精神科Q&A
【0570】知人が統合失調症なのか、性格なのか、超能力者なのかわかりません。
Q: 私は38歳の男性です。かつての同僚(私と同年齢の男性です)について質問いたします。彼とは７年来の知り合いですが、少なくとも５年前は普通の人で、ここ、２〜３年がひどいのです。
ただ、それが、性格的なものなのか、本当の超能力者（【0281】も拝見しました）なのか、統合失調症のなりはじめなのか、わからなくなりました。
性格的として論ずるならば、世間知らずで常識はずれ、打算的で、自己顕示欲が強く、自信家でプライドが高い、コンプレックスが強いのか、疑い深く、独断的で理論武装が激しい、世界が自分を中心に回っていると思っているほどわがまま・・といったまれに見るほど個性的な人。といったところでしょうか。
私もずっとそういう性格の人だと思っていましたが、ある時、自分の持論が論破されそうになった時に、ファミレス中に響くほどの大声で論理をまくし立て、けんかしているわけでも、相手が煽っているわけでもないのに、異常なほどの興奮で大声でしゃべり続け、まったく周囲が見えなくなっている様子でした。
この時に、はじめて私は「性格でなく病気ではないのか？」と疑念を持ちました。
超能力者として論ずるならば、
「警察より、この場所でひき逃げがありました、目撃した方は情報をお寄せ下さい」という看板をみて「白い軽トラックがみえる」という。
「明日の競馬を当ててみて〜」というと、「紫か黒のゼッケンに黄色で数字が書いてある馬が一着」
ちなみに、そういう色のゼッケンは日本全国ひとつもありません（色は決まっています）。
拾ってきた亀の上に、金の台座が乗っていて、その上に正座したお爺さんの神様が乗っているという。
ファミレスやラーメン屋の店員をみて「あの人はお爺さん・・・たぶんご先祖がのっていて、男で苦労している」
そのうちには、いきなり「あなたのうちには古い鏡があるでしょう？」「背中に何かがついているので、お祓いした方がいいですよ」と初対面の店員に話かけます。
知人のお葬式に行ったときには、ご遺体の頭のところから光が降りてきて、扉が開き、ウサギがでてきて、よくみたら、そのうさぎが、先に死んだ息子さんになって、知人を導いて行った・・・そうです。
交通事故現場に落ちている壊れた車の部品を見て「この事故の人は死んでいると行っている」。
私にこれこれ（特徴）な親戚はいるか？いるというと、その人がふたり、空港にいるのがみえるが、そこで事故に合う、という。
私の肩には、小さいサルが乗っているそうです。
「そういうのはよく見えるの？」と聞くと、「いつも見えているわけではなく、ぱっとみえるときと、集中すると見えてくるときがある」とのことです。自分をそういう能力がある人と信じています。３年前に超能力者になったようです。
しかし、内容は占い師が言う程度の当たっているか外れているかわからないことばかりです。それでお金儲けをしようとか、詐欺を企てているということは一切ありません。
性格的に偏っていると思えるところは、
他人には厳しくて、自分には甘い（いうこととやることが矛盾している）。
例・ミスタードーナツがいつもより小さいと電話でクレームをいう。
・中華チェーン店の椎茸の火の通りが甘いと電話でクレームをいう。
しかし、クレームでなにか金銭をとってやろうという意図はなく、バイトが適当にやっているのが頭にくる、といい、相手方の責任者が謝ると実に満足そうな様子。
一方の自分は、自分の失敗を絶対！に認めない。
特に、他人のミスや気に入らないことは、詭弁としか思えない論理でまくし立て、
「俺の行ったとおりだ、俺にかかるとみんな口もきけなくなる」と自慢げ。
あまりの荒唐無稽さに相手があきれていることがまったくわかっていない。
しかし、失敗は認めないが、自分で誤りに気付くことはごくたまにあり、いつの間にか改まっていることもある。
世間の常識と反対の論理を猛然と主張することが多い。またその意見を曲げない。
常識が間違っている、という（世の中によっぽど不満があるのか？？？、また、個人商店でしか働いたことがないため、世間知らずなのか？？？）
考え方が独特。
近所の中華料理屋のとなりに同業者が開店したので、半額セールをしたのを見て、
「客をなめている」といって真剣に怒り出す。
言うこととやることの矛盾が多い。
例・コンビニ弁当やファーストフードは保存料がかかっていて危ない、
スーパーの肉も保存料をスプレーでかけている・・・といいながら、いつも食べている。
他人にはやってはだめだ！ということを自分はやっていたりする。
