精神科Q&A
【0361】天使と結婚して部屋で暮らしていると言っている
Q: 私は28歳女性です。海外で住み込みで働いていますが、同居している雇い主の娘さん(30歳、独身)の様子がおかしいのです。もともとうつ病の様子で通院し薬を飲んでいたのですが、1月ほど前によその国に住む文通相手の方のとこに旅行に行き戻って来て以来、天使と結婚をして部屋で暮らしていると言うのです。クリスチャンで結婚願望の強い方だったのですが、今は別の方と結婚したら重婚になると悩んでいて、私以外の従業員のほとんどにも同じことを話し、時には涙を見せるそうです。ただしご両親にはばれてはいけないと言って相談をせず、話したらおかしくなったと思われると言って黙っていると言うのです。またその話をするときには目を見開き視線が左右にゆれています。同僚が教会で相談するように勧めましたが罪深くて相談できないと言ったそうで、今はみんなでとりあえずあいずちをうっているだけの状態です。何かあったら人を殺す事も出来るとも言うそうで、下手なアドバイスをするのが怖いくらいです。どうしたらよろしいでしょうか。
林: この方は統合失調症(精神分裂病)だと思います。病院の受診以外の方法はありません。お住まいの国の医療事情が不明ですが、いずれにせよ病院を受診するという方向でお考えください。
「もともとうつ病の様子で通院し薬を飲んでいた」とのことですが、そういうことは統合失調症(精神分裂病)では非常によくあることです。うつ病と診断されていた可能性もありますし、すでに統合失調症(精神分裂病)と診断がついていた可能性もあります。「天使と結婚をして部屋で暮らしている」というのは、統合失調症(精神分裂病)の妄想だとすると、発症からかなり時間がたっていると考えられます。推測としては、すでに統合失調症(精神分裂病)と診断がついていて、飲んでいた薬も抗精神病薬だったのではないでしょうか。それでもこのような妄想が出現してしまったということは、治療が不十分だったか、あるいは実際には薬を飲んでおられなかったことが考えられます。(処方された薬を飲んでいなかったために悪化していく、というのは、統合失調症(精神分裂病)ではしばしばあることです)
その他の病気としては、解離性障害や、非合法薬による精神症状(覚醒剤、LSDなど)も考えられます。「よその国に住む文通相手の方のとこに旅行に行き戻って来て以来」とのことですが、その国で何かドラッグを摂取した可能性はないでしょうか。または、その国で非常に大きなショックとなる出来事があり、解離性障害になったというのも考えられることではあります。ですから、その国に旅行中の行動をできる限りチェツクする必要はあると思います。