精神科Q&A
【1074】統合失調症の姉が再発し困り果てています
Q: 30代半ばの姉について質問させていただきます。妹の私は20代半ばで、現在は外国に住んでおります。
姉に最初に症状が出たのは6年前です。
当時は幻聴、幻視、大声で叫ぶなどの症状でした。
病院にも行きたがらず、症状は悪化するばかりでした。
それでもなんとか両親の説得で2年程前に入院することになり、統合失調症といわれました。
入院中に処方された薬が強かったせいだと思うのですが、退院後は薬を飲むのを自ら決めてやめてしまったようです。母も娘が副作用に苦しむのを見ていられず了承したようです。
それでもアルバイトをし、たまに症状が出ていたみたいですがなんとか仕事をしながら生活をしていましたが、なんらかの理由でアルバイトを辞めて(辞めさせられた? はっきりわかりません)しまいその後人材派遣会社に就職をお願いに行ったようですが、そこでも断られてしまったようです。
アルバイトを辞める前頃から他人にわかるくらいの症状がでていたんだと思いますが、人材派遣会社から断られたその日から、幻聴、幻視、大声で叫ぶ、音楽を大音量で聴く、通行人に罵声を浴びせるなど症状が悪化、そして以前にはなかった両親への暴力が始まってしまったのです。その理由は両親に無理やり精神科に入院させられてその事が原因で将来がめちゃくちゃになってしまった。と思っているようです。
父は病気で体が弱く、姉の暴力を抑えることが出来ません。母も正座ができないくらい蹴られています。父は入院させたがっていますが、母は入院ではなく通院させたいと言っています。
病院に行こうと言うだけで暴力がはじまってしまうので通院は無理だと思うのですが、また強制的に入院させてしまったら同じことの繰り返しになってしまうのではないかと思います。どうしたらよいのでしょうか?
林: 薬をやめればこうなるのは当然です。厳しいようですが事実を申し上げます。これは自業自得です。
薬が強いから、飲むのをやめたい。これは統合失調症の患者さんが、時に口にされることです。しかし、副作用のない薬というものはないのであって、薬をやめた場合に予想される事態と、副作用を比較したうえで、薬を飲み続けるべきかどうかを判断しなければなりません。このケースでは、発症から治療開始までの激しい症状をみれば、薬を中断するのが適切なのはたとえば命にかかわるくらいの相当な副作用が出たときくらいしかないでしょう。
もっとも、メールには
母も娘が副作用に苦しむのを見ていられず了承したようです。
としか書かれていませんので、もしかすると容認し難いほどひどい副作用だったのかもしれません。だとすると先ほど私が言った「自業自得」は不適切ということになるでしょう。また、薬をやめるときに医師からどう言われたのか、やめてはいけないと言われたのか、それともやめてもいいと言われたのか、それについても記載がありませんので、もしやめてもいいと言われたとすれば、かなりの部分が医師の責任なので、「自業自得」は全く不適切ということになるでしょう。
それでも私がそのようにお書きしたのは、おそらくはそこまでひどい副作用ではなかったと推定されることと、医師は薬をやめてはいけないと言ったと推定されること、それに加えて、再発して家族へのひどい暴力まで出ているのにもかかわらず、
母は入院ではなく通院させたいと言っています。
ということをお母様が言っておられることです。
これだけ激しい症状が出ているのにもかかわらず、通院で何とか対処しようというのは、あまりに甘い考えと言わざるを得ません。このような考えでは、今後また同じことが繰り返されるでしょう。いや、もっと悪い事態になるかもしれません。
以前にはなかった両親への暴力が始まってしまったのです。その理由は両親に無理やり精神科に入院させられてその事が原因で将来がめちゃくちゃになってしまった。と思っているようです。
もしかするとこのことが、入院を避けたがっておられる理由の一つかもしれません。しかし、このように過去の入院についてご家族を責めるのは、病気が再発したためであって、そして病気が再発したのは薬をやめたためです。薬をやめなければこのような事態にはならなかったでしょう。(もっとも、稀には病気の症状そのものはよくなっているのにもかかわらず、入院させられたことに不満を持ち続けるケースもあります。しかし、誰がどんなに最善を尽くしても、逆恨みということは稀にはあることで、そこまで心配していたら何もできません)
結論です。入院治療しかありません。そして今度は、よくなってからも薬を中断してはいけません。これからのご本人・ご家族のために、今の事態が「自業自得」であることを、ご両親によくお伝えください。