精神科Q&A

【0769】高次脳機能障害か、アルコール依存症か


Q: 半年前 69歳の父が酒を飲んだ帰り道 車道を渡っている時に車に轢かれました。救急車で運ばれて 事故後30分程で酔っ払いながらも意識は一旦戻りました。その時は脳、内臓、骨に異常は無いので一晩入院、A医師に「急性アルコール中毒」と診断されたようです。次の日 片足が動いて無いのに家族が気付きレントゲンを見直してもらったところ腰に骨折が見つかり入院を続けることになりました。

それから 意識のぼーっとした日が続きましたが 頭部に傷や腫れがないので 頭は打ってないとB医師に言われました。

ところがそれから人間が変わってしまい、妄想や暴力や記憶障害等等、おかしな人になってしまい、途中から担当になった神経内科の先生が何故こうなっているのかよくわからないということで転院しました。

事故から一ヶ月目に転院した病院は精神科。アルコール依存症と決め付けられて断酒会に入ることになりました。
その病院に一ヶ月ほど入院していたところ 硬膜下血腫が見つかり 元の病院に戻されました。父は退院したいためか黙っていたのですが 二週間ほど前からてんかんの発作も出ていたようです。父の精神的な異常は続いたままです

今度の担当の医師は脳外科。父の初期からのレントゲンなどのフィルムをみて 外傷を認め アルコールでは無いと言ってくれました。外傷による高次脳機能障害だそうです。
入院は合計三ヶ月。今は退院して 月一に診察月二のリハビリ(少ない?)の生活です。性格異常はましになっていますが もとの父ではありません。本人はおかしい全く自覚がないので 家族は振り回されて大変です。

うまく説明が出来ていませんが こんな状態です。相談というのは そろそろ保険屋さんが後遺症の認定にと言ってきているのですが 保険屋さんはなぜか父はアルコール依存症で高次脳機能障害なんかじゃないです!と決めつけています。

高次脳機能障害とアルコール依存症 違いを見極める方法はあるのですか?毎日一合位飲んでいましたが 事故に遭ったとき飲んでなかったらこんなことにならなかったと思うのです。先入観で判断されている部分が大きいような気がします。父は事故でこんなことになってしまったのに 辛すぎます。父は、うちの家族は被害者です。アルコール依存症じゃない!って証明できませんか?よろしくおねがいします


: お父様の現在の状態は、脳の外傷による高次脳機能障害だと思います。経過と症状から、それは動かせない事実でしょう。そしてそれを判定するのは保険会社ではなく医師ですから、

保険屋さんはなぜか父はアルコール依存症で高次脳機能障害なんかじゃないです!と決めつけています。

上記のように保険会社の人が何と言おうと、そんなことをあなたやあなたのご家族が取り合う必要はありません。大体このように保険会社が決めつけることはあり得ないことで、保険会社は必ず医師の診断書をもとに判定するはずです。この点、このケースの事情がわかりかねるところがあります。

今度の担当の医師は脳外科。父の初期からのレントゲンなどのフィルムをみて 外傷を認め アルコールでは無いと言ってくれました。外傷による高次脳機能障害だそうです。

この脳外科医に診断書を書いていただけば、それで万事解決することだと思います。

ご質問のポイントについての回答は上記の通りですが、もう少し補足します。

冒頭にお書きしたように、このケースは脳の外傷による高次脳機能障害であることはまず確実ですが、

アルコール依存症じゃない!って証明できませんか?

それは出来ません。というより、お父様がアルコール依存症であった可能性は否定できないと思います。そして、それによってある程度の脳障害が外傷前に存在したことも否定できません。ただ、経過と症状からいって、外傷の影響が主であるということです。
 事故直後にどのような検査によって脳に異常はないと判断されたのか不明ですが、たとえCTなどを撮ったとしても、その時には何の異常所見がなくて、後に硬膜下血腫が明らかになることはしばしばあります。また、それ以外に、び慢性軸索損傷という病態もありえます。
したがって、

ところがそれから人間が変わってしまい、妄想や暴力や記憶障害等等、おかしな人になってしまい、

この時点で、脳に外傷の影響が及んでいると考えるのは常識です。ですから、

途中から担当になった神経内科の先生が何故こうなっているのかよくわからないという

これは全く不可解です。事故後に人格変化が現われれば、何らかの脳損傷を考えるのは、少なくとも神経内科の医師であれば当然のはずです。

 それからもうひとつ付け加えますと、「高次脳機能障害」という病名は、原因の如何にかかわらず、脳の高次機能が障害された状態を指していますので、原因は外傷ということもあれば、アルコールということもあります。アルコール依存症であれば、何らかの高次脳機能障害があっても不思議ではありません。

 話がそれてわかりにくくなったかと思いますので、もう一度まとめます。
 お父様の現在の状態は、脳外傷による高次脳機能障害が最も考えられます。しかし、アルコール依存症でないかどうかはわかりません。とはいうものの、ご質問の保険に関しましては、アルコール依存症かどうかについて議論する必要はなく、主因が脳外傷であることが言えれば問題ないはずです。そしてその判定をするのは保険会社ではなく主治医です。


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