精神科Q&A
【0963】自殺歴があるため入院を断られたのですが、受け入れてくれる病院はありますか
Q: 20代半ばの息子について相談させてください。息子は就職して一年弱で、夜中に目がさめたり朝早く目が覚めて眠れなくなり仕事に行くのがつらくなって、病院に行きうつ病と診断され、そのまま休職しました。三ヶ月ほど休んで少し不安ではありましたが,復帰しました。
しかしそれから一ヶ月ほどで調子が悪くなり、また休職しました。以前よりひどくなり薬の量も多くなり一日中寝ていたいと言うようになりました。
自殺未遂をして入院もしました。今度は大事をとって一年三ヶ月ほど休んで、発症前のように元気になったので、少しの不安はありましたが、復帰しました。でも二ヶ月ほどでまた仕事をしていても涙がでてきたり絶望感がおそってきたりで、今度はつらすぎるから入院したいといっています。でも自殺歴があるからなかなか病院がみつかりません。このような場合はどうしたらいいのでしょうか。
薬はパキシル、レキソタン、睡眠薬その他、すごくつらいときにはヒルナミンそれでも眠れなくて夜はビールと一緒に飲んでいます。
発症前は何にでも興味が沸いたのに今は何をする気にもならないといいます。
うつ病としては重い方なのでしょうか。治るのでしょうか。最初にうつ病といわれたときは、あまりのつらさに死にたいというだけでしたが今回は自分はうつ病なんだと受け入れて治したい気持ちになったようです。入院できる病院はどのように探せばいいのでしょうか。受け入れてくれる病院はあるのでしょうか。アドバイスをいただければ幸いです。
林:
自殺歴があるからなかなか病院がみつかりません。
これは不可解なことです。自殺歴を理由に入院を拒否されることは通常はありえません。もちろん数ある病院の中には、そのような所もあるかもしれませんが、メールの内容からは複数の病院から自殺歴を理由に入院を断られたと読み取れます。そんなことはあり得ないと思います。
おそらく、入院を断られたのは他の理由があったのではないでしょうか。それが何であったかを冷静に判断すべきだと思います。推測ですが、あなたは病院に対して多くを要求しすぎていたのではないでしょうか。自殺というのは重大な問題で、うつ病で自殺歴がある、あるいは希死念慮(自殺願望)がある方が入院された場合、病院としては自殺防止に努めますが、入院しているからといって100パーセント自殺を防止することはできません。24時間完全に監視することは不可能だからです。一般にはこのような事情を入院前に患者さんやご家族に説明しますが、その時点で、100パーセント防止してくれなければ困ると言われたり、あるいはそうはっきり言わないまでもそのように考えていることが明らかな態度を取られれば、病院としては入院を受けるわけにはいかないでしょう。患者側からみれば、うつ病と自殺は密接に関係しているのだから、うつ病の入院治療では自殺を防止するのは当然とお考えになるでしょうが、現実的に考えれば入院しているからといって完全に自殺を防止することは出来るはずがありません。
この【0965】のケースで入院を断られた事情がこのようなことであったというのは私の推定にすぎません。しかし間違いなくいえることは、自殺歴だけを理由に入院を拒否されることはあり得ないということです。何か他の理由があったはずです。
入院できる病院はどのように探せばいいのでしょうか。受け入れてくれる病院はあるのでしょうか。
メールに書かれているような経過の方の入院を受け入れる病院はたくさんあります。入院を拒否されたのは自殺歴以外に何か他の理由があったはずで、まずそれを認識したうえで病院を探すことが第一です。それなしでは入院先は見つからないでしょう。