精神科Q&A
【0370】精神分裂病と診断されてから、暗示にかかってしまったような気がするのですが
Q: 25歳女性です。5,6年前から、精神科のクリニックに通い、「うつ病」と診断されておりました。通い始めた当初は、それほど病状も悪化することなく、3ヶ月に一回程度の通院で、それほど薬を必要としていなかったのですが、2年ほど前から、うつ状態が悪化してきたため、一日三回毎食後薬を飲むようになり、いろいろな抗うつ薬を試して見ました。どの薬もあまり効果が見られなかったため、「貴方のうつは、普通のうつとは違うかもしれません」と言われ、「通院で出来る治療は全て試した」とも言われて、大きな精神病院を紹介されました。
そして、その新しい病院で診断された病名が、「精神分裂病(統合失調症)」。新しい病院に移ってから、初めて自分が精神分裂病だと診断されたことに、戸惑いさえも感じられました。しかし、分裂病としての薬を処方され、飲み続けるようになると、確かに分裂病だと思う心当たりが見られるようになりました。「勘ぐり深くなってきたこと」「他人が私の悪口を言っているように思えること」等々です。これらの症状は、「うつ病と診断されていた時」には、それほど現れていなかった症状なのです。
(ちなみに、主治医に私が「精神分裂病」だと判断されてしまった大きな理由の一つに、私が家族の日記を読んでしまい、私の悪口が書かれてあったため、「家族が悪口を言っている」と強く訴えてしまったからかと思われます。「日記を読んだ」、という点は、主治医には報告していないので、主治医には「被害妄想」だと受け取られたのかも知れません。)
つい最近まで、二ヶ月間程入院をしておりましたが、病状は好転することもなく、病院内の人間関係でダメージをうけ、退院してきてしまいました。(私がいる場所で、はっきりと私に対する悪口を言われたためです)
そこで質問なんですが、病名の後に、病状がついてきてしまうことがあるのでしょうか?
まるで、主治医から「お前の病気は精神分裂病なんだ」と申告されてから、暗示にかかって病状を発症してしまったような気にもなってしまいます。こういう症状の表れかたって、あるものなのでしょうか?
林: 精神分裂病(統合失調症)の初期には、うつ病にかなり似た症状が出ることも多いので、「はじめはうつ病と診断されていたが、抗うつ薬の効果がなく、そのうちに精神分裂病の典型的な症状が出てきた」というあなたの経過は、精神分裂病としては比較的よくあるものです。あなたの精神分裂病的な症状が、診断名を告げられてから出たものか、それ以前からあったものか、メールからだけでは判断できません。あなたのおっしゃるように、「診断名を告げられてから、その病気の特徴的な症状が出てくる」というのは、どんな病気でもありうることだとは言えます。もっとも、精神分裂病ではそのようなことはあまりありません。(うつ病の場合には時おり見受けられます)。けれども、繰り返しますが、あなたの場合にどうかということはわかりません。
それから、精神分裂病の人は、ご自分の被害妄想に関して、それが妄想ではないということを色々な根拠をあげて主張されることは非常に多いものです。あなたの場合、「家族の日記を読んでしまい、私の悪口が書かれてあったため、「家族が悪口を言っている」と強く訴えてしまったから」、主治医に被害妄想と受け取られたかもしれない、とお書きになっていますが、そういう経緯で精神科医が妄想と誤認することはあまりないことです。もっとも、これも文面だけからは判断しにくいことですが。