精神科Q&A

【0525】抗うつ薬と健忘


Q: 30歳主婦です。4年ほど前から、睡眠障害の症状が出始めました。
入眠障害はありませんでしたが、夜中に途中覚醒して、そのまま数時間眠れなくなり、実質の睡眠時間が3〜4時間程度という状態が続きました。
いわゆる「うつ状態」の自覚はありませんでした。しかし、結婚をはじめとして、公私ともに、いろいろ不安定な時期ではあったかと思います。
半年くらいしてから、近所の精神神経科のクリニックを受診しました。
当初はデプロメールとレンドルミンを試しましたが、途中覚醒の解消には全く効果がありませんでした。
数度の処方変更により、2年半ほど前から以下の処方をおそらく1年近く続けました。

毎食後:
ルジオミール25mg 2錠
ソラナックス0.4mg 1錠
ミケラン5mg 1錠
アナフラニール25mg 2錠
デパス1mg 1錠
アモキサン50mg 1c

就寝前:
デジレル50 4錠
リーマス200 1錠
ドラール20 1錠
ヒルナミン25mg 1錠
ヒルナミン5mg 1錠
デパケンR200 1錠
トリプタノール25 3錠

 ときおり、アナフラニールの点滴を受けたりしたこともありました。
 しかしこの処方でとくに睡眠障害は改善せず、むしろふらつきの症状が強く出てきました。

 また、わたしはお酒も飲むほうで、当時も毎日、ビールなどを1000ml以上は、仕事から帰宅後の家事をしているときに飲んでいました。

 一年前に職場で倒れ、2週間ほど入院しました。
 それを機にこの処方をしていた精神神経科には通わなくなりました。
 それ以降、半年ほど仕事をせず、家でゆっくりしていました。
 しかし睡眠障害は、入眠障害や途中覚醒も残ってはいました。

 10ヶ月前から新しく仕事を始めるにあたって、別のメンタルクリニックを保健婦さんに紹介していただき、現在も通院しております。
 そして現在は睡眠障害もパニック障害も落ち着いています。
 酒量も減らすようにしています。(今は350ml*2程度。飲まない日もあり。)
 ちなみに現在の処方は以下のとおりです。

毎食後:
トレドミン25 1錠
ソラナックス0.4mg 1錠

夕食後:
レスリン50 1錠

就寝前:
ベンザリン10 1錠
ベンザリン5 1錠
ハルシオン0.25mg 1錠
パキシル10mg 1錠

 お伺いしたいのは、2年ほど前、最初に書いた処方を続けていた頃の記憶が、ところどころ抜けていることについてです。
 それも日常の些細な出来事を忘れている、といったことではなく、特別な出来事で、通常ならば記憶に強く残るようなことが記憶から抜け落ちているのです。
 例えば、車で小さな事故を起こしたことや、友人に久しぶりに会ったこと、息子の保育園での行事や、仕事の内容など、すっぽりと記憶から抜け落ちていることが多いことに気づきました。
 抜け落ちている記憶は、嫌なことばかりでなく、楽しかったはずのこともあります。
覚えていないことに気づき始めたのは、その頃自分の書いたメールを読み直してみたり、友人や夫に指摘されたり、何かに記録してあるのを見てからです。
そういったものを見て思い出すこともあるのですが、全く思い出せないこともあります。

 思い出せない記憶の中に、なにか奇妙な行動をとったといったようなことは無いようです。
(そういった指摘は、夫からも友人らからはありません。)

 これは、当時服用していた薬物の影響でしょうか?
 薬物の影響で、記憶が抜け落ちるということはあるのでしょうか?

 この処方を、他のどのお医者様にお見せしても、「薬の飲みすぎ」といったことを言われます。
 また、一年前に倒れたのも、これらの薬物による「機会性てんかん」との診断をうけました。(てんかんそのものについては、全く問題ないとのことでした。)

 薬の副作用でそういったことがある場合があるのなら、おそらくこれからは、記憶が抜け落ちることなど無いかと思うのですが、そうでなければ、自分にはこういったことがこれからも起こる可能性があるのでしょうか。
なお、最近はそういった、「記憶の抜け落ち」は無いようです。
 何らかのご教示を頂ければ幸いです。


: おそらく、薬の副作用による健忘だと思います。どの薬が主かはわかりません。ビールの影響もあると思います。処方を拝見すると、確かに大量の薬ですので、これだけでも健忘が出てもおかしくありませんが、アルコールの影響が加わると、ますます健忘が出る可能性は増します。たとえ薬が少なくても、アルコールを飲むことによって、記憶がところどころ失われるのは稀ではありません。

ただし、
この処方を、他のどのお医者様にお見せしても、「薬の飲みすぎ」といったことを言われます。
これについては何ともいえません。あなたの症状に対し、これだけの量の薬が必要だったのであれば、健忘の副作用があってもやむを得なかったのかもしれません。うつ病は、悪化すれば自殺にもつながるという意味で命にかかわる病気ですから。

なお、
一年前に倒れたのも、これらの薬物による「機会性てんかん」との診断をうけました。(てんかんそのものについては、全く問題ないとのことでした。)
「機会性てんかん」というのは、おそらく「機会性発作」のことでしょう。「状況関連性発作」ともいいます。これは、本当の意味ではてんかんではなく、ある特別の場合に起きた発作のことをいいます。たとえば熱性けいれんや、アルコール・薬物の影響により一時的に起きた発作のことです。だとすれば、抗てんかん薬を飲む必要はないということになります。あなたが言われたように、「てんかんそのものについては、全く問題ない」ということになります。ただし、脳波の検査を受けられたかどうかが書かれていないため不明ですので、これはちょっと気になるところです。もし脳波に何らかの異常があれば、回答は全く違ったものになります。もし脳波の検査を受けたうえで問題がなかったのであれば(おそらくそうだったのだと思いますが)、この回答の最初に言った通り、薬による健忘ということですべては説明がつくと思います。


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