精神科Q&A
【0470】生活の基本動作がわからなくなった姉は、軽いノイローゼと診断されているのですが
Q: 姉は50歳になります。
2ヶ月前に自宅で脊椎を骨折,すべり症で入院しました。その時も情緒不安定で個室に入れてもらい,それでも隣室がうるさいとか食事が不味くて食べられないと言ったり,看護婦の対応に敏感になったり,過去の出来事に対して”もうしわけない事をした”といって泣き出したり大変でした。その上,足の静脈血栓症になった事でさらに不安定になってしまったようです。骨はついたものの,もう少しリハビリの必要があったにもかかわらず,本人の希望で退院してしまいました。
ところが退院してみると,目の前に箸があってもどうやって食べたらいいか分からない,服の着方がわからない、生活の基本動作がわからなくなったと言うのです。今は義兄がすべて手を貸して着替えやトイレ,風呂,にも入れているようです。精神科に行ったら軽いノイローゼ,と言われたようです。
このままほっておいてもいいものでしょうか。またノイローゼから他の深刻な精神病になる事はないのですか。ちなみに姉は不眠症で(7〜8年前)睡眠薬を飲んでおり,今はマイスリー2錠,精神安定薬を飲んでいると思います。姉とは他県に住んでいる為,会う事が出来ず,一度お見舞いにいってあとは電話での様子なので正確な事はわかりませんが,本で読んだ神経症になりやすい素質を多分に持っていると思います。
林:
「目の前に箸があってもどうやって食べたらいいか分からない,服の着方がわからない、生活の基本動作がわからなくなった」
しかも、
「今は義兄がすべて手を貸して着替えやトイレ,風呂,にも入れている」
この状態に対し、
「精神科に行ったら軽いノイローゼ,と言われた」
ということは考えられません。つまり、これだけの症状があって、「軽いノイローゼ」のはずはありません。
「目の前に箸があってもどうやって食べたらいいか分からない,服の着方がわからない、生活の基本動作がわからなくなった」
というのは、記載されている症状だけを見れば、失行と呼ばれる症状です。失行は、脳血管障害などの脳の損傷によって起こる症状です。骨折したあとには、脳血栓(脳の血管が詰まる)が起こりやすいので、その結果失行の症状が出ることはありえます。しかし、メールの記載からすると、むしろ心因性のように思えます。つまり、失行ではない可能性のほうが高いと思います。しかしこれはもっと詳しい状況がわからないと判断できません。
いずれにせよ「軽いノイローゼ」ということはありえません。離れて住んでおられるあなたに、何かの理由で正確な情報が伝えられていないのだと思います。つまり、症状についての情報か、医師の診断についての情報のどちらか、あるいはその両方が、十分に伝えられていないのでしょう。