精神科Q&A

 【1198】夫が擬態うつ病だとわかり納得できました


Q私は28歳です。夫も同じ年齢です。昨年結婚しました。夫は一昨年に父を亡くし、そのころから体調や心の変化が気になり始めたと言っていました。その後、3週間ほど会社を休みました。「軽いうつ状態」と言われました。その期間は、東京に一人で遊びに行ったり(宮城県在住です)、実家(長野県)に帰ったりなどして、気楽にすごしていたようです。

その後、結婚式・新婚旅行の間は、特に落ち込むこともなく、普通だったと感じられました。しかし、会社に行き始めてから、不調を訴えるようになりました。以来、朝方は「だるい、おなかが痛い、頭痛がする、下痢する、熱っぽい」といい、フレックスをつかったり、午後から出勤したりすることが多くなりました。薬を飲むなどの治療をしていましたが、なかなか改善しないということで、1ヶ月ほど入院しました。入院中は、食欲もあり、外出もほぼ毎日のようにしておりました。午前中から起き、洗濯もしていたようです。「ひまでしかたがない」と、よく言っておりました。あまりはっきりした改善はみられないのですが、とりあえず退院し、会社に行き始めましたが、なかなか8時には出勤できません。休みをとることもしばしばあります。現在も薬による治療を続けています。

先日、先生のHPを見つけ、夫の病気は「擬態うつ病」によく適合してるな、と感じ、先生の本を読みました。読み終えた今も、夫は「擬態うつ病」なのでは、と感じます。病院の先生にも言われたのですが、夫はうつ状態であって、うつ病ではないし、うつ病に変化することもない、ということです。病院の先生の言われたことが、この本によって、よく理解できた気がしました。夫は、「もっとやさしく接してほしい」「会社に行けと言わないでほしい」「励まさないでほしい」などと、私に要求します。HPなどを見つけて、家族の対処はどうあるべきか、私に説明したりしました。「〜してくれない」「自分のことを悪く言う」「理解を示してくれない」などと、私の対応を上司や産業医や自身の母親に訴えているようです。・・・(察しのとおり、現在、夫婦仲は悪いです。けんかが絶えない状況です)「僕の病気が良くならないのは、あんたが理解してくれないせいだ」「そんな態度では、治るものも治らない」と、私に言います。その反面、友人の結婚式や飲み会、お祭りなどは積極的に参加します。趣味の車・運転や、ネットなどへの関心は高いです。食欲もあります。アルコールの量がやや多くなった気がしますが、依存というところまではいってないと思います。体重は増えているようです。会社の同僚でうつの方がおられるらしく、「あの人は、医者に行くときは、必ず奥様と同伴で行っている・・・うらやましい」などと言います。正直なところ、こういった言動にはちょっとあきれてしまいます。これまでの主治医の先生の話によれば、夫は生真面目な性格で、完璧主義な面がある、そういう人がかかりやすい病気で、いわゆる「心の風邪」だということです。夫は、研究という職業であり、東大卒であることを考え合わせれば、なんとなく「頭もいいだろうし、そうなのかもしれない」という気もします。現在処方していただいているお薬は、以下の通りです。
アビリット錠50
レンドルミン錠 0.25mg
ユーロジン錠 2mg
ルボックス錠
ロペミン錠
先生の本を読ませていただき、夫の病気がどんなものであるのかわかったので、ちょっとすっきりとした気持ちと、どうやら夫の病気はなかなか治らないのだな・・・という重い気持ちとが入り混じった複雑な心境です。とりあえず、擬態うつ病の153ページの図のピラミッドの底辺にある「なにもしない」という方法で、見守っていこうと考えています。結婚以来、ずっと悩んできましたし、離婚も考えました。今回、先生のHPや本に救われた気がしております。心から感謝しております。


林: 確かに、ご主人様は擬態うつ病だと思います。このようなご報告のメールをいただいたことに感謝いたします。うつ病についても、擬態うつ病についても、またご主人様の状況についても、あなたはほぼ正確に把握されていることがメールから読み取れます。今後、現実的な対応を続けられることが第一と思います。

やや気になる点が二つほどありますので、指摘させていただきます。
ひとつは今の主治医の先生のお話、

夫は生真面目な性格で、完璧主義な面がある、そういう人がかかりやすい病気で、いわゆる「心の風邪」だということです。

これはちょっと理解に苦しむ説明です。
ご主人様は、見方によっては「生真面目、完璧主義」とみなせないこともありませんが、満足に仕事ができない状態であるのにもかかわらず、

友人の結婚式や飲み会、お祭りなどは積極的に参加します。趣味の車・運転や、ネットなどへの関心は高いです。

このような行動をとっている人を「生真面目」とは呼びません。少なくとも、うつ病(本物のうつ病)の方に多い性格である、「メランコリー親和型」としての、「生真面目、完璧主義」と、ご主人様の性格は全く違うと思います。
また、「生真面目、完璧主義」な人がかかりやすいのが「心の風邪」という説明には大きな矛盾がありますが、すでに擬態うつ病をよくお読みになっておられるあなたにはよくおわかりのことと思いますので、説明は省略させていただきます。

もうひとつはアルコールに関することです。

アルコールの量がやや多くなった気がしますが、依存というところまではいってないと思います。

この記載だけでは具体的な量も不明なので何とも言えませんが、一般には、アルコール依存症のご家族(特に、アルコール依存症の夫を持つ妻)の大部分は、「私の家族の○○は、アルコールを飲む量は多いが、アルコール依存症というほどではない」と考えていることは頭においておかれるべきと思います。


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