精神科Q&A
【0737】対人緊張に薬がよく効くのですが、依存性が心配です
Q: 29歳、子供一人の主婦です。
15歳くらいのとき、はじめて人前で緊張することを味わってから、20代最後には人前 では字を書くこともできなくなり、不眠にも悩まされるようになり3年前、初めて心療内科を訪れました。
ドグマチール50r、ソラナックス0.4r、ルボックス50r、不安時にセルシン2rを処方され、症状は徐々に改善されました。人前でできなかったことが、セルシンをあらかじめ飲んでおくことにより、かなりできるようになり、そのうち、セルシン以外は飲まなくてもよくなり、セルシンを飲むのも、半年に一度くらいというところまで改善しました。
しかし、つい最近になって、あるテレビで、失禁して以来、いつでも排尿のことが気にかかり、何も手につかないという男の人の話を聞き、なぜか私までそのことが頭を離れなくなり、不安に感じはじめ、また不眠がはじまりました。でも、冷静に考えてそんなことあるはずない、って言い聞かせていたら、不安がなくなるのではなく、また以前のように、人前で緊張するのではないか、というところに不安が戻ってしまいました。今では、一日中頭の中を不安が占めていて、食欲なし、眠りも浅く、何回も起きてしまう状態です。
現在、私は主人の仕事の都合で外国に住んでおり、いつ帰れるかは未定です。そのため、日本を発つ前に多めに薬を処方していただき、またどうしても必要なときは、電話で相談させていただいて、薬が必要なときは親に保険証のコピーを持っていってもらい、薬を処方していただけるため、現在も薬はまだかなり手元にあり、飲めばすぐ改善されるとは思っています。
ただ、主人は、「依存性」をよく口にし、たまにならいいけど、やめられなくなったら・・・という考えを持っており、私もできるだけ薬には頼りたくない、強くなりたい、と思い我慢をしていましたが、今日、知り合いと会うのにものすごく緊張してしまい、結局は薬を飲みました。(ソラナックス1錠、セルシン1錠)
結局は、薬を飲めば間違いなく不安はなくなるけど、これは依存症ではないのか、という思いから、少しでも我慢してしまう自分がいて、最後はもっとひどい状態になり、飲まざるを得なくなってしまいます。
また、今一番不安なのは、薬を飲んでいる間はいいのですが、よくなってやめることができても、今回再発してしまったように、薬をやめたらまた再発するのではないか、ということです。
そこで質問なのですが、やはりしばらくは、今は薬を飲み続けるべきでしょうか?
現在はまだ外国に滞在中のため、いつものお医者様にかかることができないため、ぜひとも回答していただけたら、と思います。よろしくお願いいたします。
林: 薬には必ずプラスとマイナスがあります。ですからあなたのケースでも、薬を飲み続けるべきかどうかは、プラスとマイナスのバランスを考慮して決めるべきです。
具体的には、あなたのケースでは、依存の危険をどう考えるかということだと思います。ここでは、あなたがどのような状態を依存と考えているかということが最大のポイントです。これは人によって考え方が異なると思います。
薬による治療には、薬を飲む期間に着目すれば、2種類あります。
a. ひとつは、一定の期間だけ飲むことで治癒し、以後は飲む必要はない。
b. 症状を抑えるためには相当期間(時には一生)のみ続ける必要がある。
この2種類です。たとえば肺炎で抗生物質を飲むというのはa.ですし、高血圧で降圧剤を飲み続けるというのはb.です。
つまり、b.では薬をやめることは出来ないということです。
ではb.は依存でしょうか。
普通は依存とは言いません。けれども、「やめられない」ということだけに着目すれば、b.も依存と言ってもおかしくはないでしょう。
そこであなたのケースに話を戻します。
あなたが、いまセルシンやソラナックスで症状を抑えた場合、将来この薬をやめられるかやめられないかはわかりません。両方の可能性があります。どうしても不安が出てきてしまうため、ずっと飲み続ける場合もあれば、時々は飲む必要が出てくる場合もあれば、全く飲まないで大丈夫な場合もあります。あなたがどうなるかは予測できません。つまり、やめられなくなるという可能性は否定できません。
それを認識したうえで、薬を飲むか飲まないかは、あなた自身がお決めください。結局は最初に言った通り、薬のプラスとマイナスのバランスをどう考えるかということになります。