを繰り返し(父のその日行動した範囲内で起こすので不定期ですが、外出すれば、3日に一度は警察官に家まで送られてくる) 
これ以外にも周囲に迷惑を沢山掛けた事例があります。 
手の震えや記憶がなくなっている事が多い事や慢性の下痢など体調の異常もあるのですが、倒れないのが不思議なくらいです。 
長文になってしまいました。申し訳ありません。 

アルコール専門病院には父60歳の時に家族全員で診察に行ったのですが、
診察と検査で3時間(脳には萎縮なし、心臓は異常なし、血液検査結果は覚えていません、) 
その後先生と家族で2時間も本人を説得をしましたが 
先生に「残念ですがこんなに家族が説得しても本人が治療の気持を持ってくれないので入院はムリです」と言われてしまいました 

相談者も必死で父の入院先を探して回りましたが、憔悴して燃え尽きてしまいました。 

本人の同意がないので 相談者も相談者の夫もアルコール専門病院には入院させられないのではと考えています。 
肝硬変や何かの重症な病気にならない限り、入院は出来ないと思っています。 

この様な状態でナゼ母が家を出て行かないのかというと、相談者や相談者の弟に任せたくない(負わせたくない)その一心だけです。 
同居している母の体調や神経や精神も限界です。措置入院の手続きはどうしたらいいのでしょうか??


林: お父様の飲酒歴を要約すると、
15歳ころ初飲
59歳に飲酒量増加(大量飲酒開始)
61歳から飲酒時の問題行動が著しくなる
となり、この「飲酒時の問題行動」は、誰が見ても限度を超えたものであることは明らかです。それがすでに4年続いているわけですから、アルコール依存症としての治療が必須で、アルコールをやめる以外には希望ないことも確実です。
したがって、アルコール専門病院を受診されたのは適切でしたが、

アルコール専門病院には父60歳の時に家族全員で診察に行ったのですが、
診察と検査で3時間(脳には萎縮なし、心臓は異常なし、血液検査結果は覚えていません、) 
その後先生と家族で2時間も本人を説得をしましたが 
先生に「残念ですがこんなに家族が説得しても本人が治療の気持を持ってくれないので入院はムリです」と言われてしまいました 


という結果で失望されたことと思います。
ですが、これはアルコール専門病院としては適切な判断であったと思います。これだけの問題行動がありながら治療を拒否されるということは、仮に入院しても、アルコール治療プログラムに従うことは出来ず、短期間で自己退院ないしは強制退院となることは目に見えているからです。
 そうしますと、

肝硬変や何かの重症な病気にならない限り、入院は出来ないと思っています。

とお考えになるのも理解できますが、そのときは完全に手遅れです。あるいはその前にご本人が命を落とすことになるかもしれません。また、早晩お母様が倒れるのも目に見えています。

したがってその前に強制的にでも入院する以外ないところですが、

措置入院の手続きはどうしたらいいのでしょうか??

このケースは措置入院の適応にはおそらくならないと思います。医療保護入院を考えるべきです。もっとも、入院してもはたして効果があるかどうかは不明、というより、希望はかなり小さいでしょう。しかし今はその小さい希望に賭けるしかありません。この【1321】のように、退職をきっかけにして飲酒量が増大し、急速にアルコール依存症になるというのは比較的よくあるケースです(「理不尽なリストラにあった」とのことですが、理不尽であったか否かとはほとんど関係はありません)。もっと早い段階で何とかすべきでした。

 


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