精神科Q&A
【1136】失踪を繰り返す統合失調症の息子はただの駄目人間ではないでしょうか
Q:
私は59歳の父親です。26歳の息子について相談いたします。
息子は6年ほど前に精神科にかかり、統合失調症と診断されています。
その息子は、7月に仕事が原因で調子を崩し、1週間ほど入院しました。
それまで、私はこの手の病気についてあまり関心が無かったのですが、息子の主治医に話を聞き、本格的に息子のことを考えるようになりました。
その後、精神科PSWから、障害年金をもらいながらゆっくり休み、仕事は自粛するよう勧告されました。
私は、それに加えて息子に以下のことを自粛するよう勧告しました。
・車の運転。
・お酒。
8月に入って、息子は私を愕然とすることをしてくれました。
それは、クレジットのキャッシングで20万以上の借金を作ってしまったことです。
息子いわく、
「金に困った」
のこと。
当然私は息子を叱りました。
「お前はなんて金にルーズなんだ!お金がないなら、使わないのが常識だ!」
そういって、私は息子からクレジットカードを取り上げました。
この辺から、息子の様子がおかしくなったのです。
急に病院のディケアに行きたくないと言い出したのです。
私は、
「お前、そんなことでどうするんだ!!よくもこんなガキに育ったもんだ!!!」
「周り見てみろ!!自分のこと自分でやってるだろ!それに引き換えにお前はなんてダメな人間なんだ!!」
その日、息子を遺書のようなものを残し、家を出てしまいました。
その遺書はすぐ破棄したので詳しいことは覚えていないのですが、確か以下のようなことが書いてあったと思います
「お父さん、お母さん、26年間、どうもありがとうございました。私は、旅立ちます。
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このまえテレビである監督の辞任インタビューを見ました。その監督は、『俺がいないほうがこのチームのため』と言っていました。だから、私もここにいないほうがあなた方のためになると思い、この世を去ることにしました。
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「死ね!よくもこんなガキに育ったもんだ!」
と言われた心の傷は癒える事はありません。
では、さようなら」
私は、単なる悪ふざけだと思って、2日帰ってこなくてもそのままにしておきましたが、さすがに3日目となると、心配になり、警察に捜索願を出しました。
その間、息子の通帳を預かることにしました。
幸か不幸か、4日目、息子は帰ってきました。
「山で野宿していた。死のうと思ったが、死にきれない。丸3日飯を食わなくても」
それから2週間後、息子はまたまたやってくれました。
預かった通帳を記帳してみると、小刻みに金をおろして、余計に手数料がかかっていること。
「お前は本当の本当にお金の大切さが分かっていない!!」
と叱り、銀行のカードも取り上げました。
9月に入って、また息子が失踪しました。
電話をしても電源を切っているか、着信拒否にしていたり。
病院のディケアスタッフから電話をお願いしても、出ない。
ディケアスタッフ曰く、異変は無かった。
このときは、すぐ捜索願を出しました。
息子から携帯にメールが送られてきたこともありました。
「就職活動でここに来たが、帰る分の電車の金が無くなった」
「家やディケアで無駄な自由を束縛されるより、野宿して自由に生きるほうがずっと幸せだ」
私はさらに愕然としました。ここまで息子は駄目人間なのか…
私も様子がおかしくなりました。意味も無く泣いたり、夜も1時間おきに目が覚めたり。
息子はスーツで家を出ていて、どうやら就職活動をしていたらしいのです。お金に苦しんでいるので、それならば稼ぐべきだ、と。
6日後姿を現しましたが、その間に一旦は帰ってきたらしく、会社のパンフレットがおいてありました。
「お前、死ぬことがどれだけ周りに迷惑がかかるか、考えてみろ。お前一人で生きているんじゃないんだぞ」
「就職活動しているみたいだけど、すぐに辞めろ。お前は社会に出るなんて10年早い。入院したときのことをおもいだせ。お前は障害年金で月6万ももらえれば十分。食えるだけで十分なんだから」
それから1週間後、クレジット会社から督促状が郵送されてきました。
金額を見ると、7万円!
これに私も過度に興奮して、
「お前は馬鹿人間だ!さっさと、この家から出て行け!!!」
その夜中、息子は三度家を出てしまいました。
このメールを書いている最中も、息子はいません・・・
いずれ帰ってくると思いますが。
私が思う分に、息子は病気に逃げ、そして甘えているとしか思えません。2度失踪し、自殺を図るも、未遂に終わるところから、死ぬ勇気なんて到底あるとは思えないのです。
くだらない相談ですが、林先生のご意見よろしくお願いします。
林:
林先生のご意見よろしくお願いします。
何をどう意見せよと求められているのかよくわかりませんが、ただいえることは、統合失調症の人格水準の低下というものは、このような形をとることも十分ありうるということです。
それに対して父親であるあなたがどのように対応されるかは、あなたの考え方次第ともいえますが、統合失調症の患者さんの家族として、あなたの対応は最悪の部類に属するものであることは確かです。(統合失調症 --- 患者・家族を支えた実例集 --- の、p.132、「批判的な態度」「敵意を持つ」といった家族にあたります)
死ぬ勇気なんて到底あるとは思えないのです。
いいえ、実際に死んでしまう可能性は、かなりあると思います。その場合、あなたの態度がその原因とまでは言わないまでも、助長したと言わざるを得ないでしょう。
「こんな息子は死んでもいい」と、もしあなたが本気で考えておられるのであれば、私は何も言うことは出来ません。けれども逆に、厳しい態度で接することが息子さんのためになるはずと考えておられるのであれば、それは大きな間違いです。統合失調症という病気についてよく勉強していただくことが必要です。このままではあなたの家庭は破滅するでしょう。