精神科Q&A

【0414】法学部の友達が挫折してから変なことを言うようになりました


Q:  法学部のある友達(22歳男性)は、司法試験を目指して勉強する仲間でした。
 が、彼は決して頭のいいほうではなく、挫折をしました。 
 その頃から彼は宇宙からいい電波と悪い電波が流れてきて、自分はその聞きわけが出来るのだが、皆は電波が聞こえないのか? 電波が聞こえる自分は選ばれた人間だ、というようなことを言うようになりました。 
至高体験を得たので、この感動を分かち合いたいとも言います。 
 ここまでなら、宗教体験などで脳内麻薬が出て幻覚や幻聴が聞こえるケースもあるし、日常生活に支障が出るわけではない、こういう人もいてもいいだろうと思っていました。 
 ところが、今度は古代文明はイルカとクジラが作った、悪の大王が降りてくるから出来るだけ田舎にいたほうがいい、この間ラジオから自分に歌を歌えという指令がでたので、 電車の中で歌ってみた。そしたら乗客は男も女も自分の歌でオルガスムスに達した、などと言います。 
 これはいくら何でもまずいと思い、「人間はイルカじゃないよ、おぼれちゃうじゃん」などとからかって、おかしいよ、ということを伝えようとしたのですが、本人は本気で怒ってしまいました。
 今では普通の日常会話すら成立しなくなっています。彼の言語体系が荒唐無稽な新興宗教の「定説」のような、普通日常言語体系でなくなってきてるのです。 
 本人は本気で心から自分の考えを信じています。周りからおかしいよ、と言われても聞く耳を持ちません。 
どう対応したらいいのか分かりません。 
 被害妄想も無いから統合失調でないし、躁鬱でもないし、一体何の病気なのでしょう? 
 それとも病気ですらないのでしょうか? 私たちはどう対処したらいいのですか? 

: 診断は統合失調症(精神分裂病)です。ほぼ確実だと思います。
 「電波が入る、聞こえる」というのは、統合失調症(精神分裂病)の基本的な症状である自我障害の一種で、この病気では非常によく出る症状です。
 「被害妄想も無いから統合失調でない」と書いておられるように、確かに被害妄想は統合失調症(精神分裂病)によく見られる症状ですが、必ずしもすべてに見られるわけではありません。このお友達の妄想はむしろ誇大妄想で、病気の始まりの時点で誇大妄想が目立つのは典型的とは言えませんが、かといって例外というほどでもありません。
 もっとも、「悪の大王が下りてくる」というのは、被害妄想の一種と解釈できないこともありません。しかし、むしろ、荒唐無稽な滅裂思考、あるいは「弛緩した思考」というほうが適切ではありますが。そしてこのような状態になると、お書きになっているように、普通の会話は成立しにくくなります。こういう症状は、統合失調症(精神分裂病)として、全く矛盾はありません。
 なお、診断としては、統合失調症(精神分裂病)でないとすれば、非定型精神病ということも考えられます。現段階では何ともいえませんが、病気であることは確かです。治療しなければどんどん悪化していくでしょう。
 なるべく早く精神科を受診させてあげることが必要です。またそのためには、この方のご両親に状況を詳しく連絡されることが第一かもしれません。
 


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