精神科Q&A
【0902】SSRIとドグマチールで躁転?
Q:
32歳男性です。10ヵ月前に、仕事上のストレスからくる早朝覚醒、意欲喪失、焦燥感があり、うつ病と診断され、トレドミン25mg(1日4回の合計100mg)とドグマチール50mg(1日3回の合計150mg)を連用していました。
また、睡眠前にロヒプノール2mgとデパス1mgを服用、それでも3時間しか 寝られない日々が2ヶ月程度続きました。
初診から4ヵ月後に1週間任意入院し、 そのときは、夜間にテトラミドを10mg追加して、漸く 8時間程度の睡眠がとれるようになりました。
ところが、退院2ヵ月頃から、徐々に凶暴性や乱暴な態度をとるようなことが 他人の目から見て顕著になり、主治医を変更して診断を受けたところ、
@トレドミンの連用で躁転し、躁と鬱の混合状態になっている
Aそのために、薬物調整が必要であり、トレドミン、ドグマチールを止めて
デパケン(200mg×3回/日)、ワイパックス(5mg×2回/日)
セロクエル(25mg×3回/日)に完全に変更
B抗鬱剤は、SSRIのデプロメール25mgを2回投与
C眠前は、従前通りロヒプノール(サイレース)2mgとデパス0.5mg
という処方になり、2ヵ月再入院して治療に当たりました。
ここで、ご質問なのですが、主治医からの以下の説明は妥当なのでしょうか。
(1)トレドミン(SNRI)とドグマチールの半年投与で躁転し、攻撃性が高まった。
(2)今の処方の、デパケンはてんかんの薬だが、うつ病再発予防効果がある。また、セロクエルは、統合失調症薬剤ですが、情動安定作用があるため、私のような症例でも投与するケースはある。
林: 「薬で躁転」という表現は、たとえば【0898】の方も使っておられますが、【0898】でも解説した通り、a. 病名が躁うつ病で、薬をきっかけに躁状態になった、ということなのか、それともb. 薬の副作用による躁状態で、真の躁うつ病ではない、という意味かが大きな問題です。a. とb. は全く意味が違うからです。
b. 薬の副作用による躁状態 というものが、どれだけあるかということは、まだ統一見解がない問題です。ただ、抗うつ薬の中でも、SSRIやSNRIにはこの副作用が多いようだということは、【0581】や【0900】にも解説したとおり、ほぼ統一見解になりつつあります。
以下、ご質問項目に回答いたします:
(1) トレドミン(SNRI)とドグマチールの半年投与で躁転し、攻撃性が高まった。
いま述べたとおり、「躁転」という言葉をどういう意味で使っておられるかが問題ですが、SNRIであるトレドミンが、あなたの体験された「徐々に凶暴性や乱暴な態度をとる」という症状に関係している可能性はあるでしょう。したがって、トレドミンを中止するのは妥当です。
(2) 今の処方の、デパケンはてんかんの薬だが、うつ病再発予防効果がある。また、セロクエルは、統合失調症薬剤ですが、情動安定作用があるため、私のような症例でも投与するケースはある。
どちらもその通りです。