精神科Q&A
【0783】60歳になってから父に幻聴が出てきました
Q: 60歳の父のことで質問いたします。
この数日間の間に、父の精神が不安定なのが分かりました。父の言っていることが本当かどうか、また精神病なのであったら何の病気なのかということに関しご意見をお聞きしたいと思っています。
私たちの住んでいる一軒家の向かい側の息子さんは少し不良っぽく、夜のお仕事か何かで毎晩夜の1時か2時に音をたてて帰ってきます。でも何年もそこに暮らしていて今まで問題はありませんでした。ですがある夜寝ている時にその息子さんが帰宅した際、別のお隣の家が「うるさいなぁー」と文句を言うのが父に聞こえたらしいんです。そしたら今度は息子さんが「うるさいだと?殺してやる」と言ったそうです。そして父は、息子さんがその文句を父が言ったと勘違いしていると言うのです。それから殆ど毎晩息子さんの声が「○○さん(父の名前)、今度文句言ったらぶっ殺してやる」「覚えてろよ」など聞こえるらしく、父は自分が狙われていると感じると私と母に打ち明けてきました。父は一ヶ月くらいこの会話が聞こえてきていたらしく、でも私たちを心配させるといけないので秘密にしていたらしいのです。でもこの二つの家とも道路を隔てて向こう側にある上、私も夜中に勉強で起きていますが別の家の会話など全く聞こえません。また、父には隣の家の会話は聞こえると言うのに、隣の部屋の私の声は聞こえないのです。その上、昼にも会話が聞こえるようになったらしく、時々しーっと言って「今うちのことを話していたぞ」と言います。私と母は最初父を信じ、向かいの家の息子さんを怖がっていましたが、昼間のこともあって疑うようになりました。今は8割は父の幻聴で、2割は何か本当のきっかけ(例えば本当に外で息子さんの会話が聞こえたものの、それが自分のことを話しているように聞こえ、それ以来ずっと息子さんの幻聴が聞こえるようになった)などがあったのではと思います。
その後父は身の危険から逃れるために叔母の家に数日間泊まりに行きましたが、運が良いことに私の叔母は薬剤師で、父の相談を聞くとストレスから来る幻聴ではないかと判断しました。父は意外にこれを素直に受け入れてすぐに家に帰りました。父は確かに今年仕事を引退して今は仕事を探しています。環境も急変し(私たちは数年間父の仕事で海外に滞在しており、今年日本に帰ってきたばかりです)、また急に仕事がなくなったことからストレスがきているのではと思います。また私は遅く生まれており、まだ大学があるのでそれまで働かなくてはという焦りがあるのではないでしょうか。
精神病について色々調べてみましたが、幻聴のことを思うと精神分裂病の症状ではないかと思い悩んでいます。父は仕事を引退してから殆どの時間を書斎で本を読みふけるか、散歩にいくかで過ごしています。ですが別に日常生活で取り乱したようなことはなく、規則正しい生活を送っていますし、普段のように冗談を言ったりふざけたりもします。私がショックなのは、今までの十何年間父と一緒に暮らしてきてこのような兆しは全くなかったのに、数日前に突然このようなことが起きたことです。父は非常に頭がよく、性格も冷静です。また今までも仕事で非常にストレスに追い込まれるような状態は多々ありましたが、このように精神的に異常な症状が現れるのは今回が初めてです。遺伝性で起こる病気ではないかもしれませんが、うちの家系では精神病者はいないということからまだ信じられません。私の父の病気は精神分裂病の可能性が大きいでしょうか?また、こういった症状の場合は本人に対し普通に振舞った方がよいのでしょうか、意見を宜しくお願いします。
林: あなたがお書きになっているとおり、お父様は統合失調症(精神分裂病)の可能性が高いと思います。しかし、60歳という年齢から考えますと、脳の器質的な障害(脳内に何かはっきりした原因となる所見がある)も疑われます。いずれにせよ、適切な診断と治療のためには病院を受診することが必要です。
ストレスから来る幻聴ではないかと判断しました。
この判断は誤りです。お父様の幻聴はかなりはっきりした精神病性のもので、単なるストレスからこのような幻聴が出ることはありません。
こういった症状の場合は本人に対し普通に振舞った方がよいのでしょうか
「普通に」という言葉であなたが具体的に何を意味されているのか不明ですが(つまり、幻聴を否定することを普通と考えておられるのか、逆に幻聴を肯定することを普通と考えておられるのか)、いま何より必要なことは医学的な診断と治療を受けることです。