精神科Q&A
【1185】双極性U型で抗うつ薬を使うことの可否
Q:
双極性U型の54歳男性です。躁うつ病と抗うつ薬の投与についてご質問します。
発症は、1年7ヶ月前、家族の不幸と仕事上の裁判がらみのトラブルが3件が重ねて起こり、ストレスに耐えかねてかなりひどいうつ病で発症しました。
その3ヵ月後の10月に一般病院の精神科病棟に入院してパキシル4Tの内服で2ヶ月でうつが軽快して退院しました。
すぐ復職して、同年12月には忘年会にも出て元気がかなりでてきました。
翌年1月にすこし躁気味になり、秘書を怒って2人辞めさせてしまいました。秘書に言ったことに後悔したり、忙しい仕事をこなしているうちに2月にはうつになり、仕事に出てもなんとか最低のことをするだけの生活でした。
3月中旬からまた元気になりうつが治ったと感じました。4月から元気が出すぎ早朝覚醒して犬の散歩に行き、仕事で出張しても激しく口論したり、夕方はホテルのプールで2000mも泳いでいました。
同年5月に躁うつ病と診断が変更になりパキシルすべての中止とリーマス600mgの投与が始まりました。その後も軽躁状態が続きましたが、6月からダウン。以後は、軽うつが続いています。この間、リーマスが800mgに増量になったことと、眠りが悪いのでサイレース2mg、レンドルミン1Tに加えてテトラミド60mgを夜飲んでいます。
うつになって7ヶ月以上経過しましたが、何とかごまかし仕事を続けています。しかし、最近うつがひどくなり、休日は半日寝ている始末。
仕事に出ても必要最低限のことをやり、あとはデスクの椅子に深く沈んで、ボケーとしています(過眠?)。
うつがしんどく自殺念慮もでますので、主治医の先生にうつの治療を相談しますが、パキシルで躁転した病歴があるためか、抗うつ薬を出されません。かわりに抗不安剤(ソラナックス2〜3T)内服をうつがよくなるまで少しの間続けなさいとのことです。
ソラナックスも長くのんでいると効きにくくなる気がします。
双極性U型障害のうつ病相(7ヶ月と長いうつの病相です)に抗うつ薬は使っていけないのでしょうか?
自分としては抗うつ薬で持ち上げて、中止すればいいように思うのですが?
林:
双極U型障害のうつ病相(7ヶ月と長いうつの病相です)に抗うつ薬は使っていけないのでしょうか?
そんなことはありません。むしろ、抗うつ薬を使うのが常識です。
もちろん単極性うつ病のケースに比べれば、抗うつ薬の処方は慎重になりますが、だからといって使わないということはありません。特にこの【1185】では、つらいうつ状態が長く続いているようですので、一刻も早く抗うつ薬による治療を開始すべきです。ただし、
抗うつ薬で持ち上げて、中止すればいい
この考え方は正しくありません。いったん躁状態になった場合は、そう単純にはいかないのがむしろ普通だからです。
ですから、躁うつ病のうつ状態では、リーマスと抗うつ薬を併用するのが標準的な治療といえます。これは双極性T型でも双極性U型でもほぼ同じです。