精神科Q&A

【0762】もの忘れが進行してきた70歳の母は痴呆ではないのでしょうか


Q: 70歳の母が、3年くらい前から徐々に物忘れがひどくなってきました。
71歳の父と2人暮らしで、忘れるたびに、ぼけた、狂ったと父から罵声を浴びせられ、最近は大喧嘩が絶えません。

朝のウォーキング以外趣味はなく、仲の悪い父と顔をつきあわす毎日。ストレスはかなりなもの。それでも家にいるのです。私は近くに住んでいるのでいろいろ誘ってみるのですが、なかなか続きません。

半年くらい前から、更にひどくなり、毎日夜になると大喧嘩をして電話がかかってきます。
ささいなことから、昔のうらみつらみに発展するのです。父は昔から暴力を振るいます。

そして10日くらい前、銀行へいって帰ってきたら、通帳もカードもないと電話があり、パニック状態。どきどきして何もわからないといいます。
少し落ち着いて調べたら別のバッグに入っていたと判明。
2日後、銀行へ手続きに行ってすべて終わったのに、ふと思い出すのか、保管している金庫を探し出し、「通帳がない」と同じことを何度も繰り返します。

私も最初は「一緒にいって手続きしたでしょ?金庫にも確認して一緒にしまったから大丈夫」と何度も説明しました。
それでも、また電話がかかってくる。ばれたら父にしかられると・・・それをかなり気にしていました。

さすがに私もまいってしまい、今日個人の心療内科を訪ねました。
先生から点在性の脳梗塞がベースといわれ、かなりびっくりしています。
絶対に精神障害、もしくは痴呆と思っていましたから・・・

3年前に急に家の廊下で、ひざが崩れるように倒れたことがあり、そのときから近くの大学病院でMRIなどの検査を定期的にうけています。でも、その脳外科の先生からは特に病状の進行や注意はないようです。精神的な相談をしてもあまりたいした答えもないそうです。薬も服用していますが、何なのか?その時の症状も本人は全くわかっていませんし、私も知りません。

心療内科の先生からは、MRIの写真を取り寄せ持ってくるようにと言われています。
今後、どのようになるのか、まだまだ不安です。
父に対しても現状を話し、注意をしますし、母についてはうちへ定期的に呼んで、一緒に作業をしたり外へ連れ出そうと思っています。
私の対応としてはこれでよいのか自信がなく、何かアドバイスがいただければ大変ありがたいのです。よろしくお願いします。



70歳の母が、3年くらい前から徐々に物忘れがひどくなってきました。

あなたのメールの一行目から、まず考えられるのは認知症です。もちろん他にも考えられる病気は色々ありますが、痴呆を軸に考えていくのが通常の診断手順です。
そして、その後の経過としてメールに書かれている内容からも、やはり痴呆が最も考えられると思います。

痴呆の原因は大きく分けて二つあります。ひとつは脳の変性疾患(最も多いのはアルツハイマー病です)で、もうひとつは血管性の痴呆(脳梗塞や脳出血による)です。この二つの鑑別は、容易なこともありますが、なかなか難しいこともあります。診断のポイントは臨床所見と画像診断です。

先生から点在性の脳梗塞がベースといわれ、かなりびっくりしています。

痴呆の診断はかなり確実と思われますので、その原因が脳梗塞であるというのはごく普通にあることです。しかし、画像(MRIなど)の所見なしに、脳梗塞が原因と言い切ることはまずできません。「脳梗塞がベースといわれ」とのことですが、その可能性があるという程度のニュアンスだったのではないでしょうか。

絶対に精神障害、もしくは痴呆と思っていましたから・・・

上で説明したことですが、脳梗塞が原因ということと、痴呆であることは全く矛盾しません。ですから、何もびっくりされることはありません。

心療内科の先生からは、MRIの写真を取り寄せ持ってくるようにと言われています。

診断のためには、これは当然でしょう。

父に対しても現状を話し、注意をしますし、母についてはうちへ定期的に呼んで、一緒に作業をしたり外へ連れ出そうと思っています。

まず診断をつけないことには、方針は決め難いところではありますが、あなたのこのお考えは基本的には正しいといえるでしょう。診断がはっきりしてから、あらためて主治医の先生にご相談してください。


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