精神科Q&A

【0498】実際におならが出ていても自己臭症ですか


Q: 27歳女性です。
 精神科に通院していますが、自己臭症といわれています。主治医の先生にはにおいは出ていないと思われていますが、実は実際におならが頻繁に出ています。
 
 ごく身近な友人はそれを認めています。それを先生に話しても、病状がひどくなったような言われ方しかしません。内科的な検査は異常ありませんでした。と、言っても社会生活は苦痛で会社の人とは悪口を言われたり私が気にしたりと関係がおかしくなってくるので仕事もままになりません。
 
 対人恐怖症かとも思いましたが、外にいても家にいてもあまり変化がありません。初対面の人に声をかけることは簡単に出来ます。先生についている学生さんも「あなたが病気には見えなかった」と言っていました。確かに映画館や美容院、レストランなど人口密度が高いところでは出かける前から気にするあまり、おならがより頻繁に出ることはあります。そういう場所でも事前にトイレ(排便)を済ませられればおならは出ません。もちろん、常に排泄をコントロールできるわけではないのでそういったときは失敗し、落ち込んだりします。呑気症かとも思いましたが、レントゲンでは人より多いということすらないようです。

「症状が出ても仕事はしろ」と先生から言われており、平気な顔して働いていますがそれがかえて周囲には変に見えるらしく「人間じゃないね」とか「会議中によくそんなこと平気でできるね」と言われています。なので、頭の中はしょっちゅうおならのことを考えてしまいます。
 
 私は何の病気でしょうか。今後、病院は変えるべきなのでしょうか。


: あなた自身は自己臭症とは何かよくご存知と思いますが、順序としてはまず自己臭症(自己臭恐怖ともいいます)について簡単に解説します。

 自己臭症とは、自分の体から嫌な臭いが出て、それが他人に不快感を与えていると信じ込む症状です。嫌な臭いというのは、口臭、体臭、おならなど、様々です。臭いが出ているという確信はとても強く、他人のちょっとした言動を見て、自分から臭いが出ているに違いないと思い込むのが典型的です。他人からそんなことはないといくら説明されてもまず納得しません。この思い込みは、妄想的解釈ということもできます。

 以上が自己臭症の説明ですが、これはこのままあなたへの回答の一部になっています。
つまり、
実際におならが出ていても自己臭症ですか
というあなたの質問、言い換えれば、自分は本当に臭いが出ていると信じている、それがそのまま自己臭症という病気の特徴だということです。

というふうに私がお答えすると、失望されるでしょう。また同じ答か。誰も私をわかってくれない。本当に臭いが出ているのに。と思われたことと思います。

 もちろん、あなたは例外かもしれません。「自分から臭いが出ている。それは絶対に間違いのないことなのに、医師を含めて大部分の人がそれを認めない」という人の、すべてが自己臭症というわけではありません。例外的に本当に出ている人も確かにいるでしょう。あなたがどうであるか、メールを読んだだけの私にはわかりません。ただ「例外」ということにひとつ付け加えると、「自分だけは例外で、本当に臭いが出ている」というのは、ほぼ例外なくすべての自己臭症の人が主張することでもあります。

 また、あなたが書いておられる、
ごく身近な友人はそれ(実際に臭いが出ていること)を認めています
というのも、自己臭症の人の多くがおっしゃることです。

 あなたのケースがどうであるかはわかりかねますが、「私から臭いが出ている」ということであれ何であれ、非常に強い確信を持って誰かに迫られると、それは間違いだと思っても、なかなか面と向かって否定はできず、曖昧に肯定されることは多いものです。そうしたことが1回でも2回でもあると、それを拠り所にして自分の体験が真実であると主張される、これは自己臭症に限らず、妄想を持っている人に共通してみられることです。

それから、
「人間じゃないね」とか「会議中によくそんなこと平気でできるね」と言われています
という、あなたの主観的な体験は、現実であるとは私には考えにくく、これも自己臭症や、やはり妄想を持っている人がよくおっしゃることに一致しています。幻聴の可能性もあります。

 以上は大部分が一般的な解説、一部はあなたに対する回答です。これ以上はメールを読んだ限りでは何もいえません。したがって、病名が何であるかをここで判断することはできません。病名があなたにとってもっとも知りたい点で、そのためにメールを出されたというのはよくわかりますが、これ以上の判断はできません。主治医の先生のおっしゃるように、「症状が出ても仕事はする」ことを私もお勧めします。病院を変えるべきではないでしょう。


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