精神科Q&A

  【1245】行為障害から反社会性人格障害になったと思われる30代の弟


Q: 30代前半の弟についてご相談させていただきます。
あまりに色々な事がありすぎて何からお話しすればよいのかわからないのですが、幼少期から順にお話させていただきたいと思います。

最初に問題をおこしたのは6歳の時でした。
おもちゃ屋で万引きをし、お店から学校に連絡が入りました。
この時から両親の弟の尻拭いが始まりました。
その後も別のおもちゃ屋で2〜3度万引きをしました。
その都度親から厳しく注意を受けたのですがその場では涙を見せるものの心底では反省などしていない様子でした。

中学1年の時友達の家にトイレの窓から侵入しゲームと1万円を万引きしました。
壊したトイレの窓の鍵の弁償と盗んだ物の返却で穏便にすませてしまいました。
この頃から家庭内暴力(特に母に対して)と朝起きないことが19歳まで続きます。
両親は腫れ物に触るように接していました。
高校を2年の夏休み頃で中退しました。
この頃から高価な買い物をするようになりました。熱帯魚や犬など到底自分では払えないようなものを買ってきて親に支払いをさせていました。
自分で水道工事の会社の仕事は見つけてきたものの朝起きられないことと一貫した無責任さとで長続きせず、同じような業種を転々していましたが小さな街ですのでどこにも使ってもらえないような感じになり19歳の春に富山県(滋賀→富山)へ出て一人暮らしを始めました。
たまたま友達になった人が富山の人だったという安易な考えでした。
この時私も両親もホッとしたというのが本音です。
暴力にビクビクしていましたので。
ただ親元を離れたことで最悪の方向へ向かっていったのです。

19歳でサラ金に手を出しました。(このことは後で知ったのですが・・・・・。)
24歳でA子を妊娠させて結婚。
25歳で結婚するようなことを言ってB子をだまし330万円貢がせる。
26歳で既婚にもかかわらずC子とその家族にまで独身と偽り結婚を匂わす。
実家にまでC子を連れてきて親に合わせる(正気の沙汰とは思えません。)その後子供まで作る。認知したが養育費や慰謝料等払っておらず。
その後すぐに離婚。前妻と子供にも養育費等は払っていない。

仕事面でも実家にいた時と同じように朝遅刻したり無断欠勤したりで信用をなくし続かず、横柄な態度や人とうまくつきあえない(最初のうちは愛想がよくてもそのうち本性がばれてしまう)等で転々としていました。

その他にも家賃滞納・公共料金滞納・車検切れの車を乗り回すなど普通の人では考えられないことを平気でやってのけます。

15歳くらいから嘘がうまく、パッと言われたことにすぐにパッと嘘がつける(嘘とは思えないくらい)人間でした。
1年半くらい前に拾ってくれた会社(Y工業)では仕事はしっかりとやっていたようですが、Y工業で使った材料費を横領したり、また、会社の取引先の女性D子から30万円を貢がせました。
D子は3月に母親を亡くされたそうなのですが、自分も母親を癌で亡くしたと嘘をついていたそうです。
父もC子の時に死んだことになっていました。
そういう嘘もペラペラと出てくるようです。

Y工業の取引先での出来事だったので実家に社長から電話があり両親は呼び出されました。
とにかく嘘がうまく社長には前妻とよりを戻して子供と3人で暮らしていると言っていたようですし、両親がD子にも会ったところ罵倒され小説家になればいいとまで吐き捨てられたそうです。

それだけの事をしても全然反省の色がなくそれどころか開き直る感じです。
Y工業の社長からとにかくもう実家に連れ帰ってくれと言われ1週間前に4年ぶりに実家に戻りました。

文章にするとわかりにくくなってしまうのですが、異常なほど嘘つきなところ、暴力的なところ、良心のないところなど、色々調べてみたところ弟は行為障害→反社会性人格障害ではないかと思うのですが・・・。

すべて犯罪なので本来であればその都度その都度警察のご厄介になるはずなのですが、いつも父がお金の面で尻拭いをし、相手も警察に訴えたりしなかったのが裏目に出ているのだと思います。

今日母が地元の精神科に相談にいったところ、どうしても診断しろというならば反社会性人格障害と診断しないこともないけれど、ここ10年くらいに何をしても無罪放免で来ているのでそういった回路が麻痺してしまっていて病気の面というより司法の手を借りた方がいいと医師に言われてきました。
本人に治療の意思がないものは治療もできないし人権問題で入院処置もできないと言われました。
知り合いの警察の人にも相談したのですが、やってきたことは全て犯罪だが結局現行犯でない限りは動けないのでどうしようもないと言われました。

もちろん弟は自分がおかしいとは少しも思っていないのですから自分から病院に行くというはずもなく、引きずってでも連れて行くべきでしょうか。
それとも何か事件が起こるまで待つしかないのでしょうか。


林: 弟さんは反社会性人格障害の可能性がかなり高いと思います。

弟は行為障害→反社会性人格障害ではないかと思うのですが・・・。

という質問者のご見解は、その通りです。そもそも反社会性人格障害の診断基準に、「15歳以前に行為障害であった」、という一項があります。つまり、この【1245】のケースはかなり典型的と言えるでしょう。

すべて犯罪なので本来であればその都度その都度警察のご厄介になるはずなのですが、いつも父がお金の面で尻拭いをし、相手も警察に訴えたりしなかったのが裏目に出ているのだと思います。

それは確かにその通りですが、ではたとえば逮捕などをされればより良かったかということになると、何とも言えないでしょう。

こういう方に誰がどう対応するのが最善か、また誰に対応する責任があるかはかなり難しい問題です。
かつて、というのは何十年か前ですが、かつては精神科では極端にいえばあらゆる人々を受け入れていました。その中にはこの【1245】のケースのような方も含まれていました。けれども、精神科病院の開放化・社会復帰の重視という流れが進み、精神科が受け入れる対象者は狭まってきています。
それが本来の精神医療の姿だという考え方もあります。正論です。
けれども、ではこの【1245】のケースのような方を、一体誰が引き受けるのかとなると、宙に浮いてしまいどうすることも出来ないという事態が発生しているのも事実です。

「反社会性人格障害」は、国際的な診断基準にある診断名ですから、精神疾患の一つであり、従って精神科の守備範囲という考え方もあるでしょう。しかし反論ももちろんあります。

今日母が地元の精神科に相談にいったところ、どうしても診断しろというならば反社会性人格障害と診断しないこともないけれど、ここ10年くらいに何をしても無罪放免で来ているのでそういった回路が麻痺してしまっていて病気の面というより司法の手を借りた方がいいと医師に言われてきました。

治療を引き受ける精神科も存在しないわけではありません。けれども、上のような医師の説明がもっとも一般的というのが現実です。


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