精神科Q&A
【0580】あやつり人形のように体を動かされたという体験をしました
Q: 37歳の男性です。2年前から精神科に通院しています。病名は統合失調症であると最近告知してもらえました。(今では自分自身そうなのだと思えるようになりました。)
精神科に通院し始めたきっかけは、当時、精神的にも肉体的にも無理をして仕事をしていたのですが、ある仕事の失敗で追い詰められて、不安とストレスに拍車がかかり夜眠れなくなったからです。(当初は市販の安定剤を服用していたのですがそれでも眠れなくなりました。)またストレスで感情をコントロールすることができない状態だったと思います。(初診の時は薬をくれと先生を怒鳴りつけていました。)その後、頭痛も起こるようになり、治まらなくなりました。
ただ、薬を飲めば頭痛も不眠の症状も治まったので、すぐに治ると確信していました。仕事の方も自分にあっていなかっただけと思い、他の仕事もすぐ見つかると考え、理由をあいまいにしたまま退職してしまいました。精神科に通院していることを隠したかったからです。本当に浅はかなことをしたと思います。妄想の第一歩はここからでした。いい加減な退職の仕方ですから、勤務先はよく思っていないだろうと考え、退職後、その勤務先が私に嫌がらせをしているのではないかという妄想に取り付かれました。医師にもそれは話しましたが、当然のことながらそんなことはないと一蹴されました。でも妄想は続きました。今考えると、本当に偶然の出来事や勘違いは往々にして起こるのだと感じています。
退職後は通院と服薬を続けましたが、何事にも興味や意欲がわかず、生活がだらしなくなったのか昼夜が逆転し、性欲もなくなりました。薬の副作用だったのか病気の症状かわかりませんが、今はそうではありません。(今は別の薬を服用しています。)反省すべき点は、頭痛がなく睡眠できている自分は正常であるという認識でしたので(病名はなんとなく聞く気持ちになりませんでした。)、勝手に通院と服薬をやめることをたびたび繰り返したことです。その都度、頭痛が再発し、病院のお世話になることをしました。統合失調症は病識をあまり感じないと言われていますが、私も同様だったのでしょう。その証拠に、前の会社に対する妄想だけは頭痛や不眠に関係なく続きました。(つい最近になってようやくその妄想から逃れることができたように感じてきています。)他にも焦燥感にさいなまれ自殺したくなったこともあります。
以下のような体験もしました。元上司が何らかの機械(テレパシーを感じるような体験でした。)を使って私に話しかけてくる。そのテレパシーと会話もしました。その会話で空笑いもありました。また道を歩いていると他人が目線を使って、自分の歩いて行く方向を示しているような気がして、それに従って行動したりもしました。徹夜をしろと命令されていると感じ、徹夜を実行し、翌朝目覚めると自分の精神年齢が幼児に戻ったり、理性の殻が剥がれ落ちて性欲がむき出しになったという体験もしました。気持ちが高ぶって両親や精神科医の先生の前で、訳もなく号泣したこともありました。病院の待合室で気持ちが高ぶり焦燥感にさいなまれ耐えられなく苦しくなったこともありました。
前置きが長くなりましたが、自分の体が、自分の意思とは関係なく勝手に動くという体験をしたことがあります。テレパシー以下を含めこの体験は半年ほど前の一時期に集中して起きた出来事ですが、先ほどの元上司が電波を使って、私の体を操っているという感覚です。それは電車に乗るとき突然起こりました。自分の目的地とは反対の電車に乗れと命令されました。電車に乗ったら、許しがあるまで電車から降りるなと命令されました。そんな中で、電車の中で吊り広告を次々見るように首が自分の意思と関係なく勝手に動き出します。命令された目的地までそれは延々と続きました。目的地に着いたら、今度はごみ拾いです。タバコの吸殻が落ちているところに首が勝手に動きます。拾えと命令されていると感じていますから、吸殻を拾うのは自分の意思で動きます。ただ、次から次へと吸殻のところに首が勝手に動きます。吸殻以外のところに首が動き、他に目に入るものがあると訳もなく馬鹿笑いしていました。周囲から見たら狂人に見えたに違いありません。しかしそのときでも意識は正常だったと思います。延々4時間くらい吸殻を拾ったと思います。テレパシーで動かされ命令されていると感じていました。吸殻以外のごみ拾いもしました。ちなみに自分の体が勝手に動く体験は、深夜何の理由もなく目を覚まさせられ、テレパシーと会話したことが何度かあったのですが、その時も、1回だけ体が勝手に動きました。
こういう体験も統合失調症特有の症状なのでしょうか、お教え下さい。
現在は、通院はしていますが、普通のアルバイトも行い、健常者と同じように働き、生活しています。
林: これはさせられ体験(作為体験)です。統合失調症(精神分裂病)特有の症状です。主治医の先生にこの症状をお伝えし、適切な治療を受けてください。
あなたがメールにお書きになった内容は、させられ体験以外のものも、統合失調症(精神分裂病)としてほぼ典型的なものです。かなり苦しかった時期も経験されたようですが、適切な治療とあなたの努力の結果、あなたはご自分の症状を客観的に見ることができ、病気という自覚を持っておられます。この状態を病識が出ているといいます。このまま治療を続けることで、今の生活の維持と、さらなる改善も十分期待できます。ぜひ今の治療を続けてください。