精神科Q&A
【1155】覚醒剤、飲酒、被害妄想の夫のためにできること
Q:
私(34歳)の主人(39歳)について相談させてください
主人とは15年前に一度1年ぐらい同棲していて別れました。原因は暴力と束縛です。私が家を飛び出した形でした。
去年私の職場に突然電話があり、それからまた付き合いがはじまるようになりました
遠距離だったので最初はメール、メッセンジャー、携帯、ウェブカメラ。
私の話を信用してもらえないから(近くに男がいるだろ などと言うので)、最後はウェブカメラ+携帯電話になりました。
それでもカメラに写ってないところに誰かがいるんだろうと言われることもありました。
仕事が終わってから電話をして朝出勤するときまでずっと。。。
ほとんど毎日眠らなかったです。
眠ると怒られてしまうからです。
彼は無職で私が昼間仕事をしているときに眠っていたようです。
電話では以前私と別れたあとに覚せい剤を使用していたことがあると告白されました。 それから被害妄想が出てしまうとも言われました。
私が出て行ったことが原因で薬に走らせてしまった。。
そう思いました。
週に1度は会うようになって、最初はとても楽しかったのですが、私の帰る時間になると怒ったり泣いたりするようになりました。お前は俺より大事なものが他にある と言っていました。
ある日彼が私の職場の先輩(男性)に夜な夜な嫌がらせの電話をしていることがわかりました。私が職場によく一緒に遊ぶ先輩がいる と話したことが原因のようです。
それから彼の行動はエスカレートしていき、会社の就業時間間際に嫌がらせの電話をしてくるようになりました。内容は 全部私が彼と楽しく話していたときに何気なく言ったことです。後輩の男の子の昔の悪ふざけの話を警察に訴える 等です。嫉妬妄想というのでしょうか。
他には飲酒運転(かなり飲んでました)で私のところへやってきて、今からお前の先輩の所へ殴りこみに行くとまくしたてたりもしました。
その日は朝から仕事でしたが急遽お休みをもらい一日彼についていました。
かなりお酒を飲んでいたので道路で寝転がって関係ない車の人に絡んで行き警察のお世話にもなりました。
お前が俺のそばにいないからこうなってしまう
そう言われて私は仕事をやめ彼の元へ行きました。
一緒に住み始めて最初は楽しかったです。でもすぐに苦しい日々が始まりました。
彼が言うには、
お前は自分のことしか考えていない
話をちゃんと聞かない
上の階の音がうるさい
その日によってポイントは違うのですが、天井に穴を開けたり壁をたたいて壊したり、玄関を蹴って壊したりしました。
全てお酒を飲んでいるときです。
もうお酒はやめる そういっても3日後には買ってしまいます。
自分は覚せい剤をやっていたから鬱になってるんだ
お酒でも飲まなければやってられない
そう言っています。
最近 引越しをしました。
県営住宅なので結婚が条件でした。
悩みましたが環境が変われば彼の状態も変わるかもしれない
そう思っていました。
次の部屋も上階に住む耳と足の悪いおじいさんの部屋からの騒音(TVの音、杖を突いて歩く音、クーラーの室外機)に悩まされています。
私は鈍感なほうなので確かに大きな音はしていますが、どの音もまぁしょうがないなと思えるのですが、彼には嫌がらせに思えるようです。
引っ越してから1週間後彼が上がうるさいと言って部屋で暴れました。
それで隣の人が苦情を言いにきました。
上の階がうるさくてお困りでしょう
以前の方も1年ほどで引っ越されて
私も夜は耳栓をしてるんです TVを見るときもヘッドホンです。。。
そういう遠まわしな言い方でした。
それが彼の怒りに拍車をかけました。
今では隣が盗聴しているかもしれない
うちがちょっと音を立てると上からドンドンされている
そう言っています。
今も彼は無職なので
毎日毎日朝から晩まで音がうるさいとか
嫌がらせ以外のなにものでもないといい続けられ
私はそうは思わないと言うと怒ってしまいます。
彼と電話で話していた頃は境界型人格障害を疑いました。
引っ越してきてすぐはこれってDVかも。。と思っていました。
今日このHPを見て統合失調症かもしれないと思いました。
今、主人が飲んでいる薬はマイスリー10mgとデパス0.5mgです。
主人が病院でもらったのではなく、義母が処方された薬をもらって飲んでいるようです。
このHPで統合失調症なら病院へ行って治療しなければならないと知り、焦っています。
本人は病院に行く気は無いと思います。
でも鬱であることは自分ではっきり言っています。
どうすれば病院へ行くようにもっていけるでしょうか?
