精神科Q&A
【0934】神経質で執拗なクレーム
Q:
私は40代の男性です。私の会社のお客様であるＡさん（40歳代後半 男性）のことでご相談申し上げます。
Ａさんは地域でも有名なクレーマーで、役所、NTT、NHK、電力会社などとしじゅうトラブルを起こしているようです。
このＡさんの興味が私の会社に向けられ、ほとんどいいがかりのようなクレームが頻繁に来ます。（電話の対応が悪い、挨拶が悪い、事務所が汚れていた、など）
わたしも少し前に突然、「おまえの言った言葉はオレを侮辱している」といわれ、聞いてみると3ヶ月ほど前の私の発言に猛烈に怒っているようです。
もともと悪意のある発言でないし、周囲の人に聞いてみても問題のある言葉とは思えないが・・・ということでしたが、Ａさんの怒りがものすごく、本社にＡさんから1時間に何本もの電話が来るようになり、上司と本社担当と謝罪に行きました。
Ａさんの気がおさまるまで計５回出向いたのですが１回に３時間くらいＡさんのほとんど一方的な話を聞くことになります。
内容は①おまえたちの会社は社員教育ができていない
②おまえたちの会社はいろいろなことでオレに迷惑をかけている
③あの会社はすぐに謝罪をし、対応が良かった
④オレは苦労をしてここまで築いてきた
⑤オレのところには地元の有名人（実名）が何人も謝罪にきている
これらが延々と同じ話で繰り返されます。
またこちらからの発言はすべて悪いほうに受け止めて、ますます怒りが激しくなります。
このようなことが、ほかの何人もの社員にもありました。
最近はそれがエスカレートし、先日は早朝から社長に会わせろと本社の前で待ち伏せをしていましたが、気付いた社員に説得され引き帰したようです。
また昨日は、グループの他の支店に電話をかけ①～⑤を繰り返ししゃべっていたそうです。
1日に5箇所の支店から、ヘンな人から電話があり40分くらいつきあわされて迷惑したとの報告がありました。
Ａさんは何年か前に離婚してからは仕事はほとんどしていない状態で、家賃収入で細々と生活しているようです。親戚とは仲たがいをし付き合いはないようですし、また地域でも避けられており親しい人はいないようです。
最初のうちは相手をする人がいなくて寂しくて電話をするのだろう、と対応していましたが、最近は言動に尋常でないものを感じます。Ａさんの個人攻撃で悩んでいる社員が何人もおり、また執拗な電話に悩まされていることから早急に対策を講じたいと思います。
Ａさんは精神的な病でしょうか？または単に口うるさいだけの人でしょうか？
林:
Ａさんは精神的な病でしょうか？または単に口うるさいだけの人でしょうか？
どちらも考えられます。
けれども、この際、病気かどうかということをあなたが考える必要はないと思います。これだけ理不尽な攻撃を受け困窮しておられるわけですから、断固とした対抗措置を取るべきでしょう。
このサイトにご質問していただいたということは、もしAさんが病気であれば、Aさんのためにもなるような適切な対策を講じたいと考えておられるのだと推察します。
心の病の人を排除しようという姿勢の人も今もって多いことからすると、あなたのように、
多少の迷惑はあっても、病気であることを考慮して寛大な対処を検討していただけることは、とても有難いことです。
しかし、あなたの側にも限度があるでしょう。
この方からあなたが受けておられる迷惑は、「多少」というレベルとは到底いえないと思います。これ以上がまんを重ねることは、かえってAさんへの怒りを強めることになるのではないでしょうか。そしてそれはしばしば心の病の人全般へのネガティブな感情につながるものです。
「逆差別」という言葉があります。
ある特定の人々(ここでは、心の病の人々)に対し、過度に寛大な態度を示すことによって、結果的にその人々を貶めるというような意味です。
これは、誠実に病気と戦っている人に間接的とはいえ多大な迷惑にもなり得ます。
この【0934】で、あなたのサイドが断固とした措置を取らないことは、逆差別にもつながり得ると思います。
なお、この回答の最初に申しましたように、Aさんが病気かどうかは断定しにくい状況です。はっきりした病気なら、私の回答のニュアンスはやや変わってくるかもしれません。それでも、少なくともこのケースに関しては、明らかに被害者であるあなたの側が、断固たる措置を取るべきであるという骨子は変わらないでしょう。