精神科Q&A
【0443】盗む主婦
Q:
近所の主婦(40歳前くらいだと思います)で盗みをする人がいます。沢山の被害に遭った方の話を聞きました。最近親しい友人が被害に遭い何とかならないかと相談している次第です。この盗みをする主婦は気前が良く、家も裕福そうに見えます。
盗みの状況は、たとえばこの人と一緒に出掛けるとバッグの中身がいつの間にかなくなっている、あるいはこの人が家に遊びに来ると何かなくなっている、といったところです。
おそらくそういう話が積み重なって、この人が盗んでいるということになったのでしょう。ただいずれも盗む現場を見た事がないという理由から表沙汰になった事はありません。近所でゴタゴタを起こすのも皆さん嫌なのでしょう。相談というのはこの人が何か心の病気ではないかと考えたからです。何か当てはまる症例があるでしょうか?
もしあるならこの人のご主人に連絡を取って然るべき処置を執る必要があるのでは?と考えています。
林: この主婦の方が病気ではないかと心配をするのは早すぎると思います。また、当然ながら、本当にこの方が盗みをしているかどうかを確かめる必要があるでしょう。
もし本当に盗みをしていて、そして仮にそれが病気だったからといって、盗みを容認することはありません。それはかえって病気の人一般に対する失礼な態度だと思います。盗みは盗みとして扱うべきであって、それに対して法的にどう対処するかは(病気との関連を含めて)司法の仕事です。
なお、この方が病気かどうかは別として、確かに病気の症状として物を盗むことはあります。窃盗癖Kleptomania(クレプトマニア)といいます。その特徴は、自分が全然必要でないものを盗むということです。ここで「必要ない」というのは、その物品を換金して金銭を得ようという意図もないということです。つまり、単に盗むという行為そのものが快感で、盗みを繰り返してしまうというものです。
しかしそれはともかく、単に物を何回も盗むというだけの時点で、それは病気ではないかと一般の方が考える必要はありません。それでは泥棒がのさばることになります。