精神科Q&A
【0098】 叔母が他界してから、母がおかしくなってしまいました
Q: 叔母(母の妹)が先日突然事故死してから、50歳の母がおかしくなってしまいました。叔母が死んだという記憶がなくなってしまったのです。叔母が死んだと説明すると興奮して手がつけられなくなります。食事もほとんど食べません。これは現実逃避のための症状なのでしょうか。
林: 突然叔母様が亡くなられたうえに、お母様の様子が変わってしまい、お嘆きとともに驚かれたこととお察しいたします。お悔やみを申し上げたいと思います。
お母様の症状は、心因性健忘といわれるものにほぼ間違いないと思います。強い精神的なショックによる記憶喪失です。自分が誰かということを含めすべての記憶を失う場合もありますし、お母様のように部分的な記憶を失う場合もあります。ご指摘のように、現実を認めたくないという心理が根底にあると考えられます。
こういう場合、記憶は時間がたつと回復するケースが大部分です。ある日突然回復することもあります。また、記憶以外の症状、たとえば興奮とか、現実離れした考えなどが永続することはあり得ませんので、頭がおかしくなってしまうといったことを心配される必要はありません。
回復には時間が必要ですが、興奮などが激しい場合には、一時的に抗不安薬や抗うつ薬などの薬を飲んだ方がいい場合もあります。食事をしない期間が長く続くようでしたら、点滴や、場合によっては入院が必要なこともあります。また、ご家族など周囲の方としては、お母様が現実を受け入れるまでには時間が必要だということを理解され、あまり性急に色々な現実に直面させない方がいいでしょう。