精神科Q&A
【0875】愛人にのめり込む父について
Q:
父は55歳の会社社長です。
ここ何年かで父が壊れたようになってしまいました。
いろいろと普通では考えられない親戚関係での争いがあり、何もしていないのに父が悪者になってしまいました。そんな時、知り合いの紹介で6年ほど前から愛人関係がはじまった頃から
異常なくらい怒りっぽくなり、人にあたったりするようになって、それから2〜3年後に、たまたま受けた脳の検査で腫瘍が発見され手術を受けました。それから「俺は奇跡の生還したのだから、俺の人生を楽しませてもらう」と言い、好きな放題浮気三昧。
自分の会社を経費使いまくり、会社に借金をして愛人にお金をつぎ込み、今では5千万近くになってしまったそうです。悪びれることもなく、子供が二人いるタイ人の40歳の愛人を「天使」だと言っていて、今回会社を売ることになったのですが、そのお金でタイに物件を購入させられるようで、家族も会社の人たちもどうしていいのか困っております。
ニュースを見ていてもまともな事を言ったりしているのですが、手術を受けてからよくぼーっとしていたりする事も多く、会社の方も家族も「心の病気になってしまったのでは」と感じていて、本人にもその事を伝えたのですが、「それがどうした、病気でも関係ない」
といった感じなんです。誰がどう見ても騙されているとしか見えないのですが、何を言っても本人は信じようともしませんし、それでも構わないと思っているようです。逆に回りに逆切れ状態で手に負えたいといった感じなんです。
どうにか治って欲しいと思っても、私達ではどうしていいのかも分からず困っています。家族で相談して、会社を売ったお金を使えなくする為に離婚を考えていて、口座を抑えてしまう予定なのですが、もしかしたら逆上して殺されたりするのではという事まで家族が考えてしまう状況です。
どのようにすれば父をまともな状態に戻せるのでしょうか?
やはりこのような狂った行動は、心の病気からきていることなのでしょうか?
林:
愛人にのめり込む父について
愛人にのめり込むということだけですと、たとえその度合いが周囲から見て過剰であっても、病的かどうかの判断はきわめて難しいものです。ただ、この【0875】のケースで見過ごせないのは、
異常なくらい怒りっぽくなり、人にあたったりするようになって、それから2〜3年後に、たまたま受けた脳の検査で腫瘍が発見され
この脳腫瘍です。
手術で除去されたとのことですが、脳腫瘍の部位はどこだったのでしょうか。それによっては、このケースのように、いわゆる道徳的な側面の障害というか、衝動を適切に抑えられないという症状が出ることもあります。たとえば前頭葉の底面の損傷では、一見すると何の後遺症もなく、通常の検査では認知機能には何の障害もないように見えても、倫理・道徳的な障害が出ることがあります。たとえばギャンブルや愛人にのめりこむといった症状です。つまり、この【0875】でいえば、その部位に腫瘍があって、「異常に怒りっぽくなり」、あるいはそもそも愛人を作ったこと自体が初発症状で、その部位の腫瘍を除去したことで症状が固定された可能性があるということです。
やはりこのような狂った行動は、心の病気からきていることなのでしょうか?
あなたが「心の病気」という言葉でどういうことを意味されているのか不明ですが、脳の病気と心の病気は本来明確には区別ができないものです。
お父様の現在の状態は、脳損傷の症状である可能性があります。腫瘍の位置の確認、さらには転移の有無などについても、脳の検査が必要でしょう。