精神科Q&A
【0459】姉が急に自分を失ったように暴れます
Q: 私の姉(30歳)ですが、高校入学から間もなく不登校になり、しばらくして退学しました。それから現在まで、ずっと実家(新潟)にいます。
しばらくは引きこもっていましたが、その後家業(農業)を率先して行い、家族も安心していました。ところが、自分を失ったように暴れ、自分の部屋の障子や襖を破ったり、布団を切り裂いたり、父親が押さえつけてもきかない状態になりました。これが2,3ヶ月に1度おこりました。状態は20分もすればおさまり落ち着きますが、その後2週間程は家族と口も聞かず、部屋にこもります。この期間は序々に長くなり、この8ヶ月間は何もなく家事等行っていたのに、急に昨日暴れました。お腹が痛い、手が痛いと叫び、立ち上がる事すら出来ませんでした。目は泥酔したかのようにするどくすわり、親をののしります。
このメールを送っている私は高校卒業と同時に就職して家を出て、今は熊谷で家族を持っています。姉の状態は母からの電話で聞きました。両親は病気というより神がかりではないかと言っています。姉の下に弟がいて近所に結婚して家を持っています。その家族が来るとこのような状態になる事が多いです。弟夫婦、特に嫁と気が合わないようですが・・これは一時的なパニック障害なのでしょうか?教えてください。
林: パニック障害ではありません。いちばん可能性が高い病名は、精神分裂病(統合失調症)です。
1 高校入学してまもなく不登校、しばらくして退学
2 それからしばらく引きこもり
3 その後、家業(農業)を率先して行っていた。
4 ところが、時々自分を失ったように暴れ、自分の部屋の障子や襖を破ったり、布団を切り裂いたりし、それに続いてひきこもるようになった。
これは、比較的典型的な精神分裂病の経過です。(治療を受けなかった場合の典型的な経過ということです)
ただ、メールに記載されているのが、外見的な行動だけで、ご本人の言葉が一切ないので、判断しにくい面もあります。おそらくあなたは家を出られて何年にもなるため、直接この方にあまり接していないためにこのようなメールの記載になっているのだとは思いますが、お姉さま自身がどのようなことを言っておられるのか、ご両親を介しての記載でもあれば、より有効な回答ができると思います。
ご本人の話を聞かずに行動だけ見ると、このように「突然理由もなく暴れる」というように見えるものです。ご本人の話をよくお聞きになれば、内面的な症状がもっとよくわかると思います。(ただし、何も話さないことが症状である場合もありますが)
しかし、お姉さまの場合は、外面だけを見ても、やはりもっとも考えられるのは精神分裂病です。発作的な症状であることからは、てんかんも考えられますが、全体の経過をみると精神分裂病の可能性のほうが高いと思います。また、「弟夫婦が来たときに暴れる傾向がある」というように、心理的な要因が症状の波に関係することも、どちらかというとてんかんより精神分裂病らしいということになります。
なお、ご両親は「病気というより神かがり」と言っておられるとのことですが、てんかんにしても精神分裂病にしても、昔は悪魔が憑いたとか、狐が憑いたなどと考えられたり、神がのりうった「聖なる病(これはてんかんですが)」と呼ばれていた時代もあります(ですから、神がかりに見えること自体が、逆に精神分裂病やてんかんであることを支持するともいえます。単に暴れるだけなら、正常心理でも十分ありうることでしょう。しかし神がかり的な印象があるとなると、話が違ってくるということになるのです)。
しかし、神かがりと考えられていたのは大昔の話です。
治療法が開発された現代に、精神分裂病を神がかりとみなしていたら、ご本人にとってこれほど不幸なことはないでしょう。早く治療をはじめることが必要です。