精神科Q&A
【0792】パニック障害と拒食症の友人の、親の対応が症状を悪化させていると思うのですが
Q:
今回相談したい事は、私本人の事ではなく、私の大切な人(32歳、女性)の事についてです。病状はパニック障害と拒食症で、発症の場はほぼ自宅限定です。現在は入院しており、症状が改善する為には本人と両親の双方が話し合わなければならないのですが、お互い話し合える状態ではありません。
彼女は先天的に両下肢が不自由な障害を持っており、子供の頃から両親に「障害者は健常者に逆らってはいけません」といった教育を受けたらしく、その言葉の通り、親に逆らわずに良い子として振舞い続けてきたそうです。それが31歳という年齢に達した時に、親に対する恨みの思いが爆発して発症に至りました。主治医の先生は、彼女がまず親に対して「恨んでいた」と言う事を伝える事が必要だといいます。しかし彼女は「親にも育ててもらった恩があるから」「関係がギクシャクするのが怖いから」「言えないように育てられてきたから」と、頑なに自分を開こうとしません。親は親で「この子は一番可愛がっていた」「どうしてこうなったのかわからない」といったように、自分が原因であるという事に気がついていない様子らしいのです。
先生を交えた三者面談では、母親は涙を流しながら娘の大切さを訴えるらしいのですが、外泊で戻るとまったく会話をしようとせずに、たまに出る言葉は「入院して体重も戻ってきたのに、なんで退院できないのかしらね」といった見当はずれのものであり、外泊から戻った後に、主治医から「どうして会話をしなかったんですか」と言われると「・・・がDVDを見ていたので」「色々と忙しかったので」といったいい訳で場を濁してしまうと行った具合らしいのです。ちなみに、面接の場で両親は、彼女の話よりもその兄の話や、孫たちの話に脱線する割合が多いそうです。
断片的な状況をダラダラと書きつづってしまい申し訳ありません。ともかく、お互いがコミュニケーションを断絶してしまっている中で、出口がまったく見えないのです。彼女は「もうああいう親だから、話をしても意味がない」と諦めてしまっており、それに対して叱咤すればいいのか、同意して優しくする事が必要なのか全くわかりません。周りにいる人間として、少しでも前に進むためにはどういった事が必要なのか、そのちょっとしたヒントだけでも教えていただければこれ以上嬉しいことはありません。ぜひ何らかのアドバイスをお願いします。
林: 状況が今ひとつ理解できかねます。
症状が改善する為には本人と両親の双方が話し合わなければならないのですが、お互い話し合える状態ではありません。
とお書きになっている一方で、
先生を交えた三者面談では、
とお書きになっておられるのはどういうことでしょうか。話し合いは行われているのではないでしょうか。だとすれば、その進展に期待するのが最善でしょう。
推測ですが、医師とご本人・ご家族との面談は行われていてもそれは表面的なものにすぎないように見えることから、
お互い話し合える状態ではありません。
親は親で・・・自分が原因であるという事に気がついていない様子らしいのです。
母親は・・・たまに出る言葉は・・・見当はずれのもので
お互いがコミュニケーションを断絶してしまっている
というような悲観的な記載につながっているのではないかと思います。
しかし、私にはこれは全く悲観的な状況には見えません。長年にわたる親子関係が病気の大きな要因であったとすれば、それが少々のことで簡単に解消できることはまずありえません。精神療法とは、一見むだに見える対話を繰返しているように見えがちなものです。治療が開始されてからどれだけの期間がたっているのかの記載がありませんが、少なくとも現在の状況として記載されている内容は、精神療法の進行途中であるように読み取れます。
出口がまったく見えないのです。
そう思っているのはあなただけかもしれません。
ご家族をまじえた治療は、本などを読むとあっさりと書かれているかと思いますが、実際の治療場面では、本に一行で書いてあることにも長い期間を要することはむしろ普通です。それが精神療法というものです。
もっとも、このケースで、長年にわたる親子関係が病気の大きな要因であるという前提が本当かどうかは慎重に検討する必要があります。親子関係は、しばしばこころの病の原因として取り上げられますが、病気との因果関係についてはそう容易には判断できないものです。あなたのメールでは親子関係が原因であることを前提に話を進めておられますが、それが完全に間違っている可能性も十分あります。ここではあなたの見解が正しいものと仮定して回答したにすぎませんので、ご注意ください。