精神科Q&A
【0516】うつ病の回復期の過ごし方について
Q: 23歳の女性です。
1年半ほど前から、生きているのがどうしようもなく辛い、なにもできず布団からでられない、などの精神的な症状が続いて、半年前に仕事をやめ、2ヶ月前に神経科へ行き、うつ病の診断をされ治療をしております。
現在は薬のおかげで症状が大分和らぎ、落ち着いてきました。
波はあるものの、調子のよい日のほうが多くなり、あまりよくない日も、以前のように激しく落ち込むことはなくなってきました。
今回ご相談したいのは、今の生活について、母と意見が合わず、どうしたらよいのかわからない、ということです。
私自身は、もう少し病気が回復して、自然と元気が出て、やる気がわいてくるまで、もう少しそっとしておいて欲しいというのが本音です。
しかし母のほうは、せっかく良くなってきたのだから、もう少し頑張って、いろいろと将来の準備を少しずつでも始めたらどうか、といいます。
薬ばかりでなく、自分でも少しは努力しないと、病気はいつまでたっても治らないのではないか、と。
私も、そう言われると、もう少し休んでいたいというのが甘えのような気がして、恥ずかしくなります。
私も母も、早くこの病気から立ち直りたいという気持ちは同じです。
うつ病というのは、無理をしてはいけないというのは知っていますが、ここまで回復してきた場合には、やはり社会復帰にむけて患者自身の努力も必要なのでしょうか。
自然と時に任せているだけでは、完治は難しいものなのですか。
ぜひ林先生のアドバイスをお願いいたします。
林: うつ病の回復途中の時期に、いつからどのくらい活動を始めるべきかは難しい問題です。
症状がまだ悪い時期には、何もせずに休んでいたほうがいい。これは間違いのないところです。
そして、ある程度よくなった時期にも、やはりまだ無理はしないほうがいい。これも確かです。
そしてさらに回復したら徐々に活動をはじめるのがいい。これも当然のことです。
と文章で書くとどうということはないのですが、実際には「ある程度よくなった時期」と「さらに回復したら」の境がどこにあるのか、その判断は簡単ではありません。
また、回復といっても一直線に回復するとは限りませんので、「ある程度よくなった時期」と「さらに回復したら」の時期を何回か往復するのもよくある経過です。
そうしますと、いつからどのくらい活動するかは、試行錯誤的要素が強いということになります。
もし「いつからどのくらい活動するか」を決めるとすれば、それは主治医に決めていただくしかないと思います。
本当は、主治医もこれはよくわからないことも多いのです。よくわからないのですが、それまでの臨床経験などに基づいて、ある程度は決めるのが普通です。(この場合、「あなたがまだ休みたいと思われるなら休みなさい」というのも、「決める」の範囲だとお考えください)
ご家族のほうは、あなたのお母様のように考えるかたが多いと思います。うつ病の症状がまだ悪い時期であっても、休んでいるだけではよくならない、といって、活動させようとする方も多くいらっしゃいます。これは回復の妨げになります。
あなたのお母様の場合は、おそらくそうではなく、あなたがよくなってきたので、そろそろ活動したほうがいいと考えておられるのだと思います。こういう家族のかたはさらに多いのですが、これも時に回復の妨げになります。
ご家族から、
せっかく良くなってきたのだから、もう少し頑張って、いろいろと将来の準備を少しずつでも始める
ことを勧められ、さらに
薬ばかりでなく、自分でも少しは努力しないと、病気はいつまでたっても治らない
といわれると、うつ病の方は、本音では
もう少し病気が回復して、自然と元気が出て、やる気がわいてくるまで、もう少しそっとしておいて欲しい
と思っていても、
もう少し休んでいたいというのが甘えのような気がする
というように、ご自分を責める気持ちが出てしまう、これは非常によくあるパターンです。せっかく順調に回復してきたうつ病が、こうしたことのために回復しきれずに長引いたり逆に悪化したりすることもよくあります。
薬ばかりでなく、自分でも少しは努力しないと、病気はいつまでたっても治らない
お母様のこの言葉は確かに事実ですが、「少しは」とはどのくらいか、そしてその「努力」をいつ始めたらいいか、それがとても難しいことなのです。ご家族から見て、もうだいぶ元気になったように見えても、まだまだ不十分ということはよくあるからです。
あなたの場合、
現在は薬のおかげで症状が大分和らぎ、落ち着いてきました。
波はあるものの、調子のよい日のほうが多くなり、あまりよくない日も、以前のように激しく落ち込むことはなくなってきました。
とのことですので、順調に回復されていると思いますが、今が活動すべき時期なのか、それともまだ静かに休んでいるべき時期なのか、そこまではこのメールでは判断できません。やはり先に言いましたとおり、主治医の先生に決めていただくのが最善でしょう。そしてもしまだ休んでいたほうがいいということであれば、そのことを主治医の先生からお母様に伝えていただくほうがいいでしょう。