精神科Q&A
【1239】せん妄から回復した父に、次の手術を受けさせても大丈夫か(【1218】のその後)
Q:
【1218】手術後せん妄状態が3週間続いています。正常にもどるのか心配ですで回答をいただいた者です。ご丁寧にお返事をいただきまして、本当にありがとうございました。先生の言われたとおり、父は栄養を摂るようになってからせん妄状態からさめることができました。覚め始めると回復は驚くほどに早く、その後一週間で、新聞を読んだり、車椅子で散歩をしたり、急に以前の父に戻ってくれました。 今は一生懸命にリハビリに励んでいます。本当にありがとうございました。
ところで、もうひとつ質問させていただきたいことがあります。
実は父はもう一つ大きな病気を抱えています。直径6センチにもなる腹部大動脈瘤があるのです。ただ、大学病院の前回の主治医は手術をしないほうがいい、この前のようにせん妄状態になってしまうと今度こそ寝たきりになってしまう可能性があるというのです。
手術は受けさせても大丈夫なのでしょうか。
林: 【1218】でもお答えした通り、せん妄は基本的に必ず回復するものです。ですから、
主治医は手術をしないほうがいい、この前のようにせん妄状態になってしまうと今度こそ寝たきりになってしまう可能性があるというのです。
この説明はナンセンスです。せん妄にはなるかもしれませんが、だからといってそれが寝たきりにつながるなどということはあり得ません。ですから、せん妄にかかわる点だけについていえば、
手術は受けさせても大丈夫なのでしょうか。
大丈夫です。
しかし、ここで注意すべきことは、なぜ主治医の先生はこのようなナンセンスな説明をされたかということです。まさかせん妄が寝たきりにつながると本気で思っておられたとは到底思えません。
実は、せん妄以外に、何か手術を受けないほうがいいと主治医がお考えになっている理由があったのかもしれません。その可能性を考えるべきです。
一口に「腹部大動脈瘤の手術」といっても、その手術に伴う危険性は様々です。この【1239】のケースでは、腹部大動脈瘤の手術が、特に危険であると考える何らかの理由があるのかもしれません。それは、動脈瘤そのものに関するものかもしれませんし、手術をする外科医に関するものかもしれません。このうち、外科医に関するものだとすれば、主治医の先生はそれをあなたに説明してくださることはないでしょう。つまり、この手術を担当すると思われる外科医の技術が信用できないという確信を、この主治医の先生は持っていらっしゃるのかもしれないということです。そしてそうだとすれば、その「確信」をあなたに話してくださることはまずないと考えるべきです。
ややまわりくどい回答になってしまいましたが、まとめますと、
(1) せん妄から寝たきりになる可能性はありません。
(2) けれども、手術をしないほうがいいという理由は、別のところにあるかもしれません。
以上を考慮のうえ、どうされるかお決めください。