精神科Q&A

【0989】アルコール依存症者の断酒と家族の飲酒


Q: 30代男性です。私の妻(20代)のアルコール依存症と家族の飲酒についてご相談させて頂きます。

妻は18歳頃から飲み始め、お酒が強い体質がたたり4年ほど前から頻繁に深酒するようになりました。そして仕事中に外回りの際に飲んだり、結婚後は家で昼間に隠れ飲みするなど、アルコール依存症の典型的な行動を取るようになりました。

最近は週末しか飲まなくなったものの、月に数回は飲み過ぎてブラックアウトしては私を含め周囲に迷惑をかけています。(警察のご厄介になったこともあります。)
そのような行為の積み重ねを経て、妻もやっと自分の病気を認識し、自発的に断酒とそのための通院をする意志を固めました。(お酒の楽しさよりもブラックアウト後の自己嫌悪の方が大きくなったからのようです。)

その中で妻は、断酒を成功させるために、夫である私にも一緒にいる時にお酒を飲むのをやめて欲しいと言います。

私は月に2〜3回仕事関係の飲み会に参加しビールを3、4杯を飲んだり毎週土曜にはその日の食事にあったお酒(ワイン、ビール、焼酎等)を2〜3杯楽しむといった習慣を10年位続けています。10年間で量の増減は特にありませんし自分では適量だと思っています。

しかし妻としては「私も大好きなお酒をやめるのだから、飲酒欲求を出にくくするためにも週末に飲むのはやめて」ということのようです。

私としては1週間の楽しみである土曜の晩酌をやめたくありませんが、妻がこのような状況にも関らず、自分の飲酒習慣を改めない私ももはやアルコール依存症なのでしょうか?

またアルコール依存症者の断酒には一緒に住んでいる家族の断酒も不可欠なのでしょうか?
現在私の両親と同居しており父もお酒が好きなので家の中から完全にアルコールをなくすことは難しい状況です。

どうかアドバイスをお願い致します。


: まず、奥様はアルコール依存症です。したがって、断酒以外に対策はありません。これが出発点です。
 アルコール依存症では、本人が病気を認識するまでの道のりが長いことも多いものです。アルコールのために仕事も家族も失うというような体験を経てはじめて認識されることも稀ではありません。(そのような体験を底つき体験といいます)
 しかし、この【0989】のケースでは、

妻もやっと自分の病気を認識し、自発的に断酒とそのための通院をする意志を固めました。

このように、底つき体験に至る前に病気が認識されたことはとても喜ばしいことです。

けれどもまだまだ楽観は出来ません。上にお書きしたように、断酒以外に対策はないという認識は出発点にすぎません。まだまだ完全な回復までには紆余曲折が予想されます。そのためにはご家族のご協力は不可欠です。具体的な協力の仕方は、ケースによって様々でしょう。

アルコール依存症者の断酒には一緒に住んでいる家族の断酒も不可欠なのでしょうか?

そうとは言い切れません。が、本人の飲酒欲求を抑えるためには、家庭にアルコールがないことが望ましいことは確かです。

しかし妻としては「私も大好きなお酒をやめるのだから、飲酒欲求を出にくくするためにも週末に飲むのはやめて」ということのようです。

ご本人がこうおっしゃるのも理解できるところです。もっともその一方で、本人からのこのような要求は甘えであるという見方も出来るでしょう。

ここから先は考え方次第です。ただこのときにご本人だけでなくご家族も認識していなければならない事実は、アルコール依存症は進行性の病気であり、しかも命にかかわる病気であるということです。身体機能・精神機能・社会機能のすべてが障害されます。身体的な面についていえば、女性はアルコールにより早く肝硬変になるということも、この【0989】では認識の必要があるでしょう。

現在私の両親と同居しており父もお酒が好きなので家の中から完全にアルコールをなくすことは難しい状況です。

難しい状況であることはわかりました。しかし、奥様の命にかえても家の中からアルコールをなくすことが出来ないのでしょうか。もしそうであれば、誰にもどうすることも出来ません。 





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