精神科Q&A
【0822】躁状態の不思議な体験
Q: 私は躁うつ病になって2年になります。
私が躁状態になったときの体験を聞いて下さい。
1回目の躁状態 (1年9ヵ月前)
マンションを買おうとしたことで舞い上がっており、思い出し笑いが多くなり、私の在住する県の知事を選挙で潰すということをたくらんでいました。
それと同時に、脳の後頭部がグルグル回る感じがして、いろんなアイデアが湧いてきました。また、自分は仏陀の生まれ変わりだと認識していました。脳がフラフラして真っ直ぐに歩けなくなったときもありました。ペニスが縮むという感覚も体験しました。
2回目の躁状態(1年前)
ある論文を読んで、衝撃を受けてしまいました。
そしたら、また脳の後頭部がグルグル回る感じがしてきました。自分のクローン人間が作られて、そのクローンを妻に授けて、自分は女優の常盤貴子と結婚し、性交渉をしている時に、常盤貴子になる(心は自分と常盤貴子の両方いて、体が常盤貴子になる)という妄想がありました。また、天界と繋がっている感覚もありました。
3回目の躁状態(4ヵ月前)
うつ状態で抗うつ剤を飲み、躁転。
「お前は聖徳太子の生まれ変わりだ」という声を感じて、「違う!」といったら、「お前は神だ」という声を感じて、また「違う!」といったら、「じゃあ、この世の始まりは何だ。この世の果ては何だ」という声を感じました。ペニスが縮むという感覚もありました。脳の後頭部がグルグル回る感じはありませんでした。
この様なちょっと不思議な体験をしたのですが、単なる妄想なのでしょうか?再度体験することはあるでしょうか?
その後、うつ状態を経て、職場復帰をし、今は順調に生活しています。
林: 躁うつ病でも、幻覚や妄想が出ることがあります。それほど多いわけではありませんが、逆に例外的に少ないというわけでもありません。診断基準にある病名では、それは「精神病症状を伴う」と呼ばれることになっています。ですから、あなたの体験された3回の躁状態は、「双極性感情障害、現在精神病症状を伴う躁病エピソード」という診断になります。(そして現在は、「双極性障害、現在寛解状態にあるもの」という診断になるでしょう)
この様なちょっと不思議な体験をしたのですが、単なる妄想なのでしょうか?再度体験することはあるでしょうか?
この「単なる妄想」の「単なる」で何を意味されているのか不明ですが、いずれにせよ妄想です。そして、将来躁状態になれば、再度体験される確率は高いでしょう。再発を防ぐため、定期的に薬を飲み続けることをお勧めします。
なお、あなたの体験された妄想は、いずれも誇大的な色彩があり、躁状態とのつながりがある程度理解できるものです。躁うつ病の妄想の中には、あなたのケースとは異なり、このつながりが全く見られないものがあります。その場合はそもそもの診断が問題になり、躁うつ病なのか、それとも気分の変化が目立っても統合失調症(精神分裂病)なのかが検討されることになります。