精神科Q&A

知覚変容発作についての最近の論文:

(1) Recurrent Episodes of Perceptual Alteration in Patients Treated with Antipsychotic Agents. 
By Uchida H, et al
Journal of Clinical Psychopharmacology
Volume 23, Number 5, October 2003.

知覚変容発作の発生頻度や、発生時の状況についての研究です。抗精神病を服用している患者さんの3.25%に発生するというデータが示されています。


(2) Antipsychotic-induced paroxysmal perceptual alteration
By Uchida et al
American Journal of Psychatry Volume 160, December 2003.

知覚変容発作が、副作用ではなく、精神分裂病(統合失調症)の症状のひとつであるという見解に対する反論となるデータです。ここには、不安障害と思われるある患者さんが、他の薬がなかなか効かないために抗精神病薬を処方されたところ、知覚変容発作が2回起きたことが発表されています。このように、精神分裂病(統合失調症)ではない人が抗精神病薬を服用した結果として知覚変容発作が起きれば、副作用であることを強く支持することになります。この論文には、「精神分裂病(統合失調症)ではない人が、抗精神病薬を服用した結果として知覚変容発作が2回起きたという世界で初めての報告」と書かれています。
【0554】の方も精神分裂病(統合失調症)ではありませんので、【0554】は「世界で2番目の報告」ということになるのかもしれません。


(3) 分裂病者における「知覚潰乱発作」について
山口直彦、中井久夫
分裂病の精神病理14 内沼幸雄編集 東京大学出版会 1985年 pp.295-314

上の(2)や【0554】の回答にお書きしたとおり、知覚変容発作が薬の副作用なのか、それとも病気の症状なのかということについては昔は不明でした。この論文の題名にある「知覚潰乱発作」は、内容として知覚変容発作と全く同じで、精神分裂病(統合失調症)の一症状であると解釈されています。具体例も豊富に出ており、「周囲が迫る」「音がビンビン響く」という体験がほぼ共通しています。
 論文中には、「抗精神病薬服用に関係している現象であるということは全く否定できないけれども・・・」という記載もありますが、薬が原因ということは捨てきれない可能性としているにすぎず、むしろ精神分裂病(統合失調症)の一症状であるとして、なぜこのような症状が起こるのかということを精神病理学的に詳しく考察してあります。
 なお、原因はともかくとして、対処法については、抗不安薬(この論文では「マイナー・トランキライザー」と書かれています)が非常によく効くというデータがここにも示されています。


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