精神科Q&A
【0846】孫にまで暴力を振るう父は精神の病でしょうか
Q:
私は独身38歳独身女性です。姉の家族と同居をしている父(68歳)について相談させてください。両親は姉の家族(姉の夫、長男14歳、長女10歳、約10年前から同居をしています。
父は自分に都合の悪いことがあると、主に母を疑い暴力を振るいます。母が外出している場合は、姉に矛先が変わりますし、甥が少し生意気を言ったり、父の思わぬことをすると甥にまで暴力を振るいます。孫の甥にまで、血相を変えて「ワシに勝てると思ったら10年早いぞ!」暴言も吐くようです。が、義兄がいるとそういうことはほとんど無いようで、外面良く二人でお酒を飲んで、適当な世間話をしています。
元来、父の性格は気が短く手も早い人でした。私は姉と私の二人姉妹ですが、子供の時に父に暴力を振るわれたことはほとんど無いのですが、母に聞くと若い頃から良く殴られたようです。又、父は外面は良いのですが、協調性のある方ではないので友人も少なく、人と長く友情を保つこともあまりありません。これまでに何人もの友人とトラブルを起こして、疎遠になっています。
以前、近所の方で父が何か疑いを持っている人が居ました、その頃から自宅に盗聴器が仕掛けられていると言って、母とはその人のことを記号で呼ぶようになり、家では筆談をしていました。今はその家から引越しをしていますが電話は盗聴されていると思っているようです。
その方は数年前にお亡くなりになったのですが、父は喪中の葉書も「騙されている」といまだに信用していません。外見的にはお付き合いをしていましたので、入院中にお見舞いに行ったにもかかわらず、亡くなったことは信用できないようです。
また、一時体調が悪くて検査をしたことがあるのですが、何も悪いところはないと診断されても信頼せず、自分は糖尿病に違いないと「糖尿病の診断が出るまで」何件もの病院をはしごするようなこともありました。
母は「辛抱するしかない」と言って、仏壇に拝み、殴られるくらいならと仕事を見つけて外出を多くしましたが、結果としてはさらに母への不信も募り、矛先が姉や甥に向かうだけのようです。子供の教育上もこのような家庭は決してよくないと思います。事実、姪は情緒不安定のせいか登校拒否の状況ですし、姉は自分の父親の問題と子供の問題で、心身ともに限界も近いようです。
姉が公共の生活相談に行き、「暴力が始まったら、とりあえず逃げなさい」とアドバイスされたようですが、根本的な解決にはならないと思っています。
父は家族をも信じられず、被害妄想が非常に強いのだと思いますが、根拠の無いことを言い出すわけではなく、一応自分勝手ではありますが一応ストーリーがあり、突拍子も無いことを言い出すことは無いようです。
父は精神の病でしょうか。
精神の病は元来の性格も影響するものですか。
痴呆やアルツハイマーなど老人性の病でしょうか。
その場合は治療して改善の見込みはありますか。
精神の病の場合、生活環境が変わったら父の症状は改善する可能性はありますか。
(今のところ私の事はそれほど疑っていないようなので、改善の可能性があるなら私が父と暮らすことも考えています。)
林: 一度は精神科を受診されることをお勧めします。
元来、父の性格は気が短く手も早い人でした。私は姉と私の二人姉妹ですが、子供の時に父に暴力を振るわれたことはほとんど無いのですが、母に聞くと若い頃から良く殴られたようです。又、父は外面は良いのですが、協調性のある方ではないので友人も少なく、人と長く友情を保つこともあまりありません。これまでに何人もの友人とトラブルを起こして、疎遠になっています。
もともとが上のような方であったことを考えると、今の状態はその性格の延長にすぎないと考えられないこともありません。
けれども、あなたもご指摘のように、小さいお孫さんにまで暴力をふるうとなると、性格として片付けるわけにはいかないでしょう。
また、
以前、近所の方で父が何か疑いを持っている人が居ました、その頃から自宅に盗聴器が仕掛けられていると言って、母とはその人のことを記号で呼ぶようになり、家では筆談をしていました。今はその家から引越しをしていますが電話は盗聴されていると思っているようです。
その方は数年前にお亡くなりになったのですが、父は喪中の葉書も「騙されている」といまだに信用していません。外見的にはお付き合いをしていましたので、入院中にお見舞いに行ったにもかかわらず、亡くなったことは信用できないようです。
これは被害妄想と判断できます。そしてこの妄想の色彩は、統合失調症(精神分裂病)を思わせるものです。さらに、
また、一時体調が悪くて検査をしたことがあるのですが、何も悪いところはないと診断されても信頼せず、自分は糖尿病に違いないと「糖尿病の診断が出るまで」何件もの病院をはしごするようなこともありました。
このような不合理な確信も、統合失調症でしばしば見られるものです。
母は「辛抱するしかない」と言って、仏壇に拝み、
拝んでも何の解決にもなりません。
子供の教育上もこのような家庭は決してよくないと思います。事実、姪は情緒不安定のせいか登校拒否の状況ですし、姉は自分の父親の問題と子供の問題で、心身ともに限界も近いようです。
おっしゃるとおりで、このままではご家庭が危うくなるでしょう。
精神の病の場合、生活環境が変わったら父の症状は改善する可能性はありますか。
(今のところ私の事はそれほど疑っていないようなので、改善の可能性があるなら私が父と暮らすことも考えています。)
環境の変化で改善するとしても、それは一時的なものにすぎません。精神科での治療が必要です。治療による改善は十分期待できます。診断名としては、上記の統合失調症のほかに、妄想性障害や、それからアルツハイマー病のような脳の器質的疾患も考えられます (それによって、もともとの短気な性格が病的なレベルまで強まることもあります。これを性格の尖鋭化といいます)。