精神科Q&A
【0920】分裂病の義母と年老いた義父について
Q:
結婚する前に主人から義母が30代からずっと分裂病をわずらっていると聞きました。現在義母は65歳です。
症状としては、
*誰もいないのにいつも誰かと話している
*よく一人で笑っている(ケタケタと)
*喜怒哀楽が激しい
ですが、主人と私が会いに行くと料理をして普通に会話もします。もちろん会話の途中で突然、義母に私たちには見えない誰かが話しかけてきて、彼女はその人と会話をしています。
義母は30代の頃分裂病と診断され、薬を飲んでいたのですが、数年後に飲むのをやめてしまいました。そして30代後半で再発し、その後は医者に行くことも薬を飲むことも強く怒り拒みます。
最近、義父も歳をとり、75歳になります。二人暮らしをしていますが、義母がこのような状態なので、何かあるごとに、電話で助けを求められます。主人は同居をまだ考えていませんが、いずれ彼らは誰かの助けが必要になると思います。
時々訪ねることは問題ないのですが、私はまるまる一日を義母と一緒過すと思うだけで自分も頭がおかしくなってしまうのではないかという不安にかられます。
私は義母のことは好きですし、病気のことも理解しています。
しかし、一緒に住むとなると恐怖を感じます。
義母は特に身体面では健康のようです。
また、かなりの頑固者なので、薬を拒否します。どうしたら薬を飲んでくれるのか困り果ててしまいます。薬を拒否するのは自分が正常だと思っているからというお答えを何度か拝見しましたが、義母の場合、私が義父と分裂病に関することを話していると、自分のことだと悟り会話を邪魔したり叫んだりします。つまり本人は少なからず、この病気のことを知りつつ薬を飲まないのだと思うとなんだか矛盾してきますが、先生これは一体なんでしょうか?
また心のケアはどのくらいこの病気に対して効くのでしょうか?
私はカウンセラーではないけれど、義母の話相手くらいにはなれそうだと思いました。彼女をどんどんつれてショッピングなど行ったほうがよいのかそれともあまり刺激を与えると病気が悪化してしまうのか知りたいです。
よろしくお願いします。
林: 統合失調症(精神分裂病)の治療を中断し、約30年間放置されていたという経過で、現在、
*誰もいないのにいつも誰かと話している
*よく一人で笑っている(ケタケタと)
*喜怒哀楽が激しい
ということは、病気が慢性化した状態で、幻覚妄想をはじめとする思考障害があり、また人格もかなり変化していると考えられます。仮に今から集中的に薬物療法を行っても、ある程度までの改善しか期待できないでしょう。逆に治療をしなかった場合ですが、必ずしも悪化するとは限りません。この年齢に達した統合失調症は、そのままの状態で安定化することも多いものです。ただし安定化といっても、自然によくなることは期待しないほうがいいでしょう。今よりはそれほど悪くならないかもしれないという程度の意味とお考えください。
以上を基本的な認識として、今後のご計画をお立てください。
一緒に住むとなると恐怖を感じます。
これは正直なお気持ちだと思います。もし一緒に住まないとなれば、入院していただく以外ないでしょう。
どうしたら薬を飲んでくれるのか困り果ててしまいます。
入院せずに薬を飲んでいただくのはかなり難しいでしょう。「無理です」と言ってもいいかもしれません。
私が義父と分裂病に関することを話していると、自分のことだと悟り会話を邪魔したり叫んだりします。つまり本人は少なからず、この病気のことを知りつつ薬を飲まないのだと思うとなんだか矛盾してきますが、先生これは一体なんでしょうか?
病識、つまり自分が病気であるかどうかという認識は、ある・ない のどちらかにはっきり区別できるものではありませんので、こういうことは充分ありうることです。
また心のケアはどのくらいこの病気に対して効くのでしょうか?
「心のケア」という言葉であなたが何を意味されているのか不明ですのでお答えしようがありませんが、カウンセリング的なものをイメージされているのであれば、それはどんな場合でもある程度は有効といえるでしょう。しかし画期的な改善は期待できません。
私はカウンセラーではないけれど、義母の話相手くらいにはなれそうだと思いました。
それをしていただければ、ご本人にとってプラスになると思います。ただ、今後長期にわたってあなたがそれを続けられるかどうか、慎重に考える必要があるでしょう。
彼女をどんどんつれてショッピングなど行ったほうがよいのかそれともあまり刺激を与えると病気が悪化してしまうのか知りたいです。
統合失調症では、あまり新しい刺激を与えるのはかえって悪化させます。例としてあげておられるショッピングをされるとすれば、大体いつも同じ所に行くほうが望ましいでしょう。