精神科Q&A
【0477】睡眠中の奇妙な言動
Q:
私は29歳男性です。仕事は15名ほどの小さい会社ですが、取締役をしております。
仕事は忙しく、週に3日くらい一睡も出来ない時があります。それと関係があるのかは分かりませんが、寝言なのか寝ぼけているのか、睡眠中に奇声をあげたり、自分でも思っていない事を口にしたり、時には隣で寝ている彼女に手をあげたりしてしまっているようなのです。
昔から家族に寝言や寝ぼけるというのは聞いていましたが、最近では、別人のような態度を見せるようです。
寝ぼけ眼ではなく、はっきりとした口調で受け答えをしている為、目が覚めてから自分が何したかわかってる?と聞かれる事が度々あり、覚えていないと言うと精神分裂症なんじゃないか?と言われてしまいます。
自分の記憶に憶えがまったくないため、どうしていいかわかりません。
一度精神科の診察を受けたほうが良いのでしょうか?
林: 夢中遊行症の一種だと思います。俗にいう「夢遊病」に近いものです。一般にいう「ねぼけ」と、本質的な違いはありません。
確定診断のためには、睡眠時ポリグラフといって、脳波や心電図などを、一晩にわたって検査することになります。したがって検査入院が必要です。
けれども、入院すると環境も変わるので、ご自宅で出たような症状が出ないことが多いものです。そうなるとわざわざ検査しても結局はっきりしたことはいえないということになります。それを考えると、今の段階であえて確定診断にこだわることはないかもしれません。確定診断しなくても、だいたいの治療は可能ですので。
治療といっても、夢中遊行は自然に治る場合が多いので、様子を見るという方法もあります。が、あなたのケースでは、他の人の迷惑にまでなっているので、なんらかの治療が必要でしょう。
もっともお勧めするのは、生活習慣の改善です。夢中遊行は睡眠パターンの異常で、それには日中の生活習慣も関係してきます。あなたのように超多忙で、徹夜も日常的というのは、言うまでもなく覚醒-睡眠のリズムが乱れることになります。それがあなたの夢中遊行に大きな影響を与えている、さらにいえば原因であるといってもいいでしょう。ですから規則正しい生活習慣に戻すのが最善です。
もしそれが不可能となると、薬の力を借りることになります。睡眠薬を飲むのがひとつの方法です。それからリボトリールという薬も有効なことがあります。リボトリールは、もともとはてんかんの薬です。これらが無効な場合、少量の抗うつ薬を試みる方法もあります。抗うつ薬は、睡眠を調節する作用があるからです(具体的には、REM睡眠までの時間を短くするという効果があるのです)。
なお、ねぼけと精神分裂病には何の関係もありません。