精神科Q&A

【0462】80歳の躁うつ病の母が、そろそろ躁になる季節なのですが


Q: 現在80歳の母のことでご相談いたします。

 母は60歳代くらいから、どうもうつ病の気配がありました。

 同居している兄家族との確執や、53歳という若さで未亡人になった不安などから、時々ふさぎこんで、体調を崩し、その末には近くの病院に、心臓とか何か病名をつけては、入院、風邪を引いたと言っては入院、一つには家族に迷惑をかけるので、直ぐ病院に逃げ込むような事を繰り返していました。

 何度か精神科の診察を受けるように連れて行ったりもしたのですが、長男家族との同居ですので、あまり体面の悪い事も出来ないとかの、田舎の生活もあって、その都度、簡単な入院で元気になったり、冬の寒い時期はベッドの中で過ごしたりしてきました。

 その後4年前より、兄嫁がSLEという難病を患うようになりましたら、今までの抑圧された気分のはけ口なのか、夏の気候の良いときは躁に転換するようになり、昨年、一昨年と夏場は、周りの人に迷惑をかけるほど躁の状態が出るようになり、通販を買ったり、朝の5時とかに電話をかけたり、今までみた事のないようなキツイ形相になったり、言葉を発したりし始めました。

 精神安定剤や眠剤などをもらって、飲んだりしてたらしいのですが、転んだり、いろいろ問題が出てきました。

 躁は夏場だけで、冬はまったく鬱になり、一緒に生活していない私には、なんとも手におえない現状で、歳だからボケの仲間として、ただ廻りの人は当たらず触らずの現実です。私も久しく海外暮らしなどをしていまして、このたび戻り、あまりの母の変化に戸惑い、精神科のお医者様に相談した所、今は鬱ですが躁があるので、治療には入りにくいとのことでした。

 今は、鬱ですので、ただボンヤリと日々暮らしております。

 昔ほど、辛いこともなくなってるのでしょうから、80歳の年齢ならこんなものだとして、諦めてくらすことが一番なのでしょうか。

 いわゆるボケにはなっていないようです。それにこのたびは難病の兄嫁との同居は無理と言う事になり、故郷を離れ長男のところで引き取りました。

 これが又、鬱状態を悪化させてるように思いますが・・・

 このまま治療はしないで、躁にでもなったときに、安定剤でも飲ませて?そんな介護でよいものかと、不安でなりません。

 年齢も80、なんとも心が痛い毎日です。

今この状態でも、診察は直ぐ受けるべきなのでしょうか、それとも前の精神科のお医者様のように、躁になった時まで待ったほうがいいのでしょうか。

 内科的には特別問題はないという診断を受けていますが、日々ただ、寝たり起きたり、まったく積極的には動きません、このまま寝たきりになるのも大きな不安です。昨年まででしたら、ソロソロ躁に切り替わる時期、今年は未だベッドの中です。

 何か良い方法がありましたら、ご指南ください。  よろしくお願いします。

: お母様の診断は躁うつ病で間違いないと思います。60歳代にうつで発症し、その後何回かうつを繰り返し、70歳代で最初の躁状態が出現。以後、夏になると躁、冬になると鬱を繰り返している。季節性の躁うつ病です。

 60歳代に発症、70歳代に最初の躁状態というのは、躁うつ病としてはかなり晩発ではあります。一方、季節性というのはよくあることです。

 躁うつ病に対しては、薬物療法が基本です。もっともよく使われるのはリーマス(リチウム)です。リーマスは、もともとは躁状態の治療薬と考えられていましたが、その後、うつにも効果があること、さらには躁状態やうつ状態の予防効果(これをあわせて病相予防効果といいます)があることがわかっています。
ですから、

「今は鬱ですが躁があるので、治療には入りにくい」

というのは精神科医としては普通は納得しがたい言葉です。

 何か薬を使えない理由があるのかもしれません。あるいは80歳という年齢を考えて、思いもかけぬ副作用を考慮して(高齢者では、確かに副作用が出やすいということはあります)、薬を出さないということも考えられますが、躁になったときに薬を出すつもりだとしたらこれも矛盾しています。いやそれとも使う薬の全体量を極力少なくしようとしているのか・・・ほかに何か問題があるのか・・・これ以上はメールの情報からはわかりません。

 もしそうした問題がないとしたら、躁うつ病の病相予防のために、今からでも薬を飲むことをおすすめします。普通、第一に使う薬は上記のリーマス(リチウム)です。

 ただ、非常に現実的な問題として、リーマスの錠剤は大きいため、高齢の方には飲みにくいということがあります。それなら砕いて粉にすればいいではないかと言われるかもしれませんが、リーマスは粉にすると胃をいためる副作用が非常に出やすいという厄介な問題が生じます。

 そうすると、リーマス以外の薬ということになります。躁うつ病の病相を予防する薬としては、ほかにテグレトールデパケンがあります。デパケンにはシロップがありますので、お母様にはこれが最適かもしれません。

 


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