何のためかわからない嘘をよくつく。さらに自分の知らないことは事実のごとく嘘をつくる。
あえて、なにか意味があるとすれば、自分は物知りだとアピールしたいのか？？？
しかも、あとからしらべればすぐにばれてしまうような嘘であることが多い。
他人からの伝聞がいつの間にか自分が体験したことにすり替わっていて、指摘しても、絶対に体験したことと言い張る（本気）。
さらに話に自分がアレンジした尾ひれがついて誇張されている。
（誰でも勘違いはありますが通常より度を超しているように見受けられます）。
そのため、言った言わないのトラブルが非常に多い。
ここ３年は被害妄想がひどい。
自転車が盗難に合ったときは「あそこの自転車屋が盗んだに違いない」とまじめにいっている。もちろん、証拠はない。本人もそのぐらいの分別はあるのか、警察に訴えることまではしない。
「俺がいいと思った健康食品が必ずまもなくファンケルで発売される、盗んでいるのじゃないか？」といっていたこともありましたが、その時は冗談かと思いました。
自分の論理に決めつけが激しい。しかもなんの科学的根拠もないのに、
「○○はこうだ！」「絶対違う」と決めつけると一切譲らない。
根拠の多くは「アメリカ人は日本人ほどバカではない」とかといったレベル。
特に、自分を少しでも理解できない人物は「バカだ、信用できない」と平気でいう。
そのため、最近は、雑談ができないこともある。
例・「有名な○○ラーメンってカップラーメンになったねー」というと、
「○○はバカだから（略）カップにしてしまう（略）日本人の悪いところで（略）と、詭弁に近い三段四段（？）論法が始まり、「あんたもそうだ、仲間だ」とかいう。
自分に同調できない人間はみんなバカにされてしまいます。
先日は銀行に、新しい店舗を買う資金を借りにいくといい、
「頭金はない、帳簿もみせられないが、年収は○○ある」、
当然、銀行が融資してくれるはずもなく「銀行員はみんなバカ、俺が直接店長に話せばわかる」と大まじめ→当然、相手にされなかったらしく、おとなしくなった。
「○○県人は全員バカ」
「全員ってことはないでしょ〜」といっても、「いや、みればわかる」と真剣。
医者も病気を作っているだけでバカ、歯医者も獣医もバカ（権威に弱いわけではないらしい）。特に日本人はバカ。
最近、日曜大工に凝っていて、そのあまった木材をゴミのように重ねてあり、ガスボンベの交換や水道メーターの検針が難儀になっているのだが、水道屋もガス屋もバカなのでお構いなし（だそうです）。
（結局、ゴミであるので、ゴミ屋敷をつくってしまう精神病者に通じるものがあるのか？
周りの人がかたづけてもそのうちまた重ねてある）。
あと、ないことは、宗教や自己開発セミナーに入っていたことはない。
高卒だが、一般的な教育を普通に受けている。
いわゆる不良や落ちこぼれではなかったらしい。交通違反以外では警察のやっかいになったことはない。
ご両親ご兄弟、妻子は普通の人。
暴力をふるうことは一切ない。ひとりでしゃべったり、全く意味のないことをつぶやいたり、まったく意味のない声が聞こえてくるといったことは一切ない。
タバコ、ギャンブル、酒、投資は一切やらない。薬物の可能性は一切ない。
・・・できるだけ現実を知ってご判断いただきたいと思って書き連ねてきましたが、長くなってしまい申し訳ありません。
どこまでが、性格的なもので、どこからが病気なのか、私には全くわかりません。
このままで大丈夫でしょうか？
林: 大丈夫ではないと思います。この方はまず間違いなく統合失調症(精神分裂病)です。
メールに詳しく書かれている内容は、どれも思考障害のあらわれと解釈できます。そしてこれが書かれているうちのどれかひとつかふたつ程度なら、偏った性格によるとも考えられますが、かなり広範にわたっており、しかも相互に特に関係のないことですので、単なる性格の問題とは考えられません。また内容があまりに荒唐無稽なことも、性格ではなく統合失調症(精神分裂病)であることを強く示唆するものです。
そこに
ここ3年は被害妄想がひどい
というように、被害妄想がはっきりしてきているということで、統合失調症(精神分裂病)の診断はほぼ確実になります。
統合失調症のなりはじめなのか、わからなくなりました。
とあなたはおっしゃっていますが、これは「なりはじめ」ではありません。すでに最低でも3年は経過しています。思考障害に基づいて、他人に迷惑をかける行動に出ることも危惧されます。このままで大丈夫のはずはありません。治療が必要です。
続きを読む(2004.4.5.)