精神科Q&A

【0633】20年前に発症し、再発と思われる妄想、幻聴のある姉について


Q: 私は三人姉妹の三女46歳です。二番目の姉B(現在62歳)のことでご相談いたします。
姉Bは、40〜41歳頃に、初めて幻聴・妄想の症状が出ました。
当時、結婚10年ほど経っていて、子供はいません。当時も現在も、自営業を夫と二人でしています。
発症当初は、たまに会うと「カラスがいつも自分を追いかけてくる」「自分の悪口や噂が知人によって告げ口され、それが週刊朝日に載っている」「今すれ違った人が、いつも私の悪口を言っているのよ」などと言っていました。
日常生活は普通にこなしていましたし、元気で、一番仲の良い長姉Aとでかけたりもしていました。
しかし、徐々に妄想を口にする回数が頻繁になってきて、
「アパートの部屋の中に盗聴器が仕掛けられている」
と言い始め、長姉Aと私は、統合失調症(精神分裂病)ではないかと疑い、病院へ受診させなければならないのでは、話し合っていました。(当事者である姉Bの夫は、まったく驚くほどに無関心で、当時も今もそれは変わりません)
 そのうちに、何かの声が「隣の家に行け」と言ったといって、隣の家のベルを鳴らすなど、直接行動?が出てきました。
 本人も「変な声が聞こえて辛い」と言い、しばらく実家へ身を寄せました。
 そして、父が大学病院の内科診察に行くときに、「一緒に行って診てもらうか?」言ったところ、姉Bは素直に同意し、精神科を受診し、投薬と通院を続けて、半年以上実家で両親と暮らしていました。
 薬を飲み始めるとすぐに妄想や幻聴などの症状も取れ、数ヶ月は寝てばかりでしたが、徐々に軽快し、一年、二年するうちに、「あのころ、私はノイローゼだったのよね。ちょうど閉経だったので、更年期障害だったみたい」「声が聞こえるとかいって、お隣に行っちゃったりしたわ」などとそのころの事を振り返って話すようになりました。
(正確な病名については、医師から伝えられていないようで、自分でよく『ノイローゼ』と言っていました)

無表情、無気力な感じ(薬の副作用と言われました)は、その後しばらくは続いていましたが10年ほどは、非常によくなって、気力も出て、旅行に出かけたり、習い事をしたいと言い始めるなどとてもよい兆候でした。通院は毎月一回、きちんと行っていました。
 しかし、いつの頃かはっきりしないのですが、たぶん一昨年あたりから、勝手に薬をやめていたようで(通院はしていた様子)、たまに「神さまがお腹の中にいる」「女の神さまと男の神さまがお腹の中にいて、私を守ってくれてるみたい」などと言うことがありました。
それを言い始めるときは、ちょっと笑ったような、ためらうような表情のあとに少し言いよどみながら、「でも、他の人には理解してもらえないでしょうね。私は、特殊な体質だから」と話していました。

 しかし、それもしょっちゅうではなく、ごくたまにだったのと、薬も飲んでいて、医師の定期検診も月一度受けているのだからと思い、そのままにしていました。
 ある時に、「先生にそういう話しをするの?」と聞くと、「言ってもあんまり聞いてくれないのよ。通院に一時間かけて、診療3分だから。この前は、数値で薬を飲んでるかどうかわかる検査をしたんだけど、それによると値が低いから、おかしいって言ってたわよ。私の身体ってやっぱり特殊なんじゃないの? 薬を変えたみたい」と言ったこともありました。しかしどうも医師や私たちには薬を飲んでいるといいながら、どうも飲んでいなかった様子です。家に遊びに来て昼から夜一緒にいても、飲んでいるのを見たことがなく、「薬は?」というと、「たまたま今日持ってくるのを忘れた」みたいな言い訳をしていました。
 昨年夏頃からは、「通院のお金がない」との理由で病院にも行かなくなっていました。(自営の仕事が不況で受注が激変とのことで家計が苦しいからと説明)

一昨年あたりから、私が仕事その他で家にいないことが多いので、直接話すことが少なくなっているのですが、時々電話をしてきていて、つい先日は、「耳元でパンっと音がして、女の神さまはいなくなった。男の神さまだけになった」と言っていました。姉の話では、その男の神さまは、現実に存在していた男性と同一らしく(実際に該当者が存在しているのかどうかは不明ですが、姉曰く、近所のファミレスの店長の若い男性)、「その子は、お姉さん(長姉のこと)とつきあってたのよ。私に内緒で無理矢理一緒に暮らしてたみたいなの。お姉さんは遊びでつきあってたみたいでその男の子は、それがいやで死んでしまったらしいの」そして、「この前電車の中で突然涙が出て、訳が分からなくなっちゃったんだけど、どうもそのときにその子は死んだらしくて、私の身体の中に入ってきて、『私と一緒にいたかったよぉ』って泣くのよ」と言っていました。そして、「お姉さんもひどいことするわよね。これからは、表面的にはつきあうけど、それ以上のつきあいはしないわ」と言っていました。 

今まで姉Bは、長姉にベッタリで、長姉の夫が亡くなってからは、周囲がビックリするくらい、「言いなりじゃない?」と思うくらいに面倒みてあげて(金銭的にも)、姪や甥の世話なども長年していました。
そのころは自営も順調で、経済的余裕があったので、面倒をみてあげるのが生き甲斐みたいでしたし、元々、兄弟におごってあげたり、お小遣いをあげたりするのが好きな人でしたが、経済的に苦しくなってからも、長姉と甥にお金を融通してあげていて、断れないみたいになってきていて、私から見ると、主従関係のように見えるくらい、だんだん負担にもなってきていて、ずっと我慢もしていたようですが、長姉を敵視するような発言はこれが初めてです。
さらに、ごく最近、中年の男性が自分の身体の中に入ってきたとかで、この男性は凶暴なので、自分が押さえていないと何をするかわからないのよ、と姉Aに電話で言ったそうです。ある日曜日に自分の夫に激しい口調でののしったらしいのですが、それも姉Bに言わせると「私ではなく、その中年男が言った」そうです。

私は、この症状は薬をやめたことによる再発ではないかと思っていますが、どうでしょうか?
無理矢理にでも病院へ連れていったほうがいいのではと思いますが、前回とは違い、今回は、本人は今の状況を苦しがってはいないようなので、素直に行くとは思えないのですが。

: 統合失調症(精神分裂病)の再発に間違いないと思います。そして再発の原因は、薬を飲むのをやめたことに間違いないと思います。非常によくあるケースです。
対処方法は、再度精神科を受診し、薬を飲んでいただく以外ありません。

本人は今の状況を苦しがってはいないようなので、素直に行くとは思えないのですが。

というあなたの予測は、理屈としてはもっともですが、この方が最初に病院に行く時に意外にあっさり行かれたように、自分では病気でないと強く主張されていても、あっけないほどあっさりと受診に同意されることはありうることです。もっとも、「ありうる」というだけで、今回そうなるかどうかはわかりません。ただはっきり言えることは、精神科を受診する以外には方法はないということです。


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