離れている私の両親に心配をかけたくないので、いえなかったことをメールに書けて少しすっきりしました。
私自身 病院での治療が必要ではないのかと思っています。
毎日が苦しいです。
回答いただけるとありがたいです。よろしくお願いいたします。
林:
それから彼の行動はエスカレートしていき、会社の就業時間間際に嫌がらせの電話をしてくるようになりました。内容は 全部私が彼と楽しく話していたときに何気なく言ったことです。後輩の男の子の昔の悪ふざけの話を警察に訴える 等です。嫉妬妄想というのでしょうか。
これが「妄想」というレベルのものか、それとも単にとても嫉妬深いというべきか、すぐには断定できませんが、その他の症状から考えると、嫉妬妄想といっていいかもしれません。原因はこの【1155】のケースでは覚醒剤やアルコールが考えられます。
天井に穴を開けたり壁をたたいて壊したり、玄関を蹴って壊したりしました。
全てお酒を飲んでいるときです。
上の階がうるさいといって行われたこれらの行動。これも、単にとても過敏であるという可能性がなくはありませんが、やはり上と同じ理由で被害妄想といっていいでしょう。お酒を飲んでいるときだとすると原因としてアルコールを考えたくなりますが、覚醒剤の影響のほうが強そうです。
次の部屋も上階に住む耳と足の悪いおじいさんの部屋からの騒音(TVの音、杖を突いて歩く音、クーラーの室外機)に悩まされています。
私は鈍感なほうなので確かに大きな音はしていますが、どの音もまぁしょうがないなと思えるのですが、彼には嫌がらせに思えるようです。
引っ越してから1週間後彼が上がうるさいと言って部屋で暴れました。
これらも被害妄想による言動でしょう。被害妄想は、この【1155】にもみられるように、引っ越したからといってよくならないのは【0223】などに例がある通りです。ですから、
最近 引越しをしました。
県営住宅なので結婚が条件でした。
悩みましたが環境が変われば彼の状態も変わるかもしれない
そう思っていました。
あなたのこの判断は誤りです。申し上げにくいことですが、結果をみるまでもなく、誤りであったことは全く当然のことです。
今も彼は無職なので
毎日毎日朝から晩まで音がうるさいとか
嫌がらせ以外のなにものでもないといい続けられ
私はそうは思わないと言うと怒ってしまいます。
このような状態では、病院を受診する以外に方法がないことは明らかです。受診すればおそらく入院の適応と判断されるでしょう。それによって妄想が改善することは十分に期待できます。
でも鬱であることは自分ではっきり言っています。
どうすれば病院へ行くようにもっていけるでしょうか?
鬱であるという自覚にうまく働きかけるのが最善でしょう。
しかしその前に、もっと基本的で重要なことを指摘しなければなりません。
それは、あなたが「依存症の患者の妻」の典型であるということです。やや極端な言い方をすれば、あなたのご主人が今のような状態になっていることの原因のかなりの部分はあなたにもあるということです。アルコール依存症の家族カウンセリングルームにあるイネイブラーの、あなたは典型例であると言うこともできます。たとえば、
私が出て行ったことが原因で薬に走らせてしまった。。
そう思いました。
これは一見するとあなたの献身的な姿勢を示しているようですが、残念ながらそうは言えません。覚醒剤に走ったのは本人の責任であって、あなたが出て行ったこととは無関係です。このように、本人が解決すべき問題を引き受けてしまうことが、依存症の患者の妻のひとつの典型で、それがこの【1155】の質問者だといえます。
かなりお酒を飲んでいたので道路で寝転がって関係ない車の人に絡んで行き警察のお世話にもなりました。
お前が俺のそばにいないからこうなってしまう
そう言われて私は仕事をやめ彼の元へ行きました。
これも同様の例です。あなたがそばにいようといまいと、そんなことは関係ありません。本人の責任です。
もうお酒はやめる そういっても3日後には買ってしまいます。
自分は覚せい剤をやっていたから鬱になってるんだ
お酒でも飲まなければやってられない
そう言っています。
これも全く同様です。説明は省きます。
振り返ってみると、
主人とは15年前に一度1年ぐらい同棲していて別れました。
原因は暴力と束縛です。私が家を飛び出した形でした。
去年私の職場に突然電話があり、それからまた付き合いがはじまるようになりました
この始まりの形が、すでに今の状態を暗示していたともいえるでしょう。あなたは暴力と束縛に耐えられなくなりながらも、また自らその生活を望み、それを再開している。客観的にはそのようにしか見えません。
「この人は私がいないとダメになってしまう」あなたはそうお考えかもしれません。その考え自体が、依存症の患者の妻に典型的なものです。ご主人のことを心から心配しているようで(実際、心から心配されていること自体に疑いはありませんが)、実はそうやって心配することで自分が満足している。自分がご主人のために必要であることに満足している。そのように解釈できるケースも非常に多いものです。その場合、この関係を共依存と呼ぶこともあります。
その結果が、依存症の改善につながればもちろんそれもいいでしょう。しかし、依存症患者が自分で負うべき責任を妻が負うことは、その度に依存症の改善の機会を奪い、どんどん病気を悪化させていることに他なりません。この【1155】はその典型、つまり妻が夫の病気を悪化させているとみます。(このように書くと、【1155】の質問者は、結局は自分に責任があったのだとお思いになるかもしれません。それがまたイネイブラーに特徴的な反応です。覚醒剤にしてもアルコールにしても、責任の大部分は本人にあるのであって、周囲の人がそれを引き受けることは、かえって依存症を悪化させるだけです)
以上のことを心にお留めになることが、【1155】の質問者には最も大切だと思います。それに比べれば、「どのように受診させるか」という方法は瑣末なことにすぎません。どのように受診させたとしても、妻がイネイブラーであり続ける限り、治療効果は期待できません。